焼き加減にクセはある
このマシーンに対応すべく、串打ち3日、焼き3日の経験を積んだ結果、焼き加減のクセがあり、それに合わせた串の打ち方も必要なことがわかった。
まず串打ち。串受け穴は、奥へ行くほどテーパー状に細くなっていて、先が細い竹串でも空回りしにくい形になっている。穴の深さはおおむね4cm程度だから、串打ちの際は、余白を作っておかなければならない。こんな感じで。
同時に10本まで焼けるとは言っても、串受けの間隔が狭いので、大きな具材を刺すと隣同士でぶつかってしまう。ぶつかると串が空転してしまい、その串だけ片焼けになってしまう。余裕をもって焼けるのは、せいぜい幅3cm程度までの具材と考えた方がいい。
串をどこに刺すかで焼け方も違う。熱源を支える金属棒が3本あって、これが熱を遮断してしまうからだ。デッドポイント3箇所のうち、特に正面の串受けは、金属棒と正対してしまうため焼き上がりが遅い。もっとも、全部の串が一斉に焼き上がっても食べるのが大変なので、そういうものとわかっていれば問題ない。
さらに気を付けたいのは、串の上下で焼き加減が違うことだ。これは熱源との位置関係を横から見るとわかる。一般的な18cm程度の竹串を刺した場合、熱量の大きな熱源の中心部分が、串を手で持つ部分に来てしまうのだ。
その結果、こんな感じの焼け方になる。手元の方は焦げ目もついているが、下の方はそうでもない。このムラが我慢できない場合は、具材を全体的に上へスライドさせると解決する。すると刺せる具材の量も減ってしまうが、もっと長い竹串があればなんとかなるだろう。本来は付属のBBQ用の長い串で使う設計なのだろう。しかし、焼き鳥は竹串じゃないと食べた気にならないので困るのだ。
ちなみに写真について「これは焼き鳥ではない、焼きとんか豚串だろう」と思われた方もいらっしゃるだろう。だが北海道ではこれも「やきとり」と言う。発祥は室蘭で、その昔、鶏より豚が安かったことから、こんなことになったそうだ。タレ付きのレンチンタイプも売られているが、やっぱり焼いた方がうまかった。
熱さや片付けが困ったところ
機能的には、串の打ち方、焼くポジションに気をつければ、まあ問題なく使える。しかし、どうにもならないこともいくつかある。
まず、焼き始めて感じるのは、熱さだ。換気扇のない食卓の上でも使えるのはいいが、椅子に腰掛けると熱線が胸の高さにくるので、卓を囲む全員に放射熱が襲いかかる。マシーンの場所を移すか、人が離れるかのどちらかにすべきだが、焼けて行く様子を眺めるのが楽しいから困る。
そして煙が出ないという触れ込みは、厳密に言えば違う。焼いている最中にバシッと弾けた油が熱源にかかると、やはり煙は出る。普通のグリルに比べたら微々たるものだが、出ないと言えばウソになる。
後片付けも面倒と言えば面倒だ。串受けに肉からの滴りが焼けて固着するのだ。これは熱湯に浸け、浮き上がるのを待つしかない。ガラスカバーにかかった滴りも吹いておかないと、焦げてどんどん固着してしまう。
最後に、こういうものを書く際に困るのは、商品名のブレだ。通販のウェブには「自家製焼き鳥メーカー」、付属のマニュアルには「回転式 焼き鳥&バーベキューマシーン」、製品の裏には「回転式バーベキューグリル器」。一体どれが正式な製品名なのか。ちなみに型番は「MINROTGRL」だから、工場では「ミニローターグリル」くらいで呼ばれているのだろう。
もし好きに呼んで構わないなら、私は断然「ザ・焼き鳥マシーン」だ。この原稿でもザ・焼き鳥マシーンで統一させてもらった。製品の名前を勝手に決めて申し訳ないが、もし継続的に売って、改良もするつもりなら、製品名くらい統一してくれ。私はとてもこの機械が気に入っている。ありがとう!
四本 淑三(よつもと としみ)
北海道の建設会社で働く兼業テキストファイル製造業者。