「VAIO、法人向く。」の現在を探る 第34回
VAIOの新しい応用例として注目を集めている
Windows 10 IoT Enterpriseと通常版の違い、導入の注意点は?
2018年09月25日 09時00分更新
すべてのPCにIoT版を適用できるわけではない
となれば、導入するマシンをすべてWindows 10 IoT Enterpriseにそろえてはどうかと考える管理者もいるだろう。しかしこのライセンスは、組み込みや特定用途に限定されたものだ。一般的なWindowsマシンには導入はできない。シンクライアントのような組み込み型や、特定のことにしか利用しないようなマシン(たとえば受付業務用として特定のアプリしか利用しないとか、製造ラインでしか利用しないなど)であれば問題はない。ただし、一般事務で利用するようなOAパソコンとしての利用では、通常のボリュームライセンスでの導入になってしまう。
もうひとつ注意したいのは、Windows 10 IoT Enterpriseを導入する際には、Windows 10 Proのライセンスも必要である点だ。Windows 10 Pro搭載のマシンを購入したあとWindows 10 IoT Enterpriseライセンスを適用する段取りで、2つのライセンスが必要であるため、通常よりも高いライセンス料がかかってしまうのだ。
ただし、VAIOのようにOEM提供で、Windows 10 IoT Enterpriseを扱っているメーカーの場合は例外だ。Windows 10 IoT Enterpriseを適用したマシンを購入できる。1つのライセンスで済むというメリットがある。Windows 10 IoT Enterpriseを導入する場合はメーカーに頼んだほうが断然いいのである。
この連載で追いかけているVAIOの場合、Windows 10 IoT Enterpriseのサポートを開始したことで、シンクライアント導入企業からの引き合いが増えているという。
働き方改革のモバイルワークでは、薄く、堅牢性が高く、軽量なマシンが望まれている。この点では、VAIO Pro PF/PGシリーズのような一般的なモバイルPCのほうが優れているが、以前はその筐体をシンクライアントとして利用することは考えられなかった。
Windows 10 IoT Enterpriseのロックダウン機能により、マシンの選択肢がグッと広がった。結果、これまで土俵にすら上がらなかったVAIO Pro PF/PGのようなシリーズを検討したいという問い合わせが増えているそうだ。
VAIOの場合は、キッティングサービスによりすべてカスタマイズした状態で納品してくれるので、企業の管理者の手を煩わすことなくシンクライアントマシンを導入できる。また、現状では「Windows 10 IoT Enterprise 2016 LTSB」を適用しており、導入時期をずらしたり、あとから追加したい場合でも、納品時には同じバージョンのOSを適用可能だ。バージョン違いによって動作検証しなければならないといったことは必要ない。
サポート期間内に次のマシンリプレイスの予定をたてればいいので、予算の確保や次のシステム構築の際の柔軟性も得られる。導入企業にとってもメリットがあるだろう。
最後にスペックについて。VAIO Pro PF/PGシリーズをシンクライアント化する場合、CPUはCeleron、Core i3、Core i5が選べる。シンクライアントであれば、Celeronでもよさそうだが、ある程度ハイパフォーマンスなマシンの導入をオススメしているという。
理由としてはシンクライアントとして運用するとしても、ビデオ会議などをする際にはある程度の性能が求められるためだ。
従来のシンクライアント専用マシンでは、非力なCPU、少ないストレージ容量とメモリーのため、テレビ会議が難しかった。Windows 10 IoT Enterpriseでは、通常のWindowsマシンとしても利用できるので、テレビ会議なども容易に実現できる。シンクライアントでモバイルワークを実現するマシンとして検討する価値の高い製品といえよう。
「Windows 10 IoT Enterprise」によりシンクライアントを導入している企業、またはこれから導入を考えている企業にとっては、かなり朗報であり、VAIOのようにモバイルマシンとして軽量かつ堅牢性が高く、シンクライアントに必要ないつでもどこでもネットワークを確保するためのLTEモジュールも搭載可能。さらに「LTE over IP」による通信のセキュリティを高める技術を活用したリモートアクセスソリューション「VAIO Secure SIM」なども今後提供されていく。ますます価値のある製品となるはずだ。
なお「Windows 10 IoT Enterprise」はシンクライアントとしてだけでなく、特定用途として限定的に使われるマシンなら導入できる。一般事務や営業などで使うマシン以外で限定された用途に使われているマシンがあれば、一考して検討してみてはどうか。
この連載の記事
-
第56回
ビジネス
Windows Embedded Standard 7の延長サポート終了迫る。対策は万全? -
第55回
デジタル
パスワードは限界、テレワークにも効く生体認証「EVE MA」をVAIOと使う -
第54回
デジタル
テレワークのセキュリティ対策で関心度上昇中、「TRUST DELETE Biz for VAIO PC」とは? -
第53回
ビジネス
大量にマシンを導入する際に考える予算と生産性のバランス -
第52回
ビジネス
モバイルワークで重要なWeb会議を実現するのに必要なもの -
第51回
デジタル
リモートワークの選択肢が必須の時代、新型VAIO SXシリーズの輝きが増す -
第50回
ビジネス
ケーブル1本で何でもできるUSB Type-C搭載がマシン選びのキモ! -
第49回
デジタル
デスクトップPCからのリプレイスで選びたい、VAIO Pro PH -
第48回
ビジネス
Windows 7 EOS間近! いまやるべきWindows 10への移行のキモ -
第47回
ビジネス
メインマシンとして使える900g以下PCが、働き方改革の課題を解決する -
第46回
ビジネス
働き方改革の第1歩は、いままでの使い勝手を変えない「パソコン」でペーパーレス化すること - この連載の一覧へ