電気やハイブリッドでは味わえない
ハイトーンなエキゾースト
ヴァルカンは、富士スピードウェイで12気筒ならではのサウンドと、自ら大量の空気を吸い込む大排気量自然吸気エンジンらしい歌声を披露した。ラ・フェラーリやマクラーレンP1 GTRのようなモーター音が混じったものではなく、さらに現在主流のターボサウンドではない。自動車ファンなら誰もがうっとりとする「歌声」であるが、パフォーマンスを追及する現在において、このようなロマンあふれる音を奏でる新車が世に出ることはもうないのかもしれない……。
それにしても、ロングノーズ・ショートデッキのFRという美しさには惚れぼれしてしまう。スーパーカーやハイパーカーはミッドシップレイアウトが主流の世の中において、7リッター自然吸気12気筒エンジンと相まって、オールドファッションの美学を感じずにはいられない。
そのようなヴァルカンの走行を富士スピードウェイのコカ・コーラコーナーで見ていたのだが、ヴァンテージGT3に比べて、最低地上高が高くコーナーでのロール量が多いことに気が付いた。
ヴァルカンはめっぽう速いことは言うまでもないのだが、単純に速度を追い求めるだけでなく、ドライビングプレジャーも兼ね備えたマシンなのだろう。
第一次世界大戦前夜の1913年に創業以来、高級スポーツカーを作り続けたアストンマーティンが作り出したヴァルカンは、どこかブリティッシュ・ロックの生きるレジェンド、ローリング・ストーンズのグレイテスト・ヒッツ版に似ているように思える。カッコよく、過去のアストンマーティンの良さを凝縮し、それでいて今でも第一線。それがヴァルカンであり、アストンマーティンでなければ登場しえないマシンと言えるだろう。
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