1971年にWatson Jr.氏が引退したことで、Watson親子の世代が終わりを告げるわけだが、この話をする前に、そのWatson親子の時代のIBMの社風についてもう少しだけ補足しておきたい。
Watson Sr.氏が掲げた
スローガン“THINK”
1914年、Watson Sr.氏がIBMの前身であるCRTの社長になった時、彼が標榜したスローガンが“THINK”(考えろ)であった。
画像の出典は、IBM Archives
1915年にWatson Sr.氏がこれについて語った音声が、IBM Archivesで公開されている。こちらにその全文が載っているが、簡単に訳せば以下のとおりだ。
「我々は読んだり、聞いたり、討論したり、観察したり、考えたりすることで学習を続けなければならない。我々は考えることをやめてはいけない。それをやめることで、トラブルに陥るからだ。マレイ博士(ニコラス・マレイ・バトラー博士)は最近『世界中の問題のほとんどは、人々が考えることをやめなければ容易に解決できる』と述べている」
従業員に対し、上からの指示に盲従するのではなく、自分で考えることを積極的に促すというこのスローガンは、その後100年を超えてもまだ有効である。そしてIBMのThinkPadも、このThinkというスローガンから派生したものと言っても良い。
2011年にはIBM100 THINK exhibitを開催し、また2013年のショートフィルムであるA Boy And His Atomも、最後にTHINKで〆るあたり、“THINK”はIBMにとって重要なスローガンであり続けている。
スローガンだけではなく、Watson Sr.氏は従業員の待遇改善にも熱心だった。1916年には従業員向けの教育プログラムを開始しており、これはその後20年間継続された。
この連載の記事
-
第803回
PC
トランジスタの当面の目標は電圧を0.3V未満に抑えつつ動作効率を5倍以上に引き上げること IEDM 2024レポート -
第802回
PC
16年間に渡り不可欠な存在であったISA Bus 消え去ったI/F史 -
第801回
PC
光インターコネクトで信号伝送の高速化を狙うインテル Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第800回
PC
プロセッサーから直接イーサネット信号を出せるBroadcomのCPO Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第799回
PC
世界最速に躍り出たスパコンEl Capitanはどうやって性能を改善したのか? 周波数は変えずにあるものを落とす -
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ -
第793回
PC
5nmの限界に早くもたどり着いてしまったWSE-3 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ