CES 2020レポート 第12回
インテルの基調講演10年間の流れから読み解く、CES 2020の発表内容
インテルがCESで話した、これから数十年の人々の生活
2020年01月07日 22時15分更新
基調講演はAIが大きな軸に
ここまでの流れを踏まえ、CES 2020でのインテルの基調講演を紹介する。今年の発表内容は、同社が力を入れている自律走行型のロボカーのデモ、インテルと米国赤十字による「Missing Mapsプロジェクト」による災害対策の改善に関する取り組み、モバイル・コンピューティング・イノベーション、XeonやAIを活用したスポーツやエンターテイメントの未来といったテーマがメイン(もうひとつの大きなニュースとして、新たなCPUやGPUも発表している)。
ハードとソフトの組み合わせで社会を変革
インテルは今回の基調講演で、「データセンターは世界中の企業にインテリジェンスを提供する力」とも述べている。
登壇したのはデータセンター部門の主席副社長であるNavin Shenoy氏。2020年に提供開始予定の第3世代Xeonスケーラブルプロセッサーを活用し、クラウド、ネットワーク、エッジにAIを組み込むことで、社会にどのような影響を与えるかというテーマでスピーチ。
Navin Shenoy氏はまず、「インテル DL Boost」によって、第3世代Xeonスケーラブルプロセッサーは前世代と比較して、学習性能が最大60%向上していると発表した。また、Xeonの性能が生かされる具体的な例として、インテルがNetflixを支援し、従来のAVCと比較し、50%以上の圧縮効率という動画圧縮技術「AV1」を開発したことを明かした。これによって、より高速な試聴体験が可能になるとし、インテルとNetflixは引き続き圧縮技術の共同研究を重ね、商用運用を目指す。
合わせて紹介されたのは、Alibaba Cloud上で稼働する「3Dアスリート・トラッキング(3DAT)」と呼ばれる新しい技術だ。AIを活用した3Dメッシュ生成技術だが、特殊なセンサーやスーツを使用することなく、複数のビデオカメラで実現するのが大きな特徴。プレーヤーは、普段のユニフォームや環境を何も変えず、高精度の3Dメッシュが作成できる。
普段の環境に、複雑な生体力学的データを抽出できる機能を持たせられるため「人間の生物学的な能力に変革をもたらす可能性すらある技術だ」とNavin Shenoy氏は話した。また「放送局も、まったく新しい分析や検証の方法を生み出せる」とも述べた。インテルとアリババは、2020年東京オリンピックでの提供を目指し、引き続き開発を進める。
好きな選手の視点で、リアルタイムで試合が見れるように
スポーツ関連では「ボリューメトリック・ビデオ・ストリーミング」の概要も明かされた。
「インテル True View」によって、スタジアムのフィールド全体をセンシングし、カメラで撮影したかのように映像化するというもの。実現すれば、スタジアム内の任意の視点からの映像を(擬似的にではあるが)リアルタイムに視聴できるようになる。
例えば、特定の選手のファンが、その選手の視点で試合を観戦するといったことができるようになるため、視聴者側も大いにメリットのある技術だ。
生成されるデータ量は毎分3TBといい、「指数関数的に」データが増加する。しかし、ネットワークと視聴者の手元の端末にAIを導入することで、こうした夢のような技術が実現できるのだと話した。
会場で披露されたデモは、選手に接近すれば3Dグラフィックであることが視認できるものの、すこし離れた視点に切り替えると、カメラで撮影した映像にかなり近い生々しさがあった。
肉眼ではスタジアムを遠目から見て、手元の端末では、ファンの選手の視点をストリーミングする……これはまさしく生活や体験の変革と言えるのではないだろうか。
CES 2020から考えるインテルの役割の変化
そしてこれらの技術は、現代で考えられる範囲で、極限に近いところまで進歩した半導体=ハードウェアを、どのように活用して=ソフトウェアと統合して、社会を変革していくかというテーマであり、記事冒頭のBob Swan氏による「インテルの役割は、半導体技術とソフトウェア技術を統合」という発言とぴったり重なる。
1960年代の創業以来、半導体メーカーの王者として君臨し続けたインテルがCES 2020で「半導体技術とソフトウェア技術を統合」と宣言したことは、将来振り返った際に、歴史的な転換のポイントとして語られるかもしれない。
そして、技術は「より高機能を目指して進歩するソフト」「それを動かすため、日々スペックを追求するハード」という従来の進歩が一旦、現時点での終着を迎え「統合されたハードとソフトが、より深く現実の世界と結びつきはじめる」という段階に差しかかったのでないか。
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