業務を変えるkintoneユーザー事例 第35回
社内外のコミュニケーションに変革を体験したカクイックス
一目惚れから4年目!新サービス開始を機にkintoneを導入
2018年07月18日 09時00分更新
病院向けにリネンサプライやアメニティのレンタル事業を展開してきた鹿児島のカクイックス。2016年からは、入院に必要な寝具などのセットを1日単位でレンタルする個人向けサービスにも乗り出した。この新サービスにkintoneを導入、病院に駐在する現場スタッフと本部との密な連携に役立てている。
kintoneはサイボウズOfficeとデヂエのいいとこどり?
カクイックスとサイボウズのつきあいは、10年近くになる。サイボウズOffice、デヂエを全社導入しており、社内でも気軽に「じゃあそれデヂエに書いといて」という会話が飛び交うほど、ITを使った情報共有は浸透していた。そうした下地があることも影響したのか、カクイックスの福里 直也さんはkintoneとの出会いを「一目惚れ」と表現した。
「2012年のIT展示会でkintoneを見て、これはサイボウズOfficeとデヂエのいいとこ取りをしたサービスだと感じました。ただ、すでに社内ではサイボウズOfficeなどが根付いていること、kintoneの導入実績やアプリサンプルが少なかったことから、すぐに導入とは考えませんでした」(福里さん)
一目惚れした製品の導入に突っ走ることなく、福里さんは冷静にkintoneを分析した。その特性がもっとも生きる場所で、kintoneを導入したいと考えたからだ。このころからすでに、個人向けサービスの検討は始まっていた。実現に向けてどのような人員配置が必要か、バックオフィスの体制、それらをつなぐITまで含めて、要件を洗い出し精査していたという。
そして、満を持して2016年4月、鹿児島のとある病院を皮切りに入院セットサービスがスタートした。入院時に必要な寝具や下着、歯ブラシなどの消耗品まで含めて1日単位でレンタル可能。こまかな買物や洗濯の心配から家族を解放し、患者と過ごす時間をゆっくりとってもらうのが、サービスの狙いだ。そのために病院にはコンシェルジュを配置、入院セットサービスの利用者や病院との接点として現場で動いてもらうことになった。
コンシェルジュが担う基本的な役割は3つ。契約業務、請求業務、レンタル品の在庫管理だ。在庫管理には、病室までレンタル品を届ける業務も含まれる。
「個人向けサービス自体の経験が少なく、社内には期待とともに不安感が広がっていました。しかし、私は新サービススタートとチャンスだと捉えていました。このサービスの中でkintoneがどういう役割で使われるべきか考え抜き、サービス運営にkintoneを組み入れました」(福里さん)
ハードルを下げること最優先!業務に合わせてアプリを絞り込む
入院セットサービスで使われているkintoneのアプリは、コンシェルジュの業務である契約、請求、在庫管理の3つ。業務に合わせてアプリを絞りこんだ。これは福里さんが2012年にkintoneに出会ってから、自社で導入するならどのように使うべきかを徹底的に考え抜いた結果だ。
「新しいツールの導入にはいろいろなハードルがあります。それらのハードルを下げることを最優先しました。業務に必須のアプリに絞り込んだのも、コンシェルジュの利用ハードルを徹底的に下げたかったからです」(福里さん)
現場のコンシェルジュがサービスを進めてもらうため、最低限の利用ルールしか決めない。困ったことや本部への要望があれば、すべて掲示板を使ってやりとりすることだけは、徹底してもらうようにした。そのときの伝達方法に、ひと工夫必要だと福里さんは言った。
「現場への指示にIT的な用語を使うと、それだけで気持ちが離れます。『掲示板に入力してください』ではなく、私は『掲示板で言ってください』と伝えました。この言い換えひとつで、システムを身近に感じてもらえるんです。『Googleで検索して』よりも『Googleに聞いて』と言われると、軟らかく身近に感じるでしょう。同じ要領です」(福里さん)
本社から各コンシェルジュへの連絡も、もちろんkintoneを使っている。契約先の病院からの問い合わせは、鹿児島にある本社宛ての電話であることが多い。その内容をkintoneに記入し、対応の進捗状況などをコンシェルジュと本社で共有できるようになっている。各病院はゲストスペースで区切られ、本部からはすべての情報を見ることができるが、コンシェルジュは自分の病院の情報しか見えないようセキュリティ上の配慮も怠りはない。
アプリを身近に感じてもらうだけではなく、機能面でも入力のハードルを下げる工夫をこらした。入力する項目は最低限に抑え、「背景色が見づらい」という要望にはスタイルシートの変更で応えた。さらに、kintone上だけで完結させるのではなく、紙が便利な部分には紙を残した。レンタル品の配付、回収リストがそれだ。コンシェルジュが病棟を選ぶと、その病棟にいる利用者とプランが表示される。出力ボタンを押すとPDFが作成されるので、それを印刷して配付時に持参し、チェックシートとして利用する。kintoneが役立つシーンを考え抜いたからこそ、すべてをkintoneで作り込むのではなく紙を併用するという判断もできたのだろう。
kintoneがコミュニケーションを変える、業務改善の積み重ねが世界を変える
新サービス開始とともにkintoneを導入して約2年。入院セットサービス利用者数はスタート直後の15倍にまで伸び、そのうち85%はkintoneで管理されている。契約者数は伸び続けており、業務拡大にともなってkintoneも使い込まれていくだろう。
「kintoneを使い初めてうれしかったことは、コミュニケーションの進化が起こったことです。コンシェルジュ同士の会話の中から、業務改善提案が出てくるようになりました。自発的に病院の方々とコミュニケーションを取って改善ポイントを見つけるコンシェルジュや、有志で集まって自主的な勉強会を開くコンシェルジュも現れました」(福里さん)
コンシェルジュ同士の勉強会は有志が自分たちで企画して開催したもので、福里さんの耳に届いたのは開催後だった。kintoneを通して業務改善の意識を持ってもらえたこと、コンシェルジュ同士のコミュニケーションが深まっていることを実感して喜びを感じたという。
「ここまでのkintone活用は3つの段階に分けられる」と福里さんは最後にポイントをまとめた。第0段階、kintoneに触れて見る前の段階はまず、サービスの本質を深く知り、今後の展開について考えること。新たに始めるサービスをどのようなものにしていきたいのか、どのように進めたいのか、そこにkintoneがどう役立ちそうなのか、一生懸命考えた。この段階ではまだ、kintoneに触れてはいない。
第1段階になり、やっとkintoneに実際に触れることになる。ギャップを知り、考える段階だ。実際にアプリを作ってみて、コンシェルジュとなる人に使ってみてもらい、ダメなところは作り直す。作っては壊しの繰り返しで、アプリから余分な機能をそぎ落とされ、使いやすい物へと洗練度を高めていく。
「そしてサービスがスタートし、現段階にたどり着きました。今はすべてをコンシェルジュに託すフェーズに入っています。現場のコンシェルジュから業務改善の要望が上がってくれば、そのままアプリに反映しています。予想とは違って使いにくくなることもありますが、そのときにはまたコンシェルジュから改善要望が上がってくるので、そこで方向修正されます」(福里さん)
業務改善の権限はすべてコンシェルジュに託す。しかし一方でアプリを実際に改修する権限は本社が掌握するとう一線も引いている。この役割分担で、カクイックスの業務改善の歯車は回り続けている。
「細かい業務改善を続けて、会社が変わるわけではありません。少し大げさに言うなら、その積み重ねは世界を変えていきます」(福里さん)
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