UL製ベンチマークで初手から波乱
ではいつもの「3DMark」のスコアー比較から始めよう。いつも通りのレビューだと、3DMarkのスコアーの傾向でだいたいの立ち位置を把握できるのだが……。
ここで一番印象的なのがFire Strikeのスコアーだ。RX 5500 XTのスコアーはRX 570よりやや上で、RX 590のおおよそ12%程度下。ただTime SpyではRX 590のほんのわずか下、という結果を示している。ライバルのGTX 1660に対しても、Fire Strikeでは並ばれてしまったが、Fire Strike Ultraでは快勝、しかし、Time Spy系では逆転負けになっている。
β版ドライバー、しかも機能が大幅に変わったAdorenaline Software 2020 Editionなので何か不具合でもあるのかと思ったが、RX 590や570をRX 5500 XTと同じβ版ドライバーで動かしても同様の傾向が見られた。Fire Strike特有の結果なのかもしれないが、謎が残る。
次はシステム全体の消費電力を比較しよう。システム起動10分後の安定値を“アイドル時”、3DMarkのTime Spyデモ実行中の最高値を“高負荷時”とし、ラトックシステム「REX-BTWATTCH1」で計測した。
まずダントツで消費電力が大きいのがRX 590、続いて同じ12nm世代のRX 570、そしてRX 5500 XTがすぐ後に続く。3DMarkのスコアー比較だと、Time Spy系のスコアーはほぼRX 590≒RX 5500XTなのに、消費電力はRX 570をわずかに下回る。
RX 5700 XTとRX 570のTBPはほぼ同じ(130Wと120W)なのだから、7nmプロセス化による省電力化が非常に奏功していることが読み取れる。とはいえ、そのRX 5500 XTもプロセスルールでは一歩遅れているTuring世代のGTX 1660に負けている(スコアーも負けている)ことを考えると、まだライバルのワットパフォーマンスはおよばないが、ミドルクラスRadeonとしては完成度の高いGPUに仕上がったといっていいだろう。
次は「VRMark」を試してみよう。ミドルクラスGPUなので、HTCのVIVEやOculus RiftなどのVRヘッドセット環境を想定した“Orange Room”のスコアーに注目したい。
まずこのベンチマークはTuringと極めて相性がいい。3DMarkではやや奮わなかったGTX 1660がどのテストでも高スコアーを出しているのはこのためだ。本題のRadeon勢に目を向けてみると、Orang RoomではRX 5500 XTはRX 590と570の間、やや570寄りというポジションに立っている。
一方シェーダー負荷が重いCyan/Blue RoomではRX 590に近い。RX 5500 XTのROP数は88基とRX 590よりも少ないため、負荷が低めで高フレームレートが出るようなシチュエーションでは、ROPの処理がボトルネックになっている可能性が考えられる。
消費電力は低めで、Radeonとしては完成度が高い
前述したように、3DMarkの結果だけみたら、同価格帯のライバルのGTX 1660にはFire Strikeでは勝てるが、それ以外ではスコアーでやや負けている。同じRadeonでは、RX 570にはおおむねスコアーで勝り、消費電力は7nmプロセス化による省電力化により、RX 590よりも圧倒的に消費電力が少なく、RX 570にも勝る。
後発なため発売直後の価格は高めに設定されるのは致し方ないが、2万円台前半の製品もあるRX 590に全体的にパフォーマンスで劣っている。RX 570にはすべての面でスコアーで勝るが、RX 570搭載ビデオカードはいずれも2万円を切っているので、コスパでは差を付けられている。
しかしながら、現状実ゲームをいくつか試したところ、3DMarkのスコアーがそのまま反映されるような結果ばかりにはなっていない。GTX 1660はVRAMが6GBと少ないので、軽めのゲームを高解像度でプレイする場合は、RX 5500 XTに軍配がありそうだ。
そうした、実ゲームでのパフォーマンスについては、近く後編でご紹介したいので、期待しておいて欲しい。

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