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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第328回

オンラインカジノ クレカ決済が依存の入口に

2025年03月25日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 政府は2025年3月21日の閣議で、新しい「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」を決定した。

 2月以降、オンラインカジノを利用したことがあるとして、活動を自粛する芸人やスポーツ選手が相次いだが、新しい計画の柱は、オンラインカジノ規制の強化だ。とくに目立つのは、クレジットカードを中心とした決済手段に関する言及だ。

 全体で127ページある計画の中で、決済に関するポイントは2つあるようだ。

  • 違法なオンラインカジノの決済や送金は、カード会社や金融機関に依頼して賭け金の流れを止める
  • 公営の競馬・競輪も、クレジットカードで決済できるため、その是非についても議論がある

 コロナ禍をきっかけに、違法、合法を問わず日本でもオンラインでギャンブルをする人が増加した。ギャンブル依存症は、多重債務のきっかけになり、場合によっては家庭の崩壊につながりかねない。

賭け金の流れをどう止めるか

 2月以降、著名人がオンラインカジノを利用し、警察の事情聴取や摘発の対象になったとして、活動を自粛するケースが相次いでいる。報道や所属する機関の発表で明らかになっているだけでも、吉本興業所属の芸人が5人から10人未満、プロ野球選手十数人が活動自粛や罰金などの処分を受けている。書類送検された卓球の選手についての報道もある。オンラインカジノに対する報道の注目が集まる中で、政府が打ち出したのが、基本計画の変更だ。

 その中で、警察庁や金融庁が打ち出しているのは、賭け金の流れへの対策だ。オンラインカジノに金を賭ける場合、ユーザーの口座からオンラインカジノが指定する口座に、賭け金となる資金を送金する必要がある。

 この金の流れの中で、ユーザーとオンラインカジノをつなぐ「決済代行業者」がいる。決済代行業者は本来、金融庁への登録などが求められるため、当局は、無登録・無免許でユーザーとオンラインカジノ側を繋いでいる業者の把握や摘発を強化する方針だ。

 一方、クレジットカードを使った決済については、以下のような対策を強化するという。

 「クレジットカード会社及び国際ブランド会社に対して当該情報を提供するとともに、クレジットカード決済網からの排除などの対応を推進するように要請する」

 この記述に出てくる「国際ブランド会社」は、VISAやMastercard(マスターカード)といった大手カード会社を指していると考えられる。つまり、「オンラインカジノやその関係者だと判明している場合、クレカで決済させるのはやめてね」という要請を強化するということだ。

公営ギャンブルもクレカ決済は可能

 基本計画は、コロナ禍をきっかけに、インターネットを通じて金を賭ける人が増加したと指摘している。

 ここで、問題になるのはクレジットカードを使ったギャンブルだ。クレジットカードが「後払い」という性質を踏まえると、借りた金を賭け金にするのとほぼ同じだ。政府は、オンラインカジノへの資金の流れを把握、摘発する姿勢を強めているものの、競馬、競輪などの公営ギャンブルについては、それほど強い姿勢は示していない。

 たとえば、日本中央競馬会(JRA)は、中央競馬や地方競馬などの馬券をネットで買える「JRAダイレクト」というウェブサービスを提供している。JRAダイレクトで使える決済サービスを調べてみると、金融機関の口座からの送金だけでなく、クレジットカードも問題なく使える。

 政府もこの問題を認識はしているようで、基本計画には「クレジットカード等を利用した後払い決済の在り方を検討する」という、弱めの記述がある。競輪、オートレースについても「効果的な対策を検討する」という言い回しだ。

 競馬、競輪、オートレース、競艇が「公営競技」である以上、クレカで決済ができなくなって売上が大幅に落ち込み、困るのは政府自身だ。この前提を踏まえると、基本計画に出てくる「検討する」という表現は、「現状をあまり変えたくありません」と読み替えたくなってくる。

 JRAダイレクトは、ネット経由で馬券を購入できる上限を1ヵ月につき10万円と設定している。金融機関から入金しようが、クレカで後払い購入しようが、1アカウントあたり10万円までと理解していいだろう。

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