「体温で発電するスマートウォッチがあるんですけど」と、編集部から連絡が来たので、(映画の)マトリックスみたいでおもしろいですねー。と返したら、本当に「MATRIX」というブランドの製品だった。
スマートウォッチの問題はおおむねバッテリーにある。おとなしく時計として使っていれば2日は持つようになったApple Watch 3も、心拍を計測しつつGPSをぶん回すと半日と持たない。あのバッテリー切れの失望感、充電の煩わしさから解放されるというのだから、嫌が応にも期待は高まるわけである。
試してみたのは「MATRIX PowerWatch Black Ops」。50m防水、ミラネーゼストラップ付きのオールブラックモデルで、税込公式販売価格は4万824円。一見すると普通のカッコいい時計である。
ちなみにナイロンストラップ付きシルバーモデルは3万5424円。電話着信通知や200m防水、シリコンストラップ付きの「MATRIX PowerWatch X」も5月以降に発売の予定。
いずれも決して安いとは言えないが、アルミケースの質感はなかなかのもの。しかも自分が死んで冷たくなるまで、この時計は動き続けるのだ。素晴らしい。
熱電変換のための機能美
もちろん映画のように培養液に浸る必要はなく、充電用のケーブルやクレードルなども付属品にない。ミラネーゼストラップはマグネット式で、Apple Watchでもおなじみのタイプ。ラグ幅は22mmで、気に入った市販のものと交換できる。
体温で発電するには、熱電変換のための温度差が必要で、差は大きい方がいい。だから、できるだけ時計のケースは冷たくしておきたい。それでケース側面には放熱のためのスリットが切られている。これがカッコいい。体温発電の仕組みを持つ時計にしか許されない機能美と言える。
皮膚とケースの温度はディスプレーに表示される。しかし、差はいつも1~2度程度だった。これで発電しているのだとしたら、心配なのは夏場だ。東京のように外気温が体温に迫るような地域では、使い物にならないのではないか? マニュアルにも外気温「26度以下」が最速で充電でき「32度以上では充電できない」とある。
そこはしっかり考えてあって、実はリチウムメタル電池を内蔵している。腕に巻けば常時充電状態だから、仮に夏の間充電が断たれても平気だという。ものすごい省エネウォッチでもある。