オイルのグレードと性能
その話の前に、まずオイルのグレードと性能の話を簡単にいたしましょう。
オイルは冷やすと硬く、温めると柔らかくなる性質があります。その差はできるだけ少ない方がよろしい。そうした特性を示す粘度指数という値がありまして、この数字が大きいほど温度による粘度の変化が少ない、つまり高性能と考えられるわけです。市販のオイルには鉱物油、部分合成油、化学合成油と3種類ありますが、一般的に、鉱物油<部分合成油<化学合成油の順に、この性能は上がってまいります。
そしてオイルの価格は、主成分たるベースオイル、日本語で「基油」と申しますが、これで大方決まってまいります。基油の分類については、APIという機関が5つのグレードを定めており、このうち自動車に使われるのは上位4グレードであります。
グループⅡ 水素化処理精製基油、いわゆる鉱物油
グループⅢ 超高度水素化精製基油、VHVIやXHVIと呼ばれているもの
グループⅣ PAO(ポリアルファオレフィン)
グループⅤ エステルなどグループIからIVに該当しないもの
グループⅡの鉱物油はリッターあたり500円ほどでしょうか。安さがメリットと思われがちですが、化学合成油には旧車のオイルシールを痛めるものもありますから、旧車の維持には不可欠なものです。また良い特性を持つものは貴重でそれなりに高く、最近では必ずしも安さで選ばれるものとは限りません。
グループIIIの基油であるVHVIなどは、鉱物油に水素を添加して粘度特性を改良したもの。リッターあたり1000円ほど。安価に製造できるにも関わらず、摩擦係数などの一部特性は、グループIVのPAOを凌ぐものもあるということです。
そのグループⅣのPAOは粘度指数が高く、流動点が低いという特性を持ちます。寒さにも暑さにも強い。ただし、製造できるメーカーが限られておりまして高価。これを自社生産できるモービルが自動車用に売り出したのが、モービル1というわけです。リッターあたり2000円はいたします。
グループⅤのエステルは金属に吸着する特性から低温時の保護効果が高く、高温時の油膜保持性も高いという特徴があります。ただし高価、かつ加水分解しやすいと言われ、昔はモーターサイクルや、走行ごとに交換するサーキット走行用の高性能オイルとして使われていました。いまはどうなんでしょうか。代表的な製品にモチュールの「300V」がありますが、私は高いので使ったことがありません。リッターあたり3000円から4000円ほどいたします。
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