M.2とU.2のいいとこ取りを狙って誕生
ではそのNGSFFについて説明しよう。まずは「なぜNGSFFを提案したか」である。簡単に言えば「M.2は小さすぎるうえにエンタープライズ向けの対応がなく、一方U.2はそうしたものがある代わりに大きすぎる」から、とされる。
画像の出典は、Flash Memory Summit 2017におけるSamsungのDavid Wang博士の“Next Generation Small Form Factor (NGSFF) SSD Proposal”
M.2は基本的にモバイル向けなどに向けた規格なので、寸法はぎりぎりでしかない。またそもそもシステムに1~2個搭載する程度の前提なのでホットスワップ(電源を入れた状態のままの交換)やデュアルポート(2つのコントローラーからの同時アクセス)などに対応できない。
一方のU.2は、2.5インチHDDを収めるベイに格納できることを前提にした規格なので、容量は十分に取れるし機能的にも十分であるが、今となっては無駄に大きい。そこでM.2をもう少し拡張して、さらにエンタープライズ向け機能を追加した新規格を開発しようとなったわけだ。
同じ発想で開発されているものに、インテルのRuler SSD(物差しSSD)がある。こちらはEDSFF(Enterprise and Data Center SSD Form Factor)という名称を定め、EDSFF Working Groupという組織も作って標準化を進めようとしているが、今のところまだ標準化が完了したという話はない(予定では2017年末に標準化が終わるはずであった)。
画像の出典は、インテルの“Ruler Form Factorのページ”
画像の出典は、EDSFF Working Groupの“Introductionページ”
SamsungがNF1を急ぐ理由の1つは、このEDSFFの標準化が予定通り進まなかったこともあるのかもしれない。
話をNF1に戻そう。NF1は設計目標として、Ruler SSDと同じく1Uサーバーに最適化することを置いた。1Uサーバーとはデータセンターなどで使われる19インチ幅のラックに組み込むタイプのシャーシで、高さが44.45mm(1.75インチ)に限られている。
Ruler SSDはこの44.45mmぎりぎりまで高さ方向をとることを狙っているようだが、NF1はもう少し無難に30.5×110mmという、「M.2より一回り太い」程度にとどめている。
実際下の画像をみるとわかるが、高さと厚みはM.2よりあるものの、長さそのものは同じ110mmに抑えられているのがわかる。基板の面積比で言えば2420mm2:3355mm22≒1:1.386……というあたりであまり大きくはなっていないのだが、厚みを0.5mmほど増やした(3.88mm→4.38mm)分が大きい。
画像の出典は、Flash Memory Summit 2017におけるSamsungのDavid Wang博士の“Next Generation Small Form Factor (NGSFF) SSD Proposal”
これにより、従来よりも積層数を増やした(3Dの層数を増やすの意味ではなく、完成した3D NANDをさらにマルチチップ的に積み上げたエンタープライズ向け)NANDフラッシュを利用できるようになった。
この結果、チップの個数そのものが従来比で2倍、容量も2倍のものを利用できるため、トータルでは最大4倍という計算になる。
画像の出典は、Flash Memory Summit 2017におけるSamsungのDavid Wang博士の“Next Generation Small Form Factor (NGSFF) SSD Proposal”
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