自分にとっての“Endgame(究極の)キーボード”を、どこかのメーカーが作ってくれるまで待つのはもう止めだ。Endgameは自作してしまえ! というのが最近のキーボードマニア、即ち“キーボー道”のムーブメント。
前回は、キーボードのキースイッチの違いや配列など、キーボードを語るにあたっての基本要素を解説したが、そろそろ実践に移りたい。
だが自作キーボードもピンキリだ。自作キーボードの難度といってもいいし、沼の深さと言い換えてもよい。どんな段階があるのかを浅いものから順に以下に簡単に紹介しよう。
(1)キーキャップのカスタマイズだけ
既存のキーボードのキーキャップだけ交換するというのも、オリジナルなものを作り出すという意味では自作キーボードに入る(かもしれない)。
前回解説した通り、Cherry MXに対応したキーキャップなら、多くのキーボードに装着できる(静電容量無接点式のキーボードでも、Cherry MX互換のキーキャップを装着できるものであればOK)。
交換用キーキャップは主に海外で多く発売されている関係で、英語配列のキーボードと非常に相性が良い。キーセット一式を入れ替えれば、気分もガラリと変わるだろう。
だがJIS配列のキーボードの場合は、右ShiftやBackspaceなどのキーが入らないことが多い。そのためWASDキーやFキーなど、ピンポイントでのカスタマイズにとどまる。キーキャップのフルカスタマイズを考えるのであれば、英語配列が圧倒的に有利だと覚えておこう。
(2)キーボード自作キット
キーボードの世界にもある程度決まったパターンのパーツがある。60% TKLかつPoker配列の“GH60”と呼ばれる自作キーボードのクローンが多数存在し、海外通販サイトを中心に安価く流通している。
この手のキットは購入者が自分の好きなキースイッチを使うことができるため、メーカー製キーボードが採用しないような組み合わせが追求できる。
ケースやキーキャップにもこだわれば、まさに世界に1つだけのキーボードになるだろう。だが組み立て時にはんだ付け作業やが必要になるので、そこを乗り越える必要がある。
しかし次のレベルのオープンソース系キーボードに比べると、圧倒的に作業の難度は低いうえに、手間も省ける。ファームウェアもあらかじめ書き込み済みなので、完成させれば機能すると考えていい。キーボード自作に初めて挑むなら、こうしたキットから入るのも手だ。
(3)オープンソース系自作キーボード
キーボードの基板またはケースがオープンソースで公開されているタイプのもの。上の自作キット同様に業者がパーツを売っていることもあるが、基板に抵抗やダイオードなどの細かいパーツをはんだ付けする必要があるとか、パーツの高さや取り付けの順番を考えつつ作業する必要があるなど、自作キーボードキットに比べると難度はずっと高い。
基板やケースが公開されているものに関しては、そのデータを元に自分で業者に発注してパーツを手に入れたり、データを改変してキーを追加したり、足りない部分を補うなど、さまざまなアプローチでオリジナリティーを追求できる。
ただこのレベルになると、ファームウェアを自前でコンパイルできる環境整備も必要になってくる。柔軟性があるぶん、難度も急上昇するのだ。
(3)完全オリジナルキーボード
自分の理想、自分の体格に合わせたオリジナルキーボードを作ってしまうのがキーボー道のひとつの到達点と言えるだろう。オープンソース系キーボードの改変から進むもいいし、まるっきり新しい配列に挑むのもいい。
回路設計はもちろんだが、それを形にするためにCADや3DCGアプリを使いこなす必要がある。険しい道だが、少しずつ進むしかない。
3つの方法それぞれに共通しているのは、日本国内で自作キーボード系のパーツをすべて網羅している業者は(今のところ)ないため、すべて、あるいは一部パーツは海外通販頼みとなる。
Aliexpressだと送料無料のところが多いが、発注から到着まで13日〜20日、トラブったりすると数ヵ月待たされることもある。じっくり計画を練り、腰を据えて楽しむものなのだ。
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