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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第500回

業界に多大な影響を与えた現存メーカー PowerPCでx86の市場を切り崩しにかかったIBM

2019年03月04日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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32bitアドレスのPowerPCは
48bitのAS/400では使えない

 PowerPCの系譜を一通り紹介したところで、いよいよAS/400の話だ。CISCベースのプロセッサーの代わりにPowerPCを、という考え方は間違っていないが、問題はこの当時のPowerPCは(PowerPC 620を唯一の例外として)64bitアドレスに対応していなかったことだ。

 AS/400は前回説明したように48bitアドレスで動いているので、32bitでは用が足りないことになる。それだけであれば「PowerPC 620を使えばいい」あるいは「P2SCでいい」と思うのだが、どうもそれだけではいろいろ足りなかったらしい。

 ベースはP2SCながら、独自の命令拡張を行なったPowerPC AS ISAを策定。これを実装したチップをPowerPC ASと称した。最初に登場したのは1995年のA10で、CMOS-4S(0.65μm)で製造され、50~77MHz駆動だった。ちなみにスーパースカラー構成で、77MHz動作のものは231MIPSの性能だったらしい。

 この性能を確保するために、4KBの命令キャッシュと8KBのデータキャッシュ、さらにオフチップで1MBのUnified L2キャッシュを搭載していたそうだ。このA10はCobraというコード名で知られており、50MHz駆動のものはCobra-Lite(低コスト版)だったらしい。

 これの改良型がA30で、Muskieというコード名で知られている。まず動作周波数を引き上げる(最大125~154MHz)ために、0.65μmのCMOSから0.72μmのBiCMOSに切り替え、同時に4命令同時実行を可能としたほか、キャッシュ容量の拡大、4way SMPのサポート、システムバスの高速化(2.67GB/sec)などが盛り込まれている。

 これを再びCMOSに戻したのが1997年のA35で、RS64という方が通りが良い。コード名は“Apache”で、最大で12wayのSMPに対応するほか、キャッシュの大容量化(オンチップ128KB/オフチップ4MB)、システムバスの128bit化などが施されている。

 動作周波数こそ125MHzで据え置きになったが、消費電力削減やキャッシュ容量の増大などで、実質的には変わらない性能が発揮できたようだ。

 1998年には0.35μmに微細化、262MHz駆動でオフチップキャッシュを8MBに増強したRS64-II(Northstar)、1999年には0.22μmで450MHz(のちに銅配線で600MHz)まで動作周波数を引き上げたRS64-III(Pulsar)と来て、2000年に0.18μmで750MHz駆動のRS64-IV(Sstar)に至る。

 この一連の製品は原則としてはAS/400専用ではあるが、一部RS/6000に採用された製品もある。そしてこのRS64-IVがAS/400の最後の専用プロセッサーであり、このあとAS/400の製品ラインはPOWERプロセッサーに統合されることになる。

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