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「IoT Edge Connect」など新ソリューションも紹介、AIPの強みを生かし新たな顧客層を取り込む

アカマイ“第5の柱”はIoTか、ブロックチェーンか? 幹部に聞く

2018年08月13日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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ブロックチェーン:秒間100万件を処理、決済ネットワークのサービス化目指す

 もうひとつのブロックチェーンについてはどのような取り組みを進めているのか。

 アカマイでは今年5月、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と共同で「新型ブロックチェーン」の開発プロジェクトに取り組んでいることを発表している。発表によると、決済処理速度が「2秒以下」、取引処理性能が「毎秒100万件超」という超高速なブロックチェーンがAIP上で実現できることを実証したという。さらには「機能拡張により毎秒1000万件超への展望も可能」と述べている。

 この決済向けブロックチェーンを実現する分散ノード、および低遅延/高速なノード間通信を実現するプラットフォームをAIPで提供するのがアカマイの役割だ。

 「世界中の優秀な研究者たちが長年研究してきたビットコインですら、秒間10トランザクション程度のパフォーマンスにとどまる。それを秒間100万件、1000万件規模に引き上げるためには、たくさんのイノベーションが必要だった」

 マコーネル氏は、ブロックチェーンも「AIPのパーフェクトな適用領域」だと語る。決済トランザクションにはスピード、規模、セキュリティが欠かせず、AIPはそれらを満たす特徴を持つプラットフォームだからだ。ちなみにアカマイは、以前から三菱UFJニコスのカード決済システム「J-Mups」の取り組みなどを通じてMUFGとの長い関係がある。

 「アカマイでは以前から、ブロックチェーンがAIPの有効な適用領域のひとつになると考えていた。一方でMUFGも、大規模で低コストな決済処理手法を探していた。そのため、このプロジェクトは自然発生的に発生したと考えている」

 アカマイとMUFGでは、このプロジェクトを通じて完成するブロックチェーン基盤を、多様な決済サービスの取引基盤としてサービス提供していくことを検討している。従来の決済基盤ではコスト面で難しかったマイクロペイメント(少額支払い)、IoTデバイスの使っただけ課金(時間単位課金)、シェアリングエコノミーにおける課金など、多様な決済シーンをサポートするオープンな基盤提供を目指すという。

 さらにマコーネル氏は、MUFGとの取り組みを発表した後に、さまざまな業界からブロックチェーン基盤に対する引き合いがあったことを明かした。ブロックチェーンを使ってサプライチェーンのトラッキングを可能にしたい製造業や食品加工業などから、ぜひとも一緒に取り組みたいというオファーがあったという。

 「まだ最終的な決定ではないが、いくつかの中規模な企業と(ブロックチェーンを活用した)サービスの共同開発に向けた話し合いを始めている」

アカマイにとって新たな顧客層への拡大につながる新事業

 IoT、ブロックチェーンという新領域への事業拡大は、顧客層の拡大ももたらすことになる。マコーネル氏もそれを認めている。

 「これまでアカマイの顧客層は、インターネットを中核とするビジネスを展開する企業だけだった。しかしこれからは、IoTが事業の核となる企業や、ビジネスにブロックチェーンを活用する企業にも拡大するだろう。われわれは、常に新しい顧客層を模索している」

 マコーネル氏は、アカマイにおける新事業の育成戦略について、これまで大きく成長させてきた事業を例に挙げて説明する。

 「たとえば数年前、クラウドセキュリティ事業の売上は数百万ドル、売上全体の6%程度しかなかった。しかし、現在は継続的に6億ドルを売り上げるまでに成長し、アカマイを支える“三本柱”の1つになっている。このように、他社との大きな差別化が見込める領域に絞りこんで大規模な投資を集中させる。これがアカマイの戦略だ」

 そして、そうした「大きな差別化が見込める領域」として現在明らかにできるのが、IoT、ブロックチェーン、さらにエンタープライズセキュリティの3領域だと語った。

 「アカマイがこれまで入り込んでいなかった新たな領域に入っていくことになる。とてもエキサイティングな時代だ」

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