3月22日、オールジャンルのXTech展示カンファレンス「JAPAN INNOVATION DAY 2019 by ASCII STARTUP」が開催される。IoT・ハードウェア、AIやフィンテックやヘルステック、スポーツテック、働き方に関連するビジネスSaaSなど幅広い展示を用意。中でも注目は、キャッシュレスをテーマにした経産省によるセッションだ。
これに関して、ジャーナリストの西田宗千佳氏によるキャッシュレスについての特別寄稿をお届けする。変わりゆく国内キャッシュレスの現在がどうなっているのか、そして国はそれをどのように見ているのか、本記事をヒントに3月22日開催のセッションにぜひ臨んでもらいたい。
国内ではキャッシュレス決済を巡る動きが激しい。12月には、ソフトバンクグループの「PayPay」が100億円分還元をうたう大規模キャンペーンを展開、不正利用のニュースもふくめ、大きな話題となった。銀行業への参入を発表したLINEも「LINE Pay」で利用促進キャンペーンを行なっている。既存銀行の参入も続々と続き、当面話題はつきそうにない。
一方、これだけキャッシュレス決済、特にバーコードを使った決済が増える理由は、今ひとつ見えづらい状況にある。先行する海外勢を追いかけて……という見方もあるが、国内市場中心の決済で、海外を必要以上に意識する必要はない。
現在キャッシュレス決済が注目されているのは、日本における「決済とそれに付随するビジネス」に変化をもたらす可能性が高いからである。日常的なものだけに、それが影響する事業者も多い。
個人商店に根強く残る「現金主義」
そもそも日本は、個人消費における現金決済の比率が高い国のひとつである。個人レベルで「現金決済で困っているのか」といえばそうではないだろう。だが、今後もそれでいいのか、というとそうではない。
日本は現金支払いの国ではあるが、ことコンビニや大手家電店、飲食チェーンなどの大規模店舗に関していえば、特に現金偏重というわけはない。クレジットカードやSuicaに代表される交通系ICカードの導入も進んでいるし、バーコード決済も順調に採用が進んでいる。これらの企業の場合、キャッシュレス導入に対するハードルは主に「機器導入のタイミング」であり、コストではない。数年に一度やってくる機器更新に合わせて導入することで、若干のタイムラグはあっても、新しい決済手段を導入するのは難しくない。
一方、問題が多いのは小規模店舗や飲食店を中心とした個人経営の店舗だ。こうした業種では、運営資金に余裕を持たせるのがなかなか難しい。よほどのメリットがないと、機材の入れ替え費用は出せない。
そもそも、クレジットカードに代表されるキャッシュレス決済では、売り上げが店舗に入金されるまで時間がかかることが多かった。それでいて、売り上げの数%が決済手数料として取られる。現金商売であれば売り上げをすぐ手にできて、決済手数料も発生しない。小規模な店舗では、決済手段が限られることで顧客が逃げることより、「現金で着実な商売」であることの方が重要だったのだ。
この連載の記事
-
第51回
スタートアップ
スポーツ×トークンエコノミーの可能性とは? -
第50回
スタートアップ
オープンイノベーションというエコシステムを体感 -
第49回
スタートアップ
地方の料理人を支援する「アスラボ」が、東急TAP2018最優秀賞を獲ったワケ -
第48回
スタートアップ
「欧州のイベントに出るべき理由」ジェトロとスタートアップが語る -
第47回
スタートアップ
生体認証、不動産、ソーシャル……FinTech識者が語る次の波 -
第46回
スタートアップ
“データドリブン”化する医療業界、HealthTechと日本の課題は -
第46回
スタートアップ
スピード感のある強い広報を実現するPR TIMESのウェブ接客ツール -
第45回
スタートアップ
ビジネスの裏側まで聞ける「JID 2019」 技術とアイディアの宝庫だった! -
第44回
スタートアップ
ジェトロと支援スタートアップが欧州のイベント出展の成果を披露 -
第43回
スタートアップ
消費増税ポイント還元 本当のねらい -
第42回
スタートアップ
各界のプロがホンネで語る世界展開を成功させる知財戦略とは - この連載の一覧へ