業界に多大な影響を与えた現存メーカーのHP編はお休みをいただき、久々にロードマップのアップデートをする。
今年のCESではAMD・インテルともにいろいろと活発な発表を行なった。ただAMDに関しては記事が1本と寂しいので、もう少し細かな解説をお届けしたい。
といっても、Radeon RX 5600 XTに関してはすでに細かな解説とベンチマークも掲載され、店頭出荷も始まっている状況なのであまり説明することもないからパスし、今回はRenoirを取り上げたい。
次期APU「Renoir」こと
Ryzen 4000シリーズ
Renoirは7nmを使ったZen2+Vega 8CUのGPU統合製品である。Renoirについては連載536回の最後でも取り上げたが、お披露目がCESなのは合っていたものの、量産出荷は第1四半期中(といってももう2月に入ってしまったから、2月末~3月あたりか?)になったのが予想と異なるところだ。
加えて言えば、筆者はRenoirを7nm CPU Chiplet+12nm GPU+I/O ChipletというMCM構成にしてくることを予想していたが、これに反してモノリシックダイでの提供となった。以下、CESで行われたプレスカンファレンスの資料をもとにもう少し解説する。
ReniorことRyzen 4000 Series Mobileは、従来のRaven Ridge/Picassoと比較して大幅に性能を引き上げた、というのがまず最初のメッセージ。
まずTDP 15Wのレンジに向けて、Ryzen 3 4300U~Ryzen 7 4800Uまで5製品がラインナップされた。
さてこのRyzen 4000 Series Mobileシリーズの競合は当然ながらIce Lakeになる。実はCES期間前日にあたる1月5日にインテルは記者説明会を現地で開催、ここでIce LakeベースのCore i7-1065G7がRyzen 7 3700Uを超えるグラフィック性能を発揮するというデモを開催しているのだが、AMDはそのCore i7-1065Gと比較して、CPU性能とGPU性能のどちらも上回っていることをアピールした。
もちろんコアの数が多い分、マルチスレッド性能が効きやすいアプリケーションは当然Ryzen 7 4800Uの方が有利だし、ゲーミングについてもアドバンテージがあるとする。実はこれにはちょっとしたトリックがあるのだが、それは後述する。
RenoirはおおむねPicassoと比べて2倍の性能/消費電力比を獲得しており、このうち3割がマイクロアーキテクチャによるもの、7割が7nmプロセスの採用によるものだとしている。
ちなみにRenoirは、Ryzen/Threadripper/EPYCとはまた異なるデザインポリシーが取られている。
それは主に省電力性に向けた話であるが、ここでポイントとなるのがLPDDR4xを新たにサポートしたことだ。連載505回でも書いたが、Ice Lakeに搭載されるGen 11 GPUは、最大64EU構成となる。
これを支えるのがメモリーで、Ice LakeではDDR4-3200だけでなくLPDDR4-3733もサポートしている。インテルがベンチマークで見せる機種は当然LPDDR4-3733を搭載しており、DDR4よりも広いメモリー帯域のおかげでGPUも性能を発揮できるという話である。
これへのカウンターパンチとして、AMDはLPDDR4xのサポートをRenoirに追加している。そして市場には、昨年からLPDDR4xが普通に流通している。これは主にスマートフォン向けではあるが、Samsungは昨年3月から、最大32Gbit(4GB)~96Gbit(12GB)のLPDDR4xチップを出荷しており、システムがこれを利用すればPicasso世代まで問題だった「メモリー帯域がボトルネックになってGPU性能がフルに発揮できない」問題がかなり緩和されることになる。
おそらく今回AMDが示した結果は、LPDDR4x-4266を搭載しているのではないかと思う(脚注によれば“AMD Ryzen 4800U reference system”とだけあるため、構成が確認できない)。したがって、現時点でのRenoirはIce Lakeに比べてかなり良さそうな素性に仕上がっているというわだ。
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