1971年にWatson Jr.氏が引退したことで、Watson親子の世代が終わりを告げるわけだが、この話をする前に、そのWatson親子の時代のIBMの社風についてもう少しだけ補足しておきたい。
Watson Sr.氏が掲げた
スローガン“THINK”
1914年、Watson Sr.氏がIBMの前身であるCRTの社長になった時、彼が標榜したスローガンが“THINK”(考えろ)であった。
![](/img/2018/10/15/699029/l/e9157a0c2ebbab0a.jpg)
この“THINK”は、その後IBMのオフィスや工場、さらには同社の出版物やカレンダー、写真などありとあらゆるところに掲載された
画像の出典は、IBM Archives
1915年にWatson Sr.氏がこれについて語った音声が、IBM Archivesで公開されている。こちらにその全文が載っているが、簡単に訳せば以下のとおりだ。
「我々は読んだり、聞いたり、討論したり、観察したり、考えたりすることで学習を続けなければならない。我々は考えることをやめてはいけない。それをやめることで、トラブルに陥るからだ。マレイ博士(ニコラス・マレイ・バトラー博士)は最近『世界中の問題のほとんどは、人々が考えることをやめなければ容易に解決できる』と述べている」
従業員に対し、上からの指示に盲従するのではなく、自分で考えることを積極的に促すというこのスローガンは、その後100年を超えてもまだ有効である。そしてIBMのThinkPadも、このThinkというスローガンから派生したものと言っても良い。
2011年にはIBM100 THINK exhibitを開催し、また2013年のショートフィルムであるA Boy And His Atomも、最後にTHINKで〆るあたり、“THINK”はIBMにとって重要なスローガンであり続けている。
スローガンだけではなく、Watson Sr.氏は従業員の待遇改善にも熱心だった。1916年には従業員向けの教育プログラムを開始しており、これはその後20年間継続された。
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