Kubernetesを実装したコンテナーランタイムを提供
「Pivotal Cloud Foundry 2.0」を国内リリース、PaaS、CaaS、FaaSをワンパッケージに
2018年03月09日 12時00分更新
Pivotalジャパンは2018年3月8日、エンタープライズ向けアプリケーションプラットフォームの新版「Pivotal Cloud Foundry 2.0」の国内提供を開始した。これまでのPaaS機能に加えて、コンテナーアプリケーションをホストするContainer as a Service(CaaS)、サーバーレスアプリケーションをホストするFunction as a Service(FaaS)の機能を備え、対応できるワ―クロードを拡大している(FaaS機能は2018年中にリリース予定)。
Cloud Foundryは、オープンソースのPaaSソフトウェアとして、2011年頃からVMwareとコミュニティによって開発されてきたもの。現在は非営利法人Cloud Foundry Foundationが開発を統括している。Pivotal Cloud Foundry(PCF)はCloud Foundryの有償ディストリビューションだ。
「Cloud Foundryの設計思想は2011年当時から変わっていない。開発者に対して、Java、Ruby、Node.js、Go、Python、PHPなど開発言語の選択肢、データベースや機械学習サービスの選択肢を提供するPaaS。インフラはVMwareを意識しておらず、OpenStack、AWS、Azure、GCPなど様々な環境に対応する」とPivotalジャパン リードプラットフォームアーキテクトの市村友寛氏。そして、「PCFはCloud Foundryのコニュニティの流れに則って製品開発している」(市村氏)。
Cloud Foundry Foundationは、2017年10月にkubernetesを実装したコンテナーランタイム「Cloud Foundry Container Runtime(CFCR)」を正式プロジェクトとしてリリースし、それと区別するために従来からあるアプリケーションランタイムElastic Runtimeを「Cloud Foundry Application Runtime(CFAR)」とリネームした。
これを受けて、今回Pivotalが出荷を開始したPCF 2.0では、従来のPCFのCFAR部分(PaaS機能のコア)を「PAS(Pivotal Application Service)」と改名、新たに追加するCFCR部分(CaaS機能のコア)を「PKS(Pivotal Container Service)」と命名して、ワンパッケージでPaaSとCaaSを提供する。さらに、OSSプロジェクト「riff」をベースに各Functionをkubernetes上で展開実行するFaaS機能を「Pivotal Function Service(PFS)」の名称で2018年中にPCF 2.0のパッケージに含める計画だ。
PCF 2.0では、オーケストレーションツール「BOSH」、「VMware NSX-T」によるネットワーク仮想化機能、ユーザー認証機能などを提供するOSSプロジェクト「Credhub」を中心としたセキュリティ機能、「Open Service Brokers」といったサービス機能を共通基盤として、その上にPAS、PKS、PFS、およびサードバーティ製のメッセージングサービスなどをPCF上に展開するためのマーケットプレイス「Pivotal Services Marketplace」を構築している。これにより、「PaaS、CaaS、FaaSのワークロードを、1つのプラットフォーム上でカバーできるようになる」(市村氏)。
BOSHがインフラレイヤーを抽象化し、オンプレミスのVMware環境やOpenStack、パブリッククラウドのAzure、AWS、GCPなど様々なインフラ上でのPCFの稼働を可能にしている。また、Open Service Brokersにより、PASで開発したアプリケーション資産をPKSへ移動したり、逆にPKSの資産をPASへ移動したりいったことができる。
PaaSでは.NETアプリのホストに対応
PCF 2.0のPaaS部分(PAS)の新機能として、Windows上の.NETアプリケーション、Windows Server 2016コンテナーのホストに対応した。
共通基盤部分の新機能として、「Azure Stack」上での稼働をサポートしたほか、PCFの性能を監視する運用管理者向けダッシュボード「Healthwatch」を追加した。さらに、クラウドネイティブアプリやDockerコンテナー間を接続するPCFの共通ネットワーク機能にVMware NSX-Tを採用した。PCF 2.0向けの統合開発環境として、「Spring Tool Suite」の新バージョン3.9.2をリリースしている。さらに、MicrosoftのVisual Studio Code、GitHubのAtom向けのプラグインを追加した。
CaaSではkubernetesクラスターを自動展開
PCF 2.0で新たに追加されたCaaS部分(PKS)は、現時点でオープンソース版kubernetes 1.9.2と完全互換があり、標準のkubernetesコマンドをすべてサポートする。「PCFの中核機能であるBOSHのオーケストレーション機能を最大限に活用し、システムのダウンタイムなしにkubernetesクラスターのデプロイ、スケール、アップグレードを容易に行うことができる」(市村氏)。
PKSでは、共通ネットワーク機能のVMware NSX-Tによって、kubernetesで管理するDockerコンテナーに対して動的ロードバランシング、ネットワークのマイクロセグメンテーション、セキュリティポリシー管理といった機能を提供する。
PKSの実態であるCloud Foundry Container Runtime(CFCR)は、もともとPivotalとGoogleが共同開発した「Kubo」がCloud Foundryの正式プロジェクトになったものであり、その経緯から、PKSでは、GCP Service Brockerにより、アプリケーションからGoogle Cloud Platform(GCP) APIへのアクセスを提供している。GKE(Google Container Engine)と常に適合性を維持し、さらにGCPの各サービスへ用意に接続できるようになっている。
市村氏のデモでは、PKSのCLI上でシンプルな「pks」コマンドを書くだけでマスター1ノード/ワーカー3ノードのkubernetesクラスターが5分程度で完成する様子が紹介された。また、PCF標準のCI/CDパイプラインツール「Concourse」を使うことで、CLIでコマンドをたたかずにPKS上にサービスが展開される様子も披露した。
PASで対応しきれなかったワ―クロードをPKSでひろう
PCF 2.0でのPASとPKSの使い分けについて、市村氏は、「PASはクラウドネイティブなアプリケーションの稼働に最適。PKSは、なるべく変更を加えたくないレガシーな既存のアプリケーションの実行基盤にも利用できる。これまでPASが拾いきれていなかったワ―クロードにもPKSで対応していく」と説明した。
Pivotalジャパン カントリーマネージャーの正井拓己氏によれば、PCFは年々日本でも顧客が増加しており、2017年末時点で昨年比1.5倍の顧客増を達成した。「非テクノロジー企業での利用も拡大しており、ミッションクリティカルでの利用、アプリケーションインスタンス5000以上の大規模環境で利用している事例もある」(正井氏)。PCF 2.0でCaaS機能を市場に投入したことで、多様化するクラウドのワークロードを統合的にサポートし、顧客企業のクラウドシフトを加速していきたいとする。