近年、ビデオゲームによる対戦をスポーツ競技としてみなし、賞金付きの大会などを開催する「eスポーツ」が盛り上がりを見せている。eスポーツについて、オリンピックのメダル種目への採用を巡っての議論も展開されている。
しかし筆者個人としては、eスポーツには、ただ既存のスポーツという概念に収まるのではなく、スポーツ文化に新たな価値観を取り入れる存在になる可能性を秘めているのではないかと感じる。そして将来、「人々が仮想世界のなかに現実とは異なる社会を築く時代」の礎になるのではないか、とも思っている。
この記事では、8月2日から4日にかけてアメリカ・ラスベガスで開催された「EVO 2019」を例に、eスポーツの現状について振り返りつつ、eスポーツと仮想世界とのつながりについて考えていこうと思う。
世界最大級の格闘ゲームの祭典「EVO」
EVOは、格闘ゲームにおける世界最大級のeスポーツ大会である。複数のゲームタイトルでのトーナメントを実施し、例年世界中から集まる強豪プレイヤーたちが白熱した戦いを繰り広げる。
今年のメイン競技タイトルは、「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」「ストリートファイターV アーケードエディション」「鉄拳7」「SAMURAI SPIRITS」「Mortal Kombat 11」「Under Night In-Birth Exe:Late[st]」「ドラゴンボール ファイターズ」「ソウルキャリバーVI」「ブレイブルー クロスタッグバトル」の9種目。
合計の参加者数は1万4000人(重複参加含む)におよび、最も参加者数の多い大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIALでは3492人の選手が参加した。ちなみに日本人の参加者は450人を超え、過去最高となっているとのこと。
日本はeスポーツ後進国とも呼ばれているが、人気の格闘ゲームの多くが日本製であることも影響しているのか、格闘ゲームにおいては強豪国だ。現に今回のメインタイトルである9タイトルでも、かなりの数の日本人が上位に食い込んだ。
TOP8のメンバーを見れば、スマッシュブラザーズ SPECIALで8人中3人、ストリートファイターVで4人、鉄拳7で4人、SAMURAI SPIRITSで1人、Under Night In-Birthで7人、ドラゴンボール ファイターズで5人、ソウルキャリバーVIで2人、ブレイブルー クロスタッグバトルで5人が日本人という結果。
さらにストリートファイターV、Under Night In-Birth、ドラゴンボール ファイターズ、ソウルキャリバーVIの4タイトルは日本人が優勝している。
ちなみに賞金は、各タイトルごとに、参加者の登録料の中から10ドルが賞金としてプールされる形になっており、参加者数が増えれば増えるほど賞金も増えるという仕組みだ。つまり今回のスマッシュブラザーズ SPECIALでは総額約3万5000ドル(約370万円)になる。
そのなかから、トップ8の選手に賞金が分配される。公式サイトに記載されている分配割合は、1位:60%、2位:20%、3位:10%、4位:4%、5位タイ:2%/2%、7位タイ:1%/1%。(公式Tweetで分配割合の変更を検討しているというツイートもあったが、実際に変更されたかはわかっていない)