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松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第71回

さよならジョナサン・アイブ:

アップル製品が分厚くなったワケ

2019年12月09日 09時00分更新

文● 松村太郎 @taromatsumura 編集● ASCII

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●MacBook Pro 16インチとiPhone 11 Proが成立できたタブー

 外見が完成し変化しなくなっても、中身は進化を続けます。その最たる例がMacBook Pro 16インチモデルです。

 2019年11月に発表された最新モデルは、特にグラフィックス性能が大幅にアップグレードし、MacBook Proを離れゲーミングPCに移ったグラフィックス性能を重視するプロクリエイティブユーザーを呼び戻すだけの実力に追いつきました。

 16インチモデルは15インチモデルの基本的なデザインを踏襲しますが、排熱性能を大幅に向上させ、プロセッサの性能を引き出す、というよりは熱によってリミッターに当たらないようにしています。またキーボードは薄さ追求から打ち心地と信頼性重視のシザー構造に戻され、0.45mm厚さが増しました。

 結果的に、システムとしては0.8mm厚くなり、「新モデル」として登場しました。いままで薄くなり続けてきた製品が、新モデルで厚くなることは、近年で非常に珍しいアップデートだった、とふりかえることができます。おかげで、キーボードは好評だし、パフォーマンスにも余裕を持たせることができました。

 同じことがiPhone 11 Proにも言えます。iPhone 11 Proは5.8インチモデル、6.5インチモデルともに厚みを増し、また大幅に重くなりました。iPhone 11 Pro Maxはさすがに片手で持って親指で操作すると、筆者の場合すぐに腱鞘炎になってしまうほど重たかったです。

 こちらもMacBook Pro 16インチモデル同様、厚みが増すことで、Proの名に恥じないバッテリー持続時間の大幅な向上を実現しており、5.8インチでは4時間、6.5インチでは5時間も長く使えるようになりました。週末、省電力モードにすれば、充電なしでも土日を過ごせるほどです。

 物理的にはネガティブな進化となる厚みの増加。その恩恵は十分すぎるほどに得られている、と言うのが印象です。もちろん、持ち運ぶモノを無闇に大きくし続けることには反対です。しかしパフォーマンスやバッテリーなどのニーズもまた理解でき、それが製品の存在価値を大幅に高めるなら、やるべきだと判断して正解だとも思います。

 なんとなく、今までのタブーを崩しつつあるのが、2019年のアップルの新製品群だったのかもしれない、と考えることができます。

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