Calxedaの倒産で計画が頓挫
64bit時代に32bit製品を出荷したのが敗因
ただ残念ながら、CalxedaのECN-1000を搭載したモジュールは出荷されなかった。2013年12月19日、突如としてCalxedaはリストラ(という名前の会社閉鎖)を開始したことをThe Registerが報じた。
これに先立ち、HPの間で極秘の買収交渉も行なわれたらしいのだがそれが不調に終わり、ベンチャーキャピタルからの資金が尽きたのが直接的な理由である。そもそも同社の予想では、2012年後半からOEMより製品出荷が始まっているはずなのが、実際には2013年末まで主要なOEMメーカーは一切製品を出荷しなかった。
となれば売上が立たないのは当然のことで、資金が尽きたら即倒産になるのは致し方ない。この理由はいろいろ取りざたされているが、やはりCortex-A9、つまり32bit Armだったことが最大の要因だったようだ。
すでにサーバーの市場はとっくに64bitに移っており、x86→Armへの移行はともかく、64bitから32bitへのBackportという案はさすがになかった。こうなると、アプリケーション開発者は32bit Armはスルーして64bit Armが出てくるのを待とうと考えるのは自然なことである。
一方のCalxedaは、次期製品で64bit Armを搭載する予定になっており、そのためにはまず32bit製品が売れる必要があった。このあたりのギャップが、同社が立ち行かなくなった最大の要因と思われる。
HPは? というと、Calxedaはなかったことにして、翌2014年11月にAPM(旧AMCC)のX-Gene 1を搭載したProLiant m400と、TIのKeyStone II 66AK2H14というCortex-A15×4+C66x DSP×8構成のSoCを4つ搭載したProLiant m800を含む新カートリッジ6製品を発売する。
ProLiant m800は32bit Armでは? と思われるかもしれないが、この製品の場合メインは浮動小数点演算で19.2GFlops/固定小数点演算で38.4GMacsもの演算性能を持つDSPであって、CPUコアはこのDSPを駆動するためのサポートに徹している形である。
つまり完全に独自の製品であって、C66x DSPを駆動するような既存のx86コードは存在しないから、互換性もへったくりもないという話である。こうしてHPEは、早いタイミングでArmサーバー向けのプラットフォームをラインナップに加えることに成功している。
ちなみにCalxedaの技術やIPを2014年後半に取得したSilver Lining Systemsという会社は、2016年にArmのSoC向けのFabric用ICやアダプターを出荷しており、これはCalxedaのEnergyCore Fabric Switchに近いものである。
ただSilver Lining Systemsは2016年にArmのOpteron A1100用にこれを提供すると発表したものの、肝心のAMDがArmサーバーよりx86サーバーの方が有望ということでArmサーバービジネスをホールドしてしまった結果、こちらも宙に浮いてしまっており、その後の情報がない。なんというか、つくづく組む相手に恵まれない(相手を選ぶ目が悪い?)会社である。
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