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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第549回

Itaniumとの心中を余儀なくされたHP 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2020年02月10日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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時代はスケールアップからスケールアウトへ
スケールアップサーバーの売上が減少

 Business Critical Systems部門は、数字から言うと前ページのように毎年1億ドルずつ売上が減っている状況である。2014年にはHP Integrity Superdome Xの発売を開始するなどこの分野への注力は怠っていなかったものの、ニーズが次第に減ってきたことは否めない。

「HP Integrity Superdome X」の本体。高さ18Uサイズで、サーバーブレードを最大8台搭載する

 背景にはいろいろな理由が考えられるが、一つの大きなトレンドはクラウドの普及にともなう「スケールアップ→スケールアウトへのアーキテクチャー変更」があるだろう。

 IntegrityにしてもNonStopにしても、基本的にはスケールアップサーバーであった。要するに1つのマシンの性能をひたすら引き上げるという方向性であり、ただそうするとどこかにハードウェアの故障があるとシステム全体がダウンする。

 これを避けるために重要コンポーネントの冗長化を行なったり、RAS機能の充実で被害を最小化する/故障予見によって事前に対応するといった形で、ダウンタイムを最小限に抑える工夫を凝らしていた。

 これに対しスケールアウトの方は、普通のサーバーをひたすら大量に並べる仕組みで、どこか1台のマシンが故障しても、そのマシンが行なっていた処理を他のマシンに振りなおすという形で冗長性を確保する方式である。

 言わば、スケールアップはマシンが止まらないのを前提にソフトウェアが組まれており、ハードウェア側で止まらないように全力を尽くす方式。対してスケールアウトは、ハードウェアが止まることを前提に、止まっても困らないソフトウェアのフレームワークを構築する方式である。

 そしてクラウドにスケールアウト方式が採用されたのは、スケールアップよりもスケールアウトの方が、よりトータルでの処理性能やデータ保持能力などを高められ、かつコストも安く済むからである。

 もちろん従来型のアプリケーション、つまりスケールアップ方式に対応したアプリケーションをスケールアウト方式に書き換えるのは容易ではなく、それもあって例えば金融機関などでは引き続きスケールアップ方式が採用されている例が少なくないが、クラウド全盛になりスケールアウト方式が当たり前になると、これに対応したフレームワークがどんどん充実するようになってきて、従来のアプリケーションも次第にスケールアップ方式に移行が進んでいった。

 こうなると従来型の高信頼性サーバーは、価格が高いわりに性能が低いだけのサーバーという扱いになるわけで、売れ行きが毎年減るのも無理のないことである。

 結局2016年の年次報告では、Industry Standard ServersとBusiness Critical Systemsの区別がなくなり、単に“Serves”にまとまっているのも無理ないところである。

 実際2016年の年次報告によれば、Industry Standard Serversの売上は前年比6%伸びたとしており、理由はAUP(Average Unit Price:平均ユニット価格)が向上したことと、出荷量の増加の両方の理由によるものだとする。

 AUPが向上したのは、より高性能なプロセッサーや大量のメモリー/ストレージ類を搭載したProLiantシリーズへの移行が進んだことによるもの。出荷量の増加は、主にラックマウントサーバーや高密度サーバーの需要が増えたためである。

 一方でBusiness Critical Systemsは13%の売上減となっており、この最大の理由はUNIX市場全体が縮小しているためだ、としている。

 ただ、Industry Standard Serversが2015年比6%アップならおおむね142億ドルほど、Business Critical Systemsが13%ダウンなら7億ドルほどで、合計すると149億ドルほどの売上になるはずなのに、合算すると140億ドルというのはいまいち解せない。なにか除外された項目が他にあったのかもしれない。

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