ワットパフォーマンスは
危惧していたほどでなかった?
ここで消費電力と発熱面もチェックしておきたい。回路規模の大きいハイエンドGPUはワットあたりの性能悪化はとかく犠牲になりやすいが、今回は特にワットパフォーマンスよりも計算性能の確保に重きをおいたような製品なので、非常に気になるところ。
そこでシステム起動10分後の安定値を“アイドル時”、3DMarkのTime Spyデモ実行中のピーク値を“高負荷時”としてシステム全体の消費電力を計測した。
さすがCUDAコア数が多いだけあってアイドル時の消費電力は8W近く上昇したが、逆にグラフィック描画時の消費電力は素の状態でも350Wをやや上回る程度とそれほど強烈に多くもない。
今回の検証環境ではGTX 1080Tiの方がワットパフォーマンスが悪い印象を受けるが、これはGTX 1080TiカードがOC版であるため。
筆者の経験だとFounders Editionであれば、Kaby Lake-Sベースのシステムで350から360Wあたりに収まるため、今回の検証環境では370Wあたりといったところだ。このことを考えてみても、TITAN Vのワットパフォーマンスはかなり良好といえる。
また発熱はTITAN Vのみ計測した。「Assassin's Creed: Origins」を起動~プレイ状態で約30分放置~ゲームを終了させて約10分放置させた時の推移を「HWiNFO64」で計測した。その際GPUコアのクロックとPerformance Limitフラグのうち“Thrermal”フラグの状態も合わせて追跡している。
後者のフラグが立てば、それはTITAN Vの温度管理機能が“温度が高すぎるからクロックを下げる等の対策を打とう”と判断したことがわかるからだ。
まずGPU温度については、ゲーム開始早々に83度まで一気に上がり、ゲーム終了時までほぼそのレベルを維持し続けている。この83度という温度は、Founders Editionのクーラーを装備した従来のGeForceでも見られた“マジックナンバー”的な値だ。市販のOC版ビデオカードからするとやたら高く思えるが、あのクーラーなら特別高いとは言えない。
むしろポイントはクロック推移の方だ。ゲーム起動直後、1分程度のところでコアクロックは1.8GHzあたりまで一気に上がる。だがそれ以降は一気にクロックを落とし、1.56GHzあたりまで落ちてようやく安定する。
TITAN Vのブーストクロックが1455MHzなのであのクーラーでも十分役割を発揮できていると言えるが、Thermalフラグの立ち方をみると、クロックが一気に落ちるタイミングとThermalフラグが立つタイミングがほぼ一致しており、その後ゲームが終了するまでThermalフラグはほぼ立ったままだ。
TITAN XやGTX 1080Ti Founders Editionでもそうだったが、TITAN Vでもリファレンスクーラーの存在がパフォーマンスの足を引っ張っていると考えて間違いないだろう。
ただTITAN Vの場合サードパーティーからオリジナルクーラー搭載モデルが出る予定は限りなくゼロといっていい。つまりTITAN Vユーザーが根本的なパフォーマンスアップを獲得するためには、完全水冷化しか道は残されていないのである。
原稿執筆時点でTITAN V用の水枕は発売されておらず、簡易水冷キットを利用する以外に道はない。だが簡易水冷キットではGPUとメモリーは冷やせても電源部の冷却が疎かになる。TITAN Vを最高の性能で運用しようと考えているなら、こうした冷却パーツの出方を見てからでもいいだろう。
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