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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情第527回

32bitプロセッサーの開発を続けたHP 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2019年09月09日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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80年代のHPの主軸はAT互換機ではなく
オフィスコンピューターのHP3000シリーズ

 HPの事業で、AT互換機が主軸でないとすればなにを主軸に据えようとしていたかといえば、もちろんHP3000シリーズとその後継機種である。

 連載520回で少しだけ触れたが、HP 3000シリーズは基本16bitマシンであり、これを32bit化しないことには先がなかった。これはHP 3000を利用していた顧客からも強く求められていた話であり、それもあってHPとしてはなにかしらの対策を講じる必要があった。

 かくして1984年、HPはSpectrumと呼ばれる新しい32bitプロセッサーの開発プロジェクトをスタートする。このSpectrumの存在は、対外的にも公開された。

 1984年12月に顧客向けのニュースレターの中で「最初のSpectrumベースのマシンは、(HP 3000)シリーズ 68のアップグレードの形で投入され、その他のモデルはその後にリリースされる予定である。

 SpectrumはHPとしては初めて、3つの事業部が共同で開発したものである(3000シリーズのCPUは、1つの事業部で開発された)。最初のSpectrumマシンは1986年前半に出荷予定である」と述べている。

 この1986年前半というのは、DECのVAX(おそらくはMicroVAX)を多分に意識したタイムラインだったと思われる。1984年というのは初のVLSIベースのMicroVAXが出荷された年であり、この製品は性能こそ低かったものの非常に小型かつ低価格であった。

 DECはこれに続き1985年にはずっと強力なMicroVAX IIをリリース、1987年にはCMOSベースでさらに省電力化を図るとともに性能を引き上げたMicroVAX IIIを投入している。

 このMicroVAXシリーズがHP 3000シリーズとモロに同じ価格帯であり、これへの対抗が求められた結果が、1986年前半という日付になったものと思われる。

32bitプロセッサーの開発を続けてきたHP

 ちなみにこのSpectrumであるが、これも経緯が長くなる。連載345回でConvexのExemplarを説明する際に紹介したが、もともとHPは早くから32bitプロセッサーの開発を試みていた。

 最初の試みは1969年にスタートした“Omega”という開発プロジェクトで、これはCupertino 部門の最初の大きな仕事であった。ただこれが失敗し、その結果としてスケールダウンしたAlphaがHP 3000シリーズになったという話は連載519回で書いたとおりである。

 次の試みは1982年になる。1981年2月に開催されたISSCCで、HPは“A 32b VLSI CPU Chip”という、非常にシンプルなタイトルの論文を発表し、この中でNMOSベースの1.5μmプロセスを利用した32bitプロセッサーを開発したことを発表している。

発表された32bitプロセッサーの内部構造。左上がRegister File、左下がALU、右半分はMicrocode ROMで、間にPLA(Programmble Logic Array)が挟まり、このPLAで命令デコードを行なっていた。SEQはSequencing Register Stack、TSTMUXはTest-Condition Multiplexerの略だ

 動作周波数は18MHz、トランジスタ数は45万個である。命令セットはStackベースで、しかも完全にMicrocodeでの実装(このために38bit長×9KものROMが搭載されることになった)なので、性能は当然ながらそうそう高いものではない。

 とはいえ、PLA経由でデコードに1サイクル、実行に1サイクルということで、ALU命令だと2サイクルで実行が可能だったので、18MHz駆動なら9MIPS換算(Dhrystone MIPSではなく単なるMIPS値)となる。

 Load命令は550ナノ秒(=10サイクル)。64bitの浮動小数点の加算は10.4マイクロ秒(≒189サイクル)だったそうで、高速ではないにせよ当時のHP 3000などに比べるとそう悪くない性能であった。

 アドレスは当然32bit(仮想アドレス)で、物理アドレスは公開されていないが、これを搭載したマシンが(理論上は)512MBまでメモリーを実装できたので、おそらく29bitだったと思われる。

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