もう1つのPre-Exascaleシステム
Trinityの後継機「Crossroads」
次がロスアラモス国立研究所/サンディア国立研究所のCrossroadsであるが、これはTrinityの後継である。
このTrinityは過去の連載で触れていないのだが、ローレンス・リバモア国立研究所のSequoiaの次に、ATCのシステムとして構築されたもので、HaswellベースのXeon+Knight LandingベースのXeon Phiの組み合わせ(どちらも9500ノード以上)でピーク42.2PFという処理性能を持つシステムである。
このTrinityが、前ページに掲載したECPのロードマップの画像で“Secure”と書かれていることからもわかるように、これは核関連のアプリケーションを稼働させるためのシステムだが、こちらも2021年中に退役が予定されており、Crossroadsはこれを更新するためのものである。ただ2018年秋に要求仕様書が出ているはずだが、今のところ具体的な動きが見えていない。
Exascaleシステム第1弾の「Aurora」は
インテルのXeon ScalableとXe GPUを採用
Pre-Exascaleの動向を一通り説明したところで、いよいよExascaleの話をしよう。まず第1弾がAuroraであるが、こちらは連載505回でも簡単に紹介した。
将来世代のXeon Scalable(おそらくIce Lakeの次か、ひょっとするとさらにその次)とXe GPUを組み合わせるという話になっており、全体で1EF以上の性能とされる。
ただこの1EFの数え方が、次のFrontierもそうなのだがいまいち怪しい。というのは、これまでピーク性能は通常FP32を前提にしていたのだが、どうもこのExascale世代はFP16に減ってる可能性がある。
FP16で1EFということはFP32で500PFという計算になるから、Summit/SierraやPerlmutterなどよりは性能が高いのだろう。
その第1弾が発表された3月18日から2ヵ月たたずに、ピーク性能で1.5EFのFrontierの契約が発表されたというわけだ。
Exascaleシステム第2弾が「Frontier」
インテルではなくAMD製プロセッサーを採用
さて、現状ではあまりFrontierの情報がない。まずプロセッサーであるが、カスタム版のEPYCが利用される。一方のGPUであるが、これは将来のRadeon Instinctが採用される。
現行世代ではない、という理由は下の画像のとおり。Radeon Insinct同士だけでなく、Radeon InstinctとEPYCの間もInfinity Fabricで接続されると明示されているからだ。
現行世代のRadeon InstinctでもInfinity Fabricで接続可能だが、プロセッサーとの接続はPCIe 4.0となっている。
現実問題として現行のEPYCの場合、Infinity Fabricをプロセッサーの外に出せるのは2ソケット構成で相互接続する時だけで、GPUの接続は想定していない。
同様にRadeon Instinctの方も、PCIeレーンをCCIXで利用することは可能だが、Infinity Fabricでの接続はサポートしていない。おそらくこれが可能になるのは“Next-Gen”、つまりNaviの次以降になるものと思われる。
そもそも先にも書いたがPerlmutterの時点でプロセッサーにはMilanを想定しているわけで、納入が1年遅いFrontierはMilanの次であっても不思議ではない。
この連載の記事
-
第768回
PC
AIアクセラレーター「Gaudi 3」の性能は前世代の2~4倍 インテル CPUロードマップ -
第767回
PC
Lunar LakeはWindows 12の要件である40TOPSを超えるNPU性能 インテル CPUロードマップ -
第766回
デジタル
Instinct MI300のI/OダイはXCDとCCDのどちらにも搭載できる驚きの構造 AMD GPUロードマップ -
第765回
PC
GB200 Grace Blackwell SuperchipのTDPは1200W NVIDIA GPUロードマップ -
第764回
PC
B100は1ダイあたりの性能がH100を下回るがAI性能はH100の5倍 NVIDIA GPUロードマップ -
第763回
PC
FDD/HDDをつなぐため急速に普及したSASI 消え去ったI/F史 -
第762回
PC
測定器やFDDなどどんな機器も接続できたGPIB 消え去ったI/F史 -
第761回
PC
Intel 14Aの量産は2年遅れの2028年? 半導体生産2位を目指すインテル インテル CPUロードマップ -
第760回
PC
14nmを再構築したIntel 12が2027年に登場すればおもしろいことになりそう インテル CPUロードマップ -
第759回
PC
プリンター接続で業界標準になったセントロニクスI/F 消え去ったI/F史 -
第758回
PC
モデムをつなぐのに必要だったRS-232-CというシリアルI/F 消え去ったI/F史 - この連載の一覧へ