検証環境は?
ベンチマーク検証に入る前に、今回のテスト環境を紹介しよう。先代Threadripperから最上位の1950X、メインストリーム向けのハイエンドRyzen 7 2700Xをベースラインとし、2990WXおよび2950Xのパフォーマンスを比較する。また、インテル側のHEDT向け最強CPUであるCore i9-7980XEも準備した。ただしこのCPUはイッペイ氏の私物であり、殻割りのうえ液体金属グリスを塗布してあるので、微妙に性能が高く出る可能性がある(とはいえ定格運用なので差は微々たるものだろう)。なお、Ryzebおよびi9のテスト環境はCPUとマザーボードを除きhreadripper検証環境と同一だ。
X399マザーのBIOSは評価用に配布されたバージョン“0064(7月28日付け)”を使用した。メモリーは各プラットフォームで使いまわしているが、メモリーの動作クロックは各CPUがサポートする最大値に合わせている。即ち2950X/2990WX/2700XはDDR4-2933、1950Xおよび7980XEはDDR4-2666となる。
また、Precision Boost OverdriveについてはサポートしているCPUについてはBIOS上でEnableとしたが、細かいパラメーターについてはマザーのデフォルト値(もしくはAuto)設定とした。Precision Boost Overdrive使用により消費電力は上がってしまうが、今回は手動のOCなしでどこまで性能に差がつくかを見てみたい。
そして、性能に大きく響きそうなThreadripperのLegacy Compatibilityモードは2950Xと2990WXのみ測定、逆に先代Threadripperで影響が軽微であったメモリーアクセスモードについてはデフォルト設定のままとした。
| 検証環境:Threadripper | |
|---|---|
| CPU | AMD Ryzen Threadripper 2950X(16C32T、3.5GHz〜4.4GHz)、AMD Ryzen Threadripper 2990WX(32C64T、3GHz〜4.2GHz)、AMD Ryzen Threadripper 1950X(16C32T、3.4GHz〜4GHz) |
| マザーボード | ASUS ROG ZENITH EXTREME(AMD X399、BIOS 0064) |
| CPUクーラー | Enermax ELC-LTTR240-TBP(簡易水冷、240mmラジエーター) |
| メモリー | G.Skill F4-3200C14D-16GFX×2(DDR4-2933または2666で運用) |
| グラフィックスカード | NVIDIA TITAN V |
| ストレージ | Samsung MZ-V7E500B/IT(NVMe M.2 SSD、500GB) |
| 電源 | Silverstone SST-ST85F-PT(850W、80PLUS Platinum) |
| OS | Windows 10 Pro 64bit版(Fall Creators Uptade) |
| 電力計 | ラトックシステム REX-BTWATTCH1 |
| 検証環境:Ryzen | |
|---|---|
| CPU | AMD Ryzen 7 2700X(8C16T、3.7GHz〜4.3GHz) |
| マザーボード | GIGABYTE X470 AORUS GAMING 7 WIFI(AMD X470) |
| 検証環境:Core i9(インテル) | |
|---|---|
| CPU | Intel Core i9-7980XE(18C36T、2.6GHz〜4.4GHz) |
| マザーボード | ASUS ROG RAMPAGE VI EXTREME(Intel X299) |
スコアーも凄いが、消費電力も凄い
CPUの性能比べといえばまず「CINEBENCH R15」だろう。32コア64スレッドの2990WXがどこまでスコアーを伸ばし、2950X対1950Xの16コア32スレッド対決はどちらが勝つのか、そしてLegacy Compatibilityモードでコア数を減らすとスコアーにどう影響するのか……などの要素をチェックしていきたい。
2990WX全コア稼働時のスコアーはただ驚愕。Precision Boost OverdriveをDisableにすると5000ポイントをわずかに下回る程度だが、Enableにすると5600ポイントオーバーになった。シングルスレッドのスコアーは169ぽいととやや控えめだが、それでも1950Xを超え2700Xに迫る。シングル性能を犠牲にせずここまでマルチスレッド性能を伸ばした点は驚異的だ。
そしてLegacy Compatibilityモードを1/2にすれば1950Xよりやや速く、1/4にするとほぼ2700Xと同等になること、さらにコア数を減らすほどシングルも徐々に伸びる傾向が見られるのは非常に面白い。コア数を増やせば増やすほど、熱や電力の制限が厳しくなることを示唆している。
だがそれ以上に衝撃というべきは、16コア32スレッドの2950Xが18コア36スレッドの7980XEをマルチスコアーで上回っているという点だ。シングルスレッドの速さはインテルの強みで、これが破られなかったのは少々残念だが、それでも2950Xのシングルは176、1/2モードで178ポイントと7980XEの背中にピッタリと付けている。
もっとも、第2世代ThreadripperのスコアーはPrecision Boost Overdrive込みのスコアーなので、若干OCして下駄を履いているとも言えるが、ここで1番大事なのは「16コア」が「18コア」に勝ったという点。2990WXのスコアーの凄さよりも、こちらの方が重要である。
また、2990WXの1/4モードおよび2950Xの1/2モードのスコアーが2700Xのそれに非常に近いという点は、性能をスケーラブルに伸ばしていけるAMD製CPUのもう一つの強みが現れているといえるだろう。
おおよその馬力がわかったところで消費電力もチェックしよう。HEDT向けCPUを使っている時点で消費電力に一喜一憂するのは野暮の極みだが、ワットパフォーマンスを完全無視する訳にもいかない。
今回はシステム起動10分後の安定値を“アイドル時”、「OCCT Perestroika v4.5.1」の“CPU Linpack”テスト(64bit/AVX/全論理コア使用)を最低15分稼働させ、その間のピーク値を“OCCT時”とした。
Precision Boost OverdriveをEnableにした第2世代Threadripperの消費電力はかなり高く、特に全コア稼働時の2990WXの消費電力は凄まじい。ところがコア数を減らして1ダイ構成にすると、2700Xより少々大きい程度に収まる。2700Xよりやや消費電力が増えている点は、単純にX399マザーの設計や装備等でベースの消費電力が高くなっている点と、1/4モードで無効化されたダイも最低限の回路で動かしているからと推測できる。
ちなみに、Precision Boost OverdriveをDisableにすれば、2990WXでもMax450W程度に収まる。これをマトモにOCするとなれば、1000Wクラスの電源ユニットが必要になることは確実だろう。

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