個別業務のRPA/AI化は「顕著な効果が出ない」、業務プロセス全体の最適化を目指し「ACTS」展開
RPA/AI導入の「次」を実現するIT基盤、アクセンチュアが提案
2017年11月20日 07時00分更新
アクセンチュアは11月16日、API連携を通じた社内外のシステム/アプリケーションからの情報集約から、顧客理解を深めるデータ収集/分析、顧客ごとにパーソナライズされたサービスの提供支援まで、一貫した機能/サービスを提供する統合ソリューション「ACTS(アクツ、Accenture Connected Technology Solution)」の本格展開を開始した。
同日の発表会では「金融機関のデジタル変革」を主題として、すでに第一生命保険やふくおかフィナンシャルグループでの導入実績を持つACTSの機能概要のほか、企業のデジタル変革を推進していくうえで必須となる“デジタルエンタープライズフレームワーク”、デジタル変革に併せてゼロベースアプローチで業務プロセス最適化を図る「ZBP(Zero-Based Process)コンサルティングサービス」など、顧客のデジタル変革を支援する施策を説明した。
パーソナライズされたサービス提供を可能にする統合基盤「ACTS」
ACTSは「社内外データ連携」「外部/新規サービス導入」「パーソナライズ/ビッグデータ分析」を実現する幅広い機能群を備えたプラットフォームだ。ACTSの導入により、新たなアプリケーション/IoTや社外のサードパーティから得られる新しいデータ、社内の業務アプリケーションや基幹システムに眠っている既存データを収集/集約し、ビッグデータ分析やAI(機械学習、ディープラーニング)での活用が容易になり、企業がデジタル変革に向けた新たな顧客サービスを迅速に展開するうえでの障壁をなくす。さらに、アジャイル手法やDevOpsの支援ツール群も提供されており、モバイルアプリ/Webアプリ開発の迅速化と効率化も促す。
ACTSの具体的な技術コンポーネントは大きく3つ、「ACTS コア・サービス・ドメイン」「ACTS モバイル・ドメイン」「ACTS CMS/デジタルマーケティング/ビッグデータ分析ドメイン」で構成されている。
ACTS コア・サービス・ドメインは、APIマネジメントツールを通じて、社外の各種アプリケーションや社内の既存業務アプリケーション、基幹システムなどからデータを収集/連携するサービス基盤となる。API提供のためのマイクロサービスアプリケーション基盤が提供されており、柔軟なAPI開発が可能になる。また、既存の基幹システムを改変なしでAPI連携させるために、RPA(ロボティクスプロセスオートメーション)の技術を用いてAPIコール/自動データ入出力に対応する「ロボティクスAPI」も用意されている。
ACTS モバイル・ドメインは、モバイルアプリやWebアプリの構築を担う部分だ。アジャイル/DevOpsを前提とした開発環境/ツール/プロセス/体制を備え、アクセンチュアのサービス企画担当、モバイルUXデザイナー、アプリ開発者が同一拠点で開発を進めることで、ビジネス環境の変化に即応するサービス提供を支援する。
最後のACTS CMS/デジタルマーケティング/ビッグデータ分析ドメインは、顧客行動データや基幹システムにある情報を用いたビッグデータ分析や、その結果に基づき個々の顧客に対応した(パーソナライズされた)アクションを実施するための基盤となる。
なお、ACTSはオープンソースソフトウェア(OSS)とクラウド基盤により構成されており(オンプレミス配置も可能)、新規サービスの検討や立ち上げにおける初期導入コストや運用コストを抑え、同時に短期間での展開を可能にするという。ACTS単体での販売ではなく、ACTSの導入やアプリケーション開発、コンサルティングなどのサービスに付随して提供される。
アクセンチュアでは、すでにふくおかフィナンシャルグループの金融サービスプラットフォーム「iBank」、第一生命保険とネオファースト生命保険の健康増進アプリ「健康第一」などにおいて、このACTSを導入した実績を持ち、今回あらためて本格展開を開始する。金融機関のみならず、他業界にも広く展開/導入を図っていく方針としている。
「デジタルエンタープライズ」を実現するためのフレームワーク
同日の発表会では、企業の全社的なデジタル変革において、大局的な観点から求められるITソリューション/フレームワークや、その中でのACTSの位置付け、ビジネス/業務の再構築を促すコンサルティングサービスについての説明がなされた。
アクセンチュア 執行役員 金融サービス本部 統括本部長の中野将志氏は、日本企業においてもRPAやAIといった“デジタルワークフォース(デジタル労働力)”の導入が始まったものの、これまで人間が行ってきた業務プロセスが変わっておらず、個別の業務ごとにRPA/AIソリューションが適用されており、結果として全体最適化につながっていないことを指摘。業務のデジタル化がさらに進んだ「次のステージ」の海外先進企業では、あらゆる業務はテクノロジー(デジタルワークフォース)が行うことを前提として、既存の業務や業務プロセスもゼロベースで再構築されつつあると説明する。
また、そうした全社横断的なデジタル変革を支援するデジタルソリューションは自社内で容易に横展開できることを前提とし、そのためには全社横断的なITプラットフォームを構築していかなければならないことも説明した。これが、アクセンチュアの考えるデジタルエンタープライズの姿だ。
「現在は業務ごとに基幹システムがあり、個々の業務ごとにワークフローがいい、RPAがいいと(自動化ソリューションの導入を)やっている。だが、これからは同じテクノロジープラットフォームを社内全体で使い、どの業務もこのプラットフォームに乗っているという姿を考えていかなければならない。常に業務全体をカバーし、ソリューションを横展開できるだけでなく、最適なソリューションの変化にも追随できることも必要だ。また(変化への追随が難しい)既存の基幹システムの役割は限りなく小さくしていく」(中野氏)
こうしたデジタルエンタープライズを実現するフレームワークとして、セールスや事務、顧客コミュニケーションといった業務を自動化する「デジタルワークフォース」、サイバーセキュリティとコンプライアンスを自動化する「デジタルセキュリティ」、そして共通IT基盤を提供すると同時にソリューション進化にも柔軟に対応する「デジタルプラットフォーム」という3つのコンポーネントを挙げた。
アクセンチュアでは、このフレームワークの各コンポーネントに対応する各種パートナーソリューションを提供可能だが、一部には「世の中になかなかいいソリューションがないので、アクセンチュアで作った」(中野氏)ものもあるという。今回発表されたACTSもそのひとつであり、上図では「コネクションマネジメント」に対応している。