PA-RISCのおかげでサーバー向けの
HP 9000シリーズが実現
PA-RISCが利用可能になったことで、HP 9000シリーズはこれまでのワークステーション(+一部コントローラー)だけでなく、サーバー向けのラインナップが追加されるようになる。
PA-RISC 1.0世代の場合、NS-2/PCX/PA-7100/PA-7150/PA-7200についてはSMPのサポートがあり、実際にマルチプロセッサーのサーバーが投入された。
まずは連載528回でも少し出てきたがHP 9000/800シリーズがそれで、最初に投入されたHP 9000/840(これはTS-1ベース)やHP 9000/825・835・850(これはNS-1ベース)こそシングルプロセッサー構成だったが、続くHP 9000/845・855・860はNS-2ベースとなり(これもシングルのまま)、その後に出たHP 9000/870(これはPCXベース)ではシングルプロセッサー以外にデュアルプロセッサーの構成が投入された。
1991年12月には、3および4プロセッサー構成のHP 9000/870が発表されており、このあたりでHP 3000シリーズのハイエンドと構成的に肩を並べることになる。最終的にHP 9000/890シリーズとして提供されたものは、IBMのメインフレームと互角の性能を出すという扱いであり、以下の構成で提供されている。
HP 9000/890シリーズの構成表 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
製品名 | 構成 | |||||
HP 9000/890(Emerald) | 1~12way PCX-T(PCXの高速動作型) | |||||
HP 9000/891(TNT 100) | 1~12way PA-7100 | |||||
HP 9000/892(TNT 200) | 1~14way PA-7150 |
ちなみにHP 9000/891は後にHP 9000 T500、/892はHP 9000 T850という名前に変更されている。
そのHP 9000/892の場合、1プロセッサー構成で14万5000ドル、14プロセッサー構成では52万ドルという価格であり、安いのか高いのかわからない感じではあるが、同等性能のIBMのメインフレームの数分の一、という触れ込みであった。
なお、1プロセッサーが異様に高く感じられるのは、1プロセッサーだろうが14プロセッサーだろうがシャーシや電源などには大きな差がないからである。
さて、この前後からHP 9000サーバーが急速にラインナップを増やしているが、これは単にPA-RISC対応の製品が増えたからというだけではない。
前回も書いたが、Apollo Computerを買収後に同社のワークステーションをHP Apollo 9000/400シリーズとして発売している。
この少し後、1995年であるがHPはConvexを買収している。ここで説明したように、ConvexのExemplarはPA-RISCを使って構築されており、当初の製品名はSPP 1200/SPP 1600だったのだが、これがHP 9000のS/V/X-Classという名称で発売されるなど、なんだかサーバーは全部HP 9000にまとめてしまった感があり、余計にわけがわからなくなっている。
もっとも、そのずっと後になるがCOMPAQを買収した結果として、旧DECのAlpha Serverと旧TandemのNonStopまでラインナップに加わるとなると、さすがにHP 9000に入れるのは無理だったようで、最終的にHP 9000というラインナップはPA-RISCの終焉と共に終わることになるが、それはまだ先の話である。
話を戻すと、第1世代のPA-RISCは1996年に発表されたPA-7300LCが最後の製品となる。これに続きHPは1996年にPA-RISC 2.0という64bit拡張版のPA-RISCと、それに基づく最初の製品であるPA-8000を発表する。
ここからの話は連載345回で書いているので今回は割愛する。
とりあえず最後のPA-RISCであるPA-8900が登場した2005年頃まで、同社はHP 9000シリーズとVectraを中核にしつつ、ここにCOMPAQのPCおよびサーバーのラインナップが加わることで、圧倒的に重厚な製品ラインを構築することに成功する。
もっとも重厚な製品ラインが即売上増につながるとは限らないというあたりが難しいところではある。
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