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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第482回

あと1年は14nmプロセスのCPU供給不足が続く インテル CPUロードマップ

2018年10月29日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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消費電力増を許容して性能を引き上げた
Coffee Lake Refresh

 さてそのCoffee Lake Refreshの性能だが、すでに加藤勝明氏による製品レビューが上がっているので、そちらをご覧いただいたほうが早い。同じ8コア16スレッドのRyzen 7 2700Xに大差をつけて圧勝……ではあるのだが、その分消費電力も大きく、PowerLimitフラグがたちまくっている。

 つまるところCoffee Lake Refreshであっても物理法則から逃れることはできず、性能を上げると消費電力も増える。言い換えると、消費電力増を許容して性能を引き上げたという以上の話ではないことがここからはっきりとわかる。

 以前は定格動作の時にサーマルスロットリングやパワースロットリングが起きるようなCPUを絶対に出荷しなかったはずのインテルがここまでなりふり構わず性能を引き上げる方策を取っているのは、やや異様な感じすらある。

 もっともこれも無理のないことかもしれない。実のところインテルのデスクトップ製品のパイプラインに関しては、このCoffee Lake Refreshが14nm世代の最後の弾になるからだ。

 厳密に言えば、サーバー系はこの後2019年にCopper Lakeが用意されており、これはおそらくCore-X向けの第10世代にも利用されることになると思うが、Coreの第10世代は10nmのIce Lakeとなる。

 これは連載464回でもお伝えした話で、Xeonは2020年まで10nm世代への移行をせず、先にデスクトップ/モバイル向けのCoreプロセッサーをIce Lakeベースで投入する、というのが現在の既定路線だからだ。

 Copper Lakeとの主な違いは、bfloat16(16bitの浮動小数点演算)のサポートやAI性能の引き上げで、データセンター向けのワークロードでは効果があるかもしれないが、デスクトップ/モバイル向けの性能引き上げにはまったく貢献しないため、これをデスクトップやモバイルに投入する意味はない。

 ならば、性能の引き上げと消費電力の引き下げに効果があるであろう、とインテルが期待する10nmプロセスに早めに移行したほうがマシ、ということである。

2019年末までに10nmを生産できるかが
今後のカギとなる

 問題はその10nmがどうなっているかだ。以前はそれでもいろいろ話が漏れ伝わってきていたのだが、最近インテルは10nmプロセスに関しては猛烈な戒厳令を敷いており、一切話が聞こえてこなくなっている。

 実のところインテルは今年第3 四半期に記録的な売上を達成したとしているが、この売上と裏腹に、もし10nmがコケた場合、わりとシャレにならない事態に陥ることが容易に想像されるためだ。

 現在記録中の売上はいずれも14nm世代によるものだが、AMDはすでにTSMCの7nmへの移行を進めている。AMD以外にもいくつか(最大手はAppleであるが)がTSMCの7nmへの移行を進めている最中であり、いずれもケースでも順調にシリコンが出てきている。

 TSMCが極めて順調な理由はしっかりあるのだが、それはともかくとして各社すでにFirst Silicon(一発目の試作品)をベースに評価テストを行ない、この結果を元にすでにSecond Silicon(二発目の試作品)を現在製造中である。

 各社ともこのSecond Siliconの評価で問題がなければ量産に入る、というスケジュールになっているようで、早ければ来年早々に本格量産に入る計算になる。つまりどうにかすると、来年の6月くらいには7nmベースの製品が市場に出てくることになる。

 こちらはさらに微細化が進んでいるので、例えばより多いコア数を利用できるようになるし、動作周波数がどの程度上がるかははっきりしないが、同じ動作周波数なら確実に消費電力が下がる方向になるため、特にサーバー分野では消費電力の削減という大きな武器を手にすることになる。

 もちろんインテルが10nmを予定通り2019年末までにきちんと立ち上げられればそれほど問題はないが、これに失敗すると2019年あたりに更新時期を迎えるサーバーのシェアをAMDにけっこう奪われかねない。

 先ほど2018年第3四半期の話題が出たので、直近3年の第3四半期の決算報告から部門別決算を抜き出してみた。

直近3年の第3四半期部門別決算報告(売上)
売上 2018年 2017年 2016年
Client Computing Group 102億3400万ドル 88億6000万ドル 88億9200万ドル
Data Center Group 61億3900万ドル 48億7800万ドル 45億4200万ドル
Internet of Things Group 9億1900万ドル 8億4900万ドル 6億8900万ドル
Non-Volatile Memory
Solutions Group
10億8100万ドル 8億9100万ドル 6億4900万ドル
Programmable Solutions Group 4億9600万ドル 4億6900万ドル 4億2500万ドル
直近3年の第3四半期部門別決算報告(純利益)
純利益 2018年 2017年 2016年
Client Computing Group 45億3200万ドル 36億0000万ドル 33億2700万ドル
Data Center Group 30億8200万ドル 22億5500万ドル 21億1000万ドル
Internet of Things Group 3億2100万ドル 1億4600万ドル 1億9100万ドル
Non-Volatile Memory Solutions Group 1億6000万ドル -5200万ドル -1億3400万ドル
Programmable Solutions Group 1億600万ドル 1億1300万ドル 7800万ドル

 実際にはこのほかに“All Other”(その他)の項目もあるのだが、金額が少ないため割愛する。CCG(Client Computing Group)はCoreプロセッサーを、DCG(Data Center Group)はXeonを売り、IoTはまさにIoT、NVMSG(Non-Volarile Memory Solutions Group)はフラッシュやOptaneメモリーを、PSG(Programmable Solutions Group)はFPGAをそれぞれ扱っている。

 この中で数字の桁が違うのはCCGとDCGであるが、金額としてはCCGの方が大きいものの、利益率(純利益÷売上)はDCGが上回っている。

 2018年など、最終的な利益率が5割を超えているあたりおそろしく良い商売というわけだが、これがAMDの7nm製品によってシェアが奪われたり、あるいは価格競争に巻き込まれて値下げを余儀なくされると利益にシビアに跳ね返ることになる。

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