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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第547回

会社を2つに分離する英断をしたHP 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2020年01月27日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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コンパクトなモジュールサーバー開発に着手
順調な開発計画だったが悲運が待ち受ける

 この前後のHP/HPEの動向の中でおもしろいものをいくつかご紹介したい。2013年4月、HP Moonshotが発表される

 Moonshotはいわゆるブレードサーバーというか、コンパクトなモジュールサーバーであるが、そのモジュールを複数種類用意できるのが特徴で、当初はAtomベースのモジュールのみであったが、翌年にはXeonやDSP、さらにArm64のモジュールまで提供される。実はMoonshot、かなり早い時期からArmベースのモジュールを提供予定であった。

 そもそもMoonshotというコード名はかなり後になって付いたもので、もともとはRedstone Rocketという名前であった。

 このRedstoneとは、アメリカ陸軍のSRBM(短距離弾道ミサイル)として開発された地対地ミサイルにつけられた名前(さらにその由来は、米陸軍のレッドストーン兵器廠にちなんだものらしい)だが、1964年に退役後には人工衛星や(アポロ計画の前段階の)マーキュリー計画で宇宙船の打ち上げに利用された。HPとしては、この「アメリカ初の人工衛星の打ち上げに利用したロケット」にちなんでRedstone Rocketという名称を使ったらしい。

 さてこのRedstone Rocketでは、当初からArmのプロセッサをベースとしたモジュールが想定されていた。この時利用予定だったのは、Calxedaという(今は存在しない)ファブレスプロセッサーメーカーである。

 このCalxedaはECX-1000というSoCを開発している。構成は4コアのCortex-A9(最大1.4GHz駆動)と4MBの共有2次キャッシュ、DDR3/3L×2chで、他にSATA×5、PCIe Gen2を合計16レーン、イーサネット×6(うち5つは1/10Gbps、1つのみ1Gbps)といった構成である。

ここでEnergyCore Mamagement EngineとEnergyCore Fabric SwitchがCalxeda独自のものである

 特徴的なのはフル駆動時であってもコアあたり1.5W以下、4コア+4GBのDDR3メモリーを搭載時でも5W、待機時には0.5Wというおそろしく低い消費電力であって、このため高密度サーバーを構築してもランニングコストの大半を占める電力代と冷房代を低く抑えられるというものであった。このECX-1000は2011年11月にはすでにSoCが完成しており、これを4つ搭載した評価ボードも存在している。

ECX-1000を4つ搭載した評価ボード。消費電力はこのボード1枚で20Wに抑えられている

 Calxedaはテキサス州オースチンで2008年創業という非常に若い会社であるが、CEOのBarry Evans氏はインテルでハンドヘルド部隊(要するにXScaleだ)に居り、MarvellによるXScaleの買収後はそのままMarvellに移動したという人。

 あるいはChief ArchitectのMark Davis氏はConvexのExemplarを手掛けており、そのまま買収でHPに移籍したという人だったりとArmおよびHPと非常につながりが深かった。

 それもあってか、HPが将来のサーバー向けにArmアーキテクチャーの検討を始めた時に、わりと早い時期から関わることになったようだ。実際、2012年3月に行なわれたSOS16では、下のスライドが示されている。

SOS16で示されたスライド。ただ実際には出荷開始には至らなかった

 そして2013年4月にはまずAtomベースのMoonshotが発表されたわけであるが、これに合わせてCalxedaもリリースを出しており、2013年末にはAtomに加え、ECX-1000ベースのモジュールもHPから提供される予定になっていた。実際、そのMoonshot用のモジュール写真も同社から発表されている。

上からの写真。わかりやすいようにヒートシンクは取り去っているが、周囲の部品は本当に電源関係がほとんどで、カードエッジ部にSwitchあるいはPHYと思しきチップが乗っている程度のシンプルなものである

さすがに5Wともなるとヒートシンクは必須であろうが、このサイズのヒートシンクで足りるというところがさすがではある

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