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業務プロセス単位ではなく企業全体の自動化で“収益化”につなげるビジョンを、アクセンチュア下野氏

ビジネス成果が出ないRPA、経営層は目標を見直し「REA」を目指せ

2018年10月01日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 「RPAは浸透してきている。しかし一方で、当初期待されたほどには成果が上がっていないという現実もある」。アクセンチュア 金融サービス本部 マネジング・ディレクターで、デジタルエンタープライズ統括責任者を務める下野崇氏はこう切り出した。「このまま行けば、RPAは一過性のブームとして終わるだろう」とも語る。

アクセンチュア 金融サービス本部 マネジング・ディレクター/デジタルエンタープライズ統括責任者の下野崇氏

 アクセンチュアでは昨年11月、「ACTS」「ZBP(Zero-Based Process)コンサルティング」などRPA化の“次”を実現するIT基盤やコンサルティングサービスを発表している。さらに今年9月からは、大手企業向けに「REA:デジタル変革コンサルティング」サービスの本格展開を開始した。

 REAは「Robotic Enterprise Automation」の略語であり、RPAのような業務プロセス単位ではなく「事業単位」あるいは「企業全体」の自動化を目指す、いわばRPAの上位概念だという。そして下野氏は、この両者のフォーカス範囲の差が、成果において大きな違いを生むことを指摘する。

 このREAコンセプトに基づき、海外金融機関ではすでに新規ビジネスの立ち上げ、AIも組み込んだ業務判断の自動化などで収益化を実現している成功事例もあるという。なぜRPAでは限界があるのか、その限界を打ち破りビジネス成果に結びつけるにはどうしたらよいのか、下野氏に聞いた。

ビジネス成果の出ていないRPAには「収益」という視点がない

 下野氏はまずRPA、REAそれぞれの定義から話を始めた。先に触れたとおり、両者はフォーカスする範囲が異なる。RPAは「業務プロセス単位の」自動化、一方でREAは「事業/企業全体の」自動化を目指すものだ。REAのほうは多数の業務プロセス間も連携し、自動化するというイメージだ。

アクセンチュアの定義するRPA、REAの違い

 そしてここで問題になるのが、RPAとREAは単に取り組みの規模が違うだけでなく、獲得目標とする成果も違う点である。下野氏は、事業や企業全体という大きな視点で見ていないRPAでは「収益」という概念が出てこないと指摘する。ここで言う収益とは、従来は実現できなかったような新規ビジネス、業務革新による売上向上を指している。

 「たとえば『顧客情報の登録』『発注書の送付』といったプロセス単位で見て、自動化や再構築を図っていっても、それは業務時間の削減、コスト削減の範疇にとどまり『収益』という概念には結びつかない。収益の概念は、おそらく事業や企業全体を自動化するという視点で見ていかなければ出てこない。そこでわれわれはREAという上位概念を打ち出した」

 そして多くの日本企業がRPA、つまり自動化によるコスト削減という発想の段階にとどまり、「その上にある壁を打ち破れていない」というのが下野氏の見解だ。その背景には、日本国内では労働人口の減少=人手不足と「働き方改革」を追い風としてRPAの議論に火が付いた、という事情もあるだろう。スタート時点でのフォーカスが小さかった(小さすぎた)ために議論も小粒になってしまい、“野良ロボット”のように些末で本質的ではない問題ばかりが語られている。

 業務現場レベルで見るならば、業務時間の削減もひとつの成果ではある。だが企業全体として考える場合、それだけでは市場競争力の向上にはつながらない。特に、グローバル競争の荒波にさらされている大手企業ならば、より高い視点に立ってデジタルトランスフォーメーションを進める海外企業との競争に乗り出さなければならないはずだ。下野氏は「ここに危機感を覚える」と語り、自身が担当する金融業界の例を挙げて説明する。

 「昨年、国内メガバンク3行が相次いで、RPA導入による業務効率化の取り組みを行うと発表した。メガバンクが年限を区切って定量目標を掲げたことは画期的であり、そこは評価すべきだと考える。しかし、その発表を受けても投資家、つまり市場の株価はほとんど反応しなかった。『RPAで人間の業務量を減らします』だけでは、そこからどう収益につなげるのかが見えてこないからだ。本来ならば、自動化によって浮いた人的リソースを別のところで活用して、『こうやって収益を上げます』という収益モデルの話に続いていかなければならない」

 収益化までを視野に入れたRPAの取り組みとして、下野氏はアクセンチュアが支援する三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)のRPA導入プロジェクトを挙げた。SMFGでは「3年以内に300万時間の業務量削減」という目標だけでなく、そこで捻出した余剰時間を「付加価値業務の拡大」に充てていくことを明示している。「業務を自動化して浮いた時間でどんな付加価値を付けるのかまでが問われ、妥当性がなければ(RPA導入の)予算を付けてもらえない。収益目線まで行っている、うまいやり方だ」。

将来的なAIのビジネス適用に向けても企業全体の自動化は必要

 下野氏はもうひとつ、将来的なAIのビジネス適用においても、国内企業における現状のRPA導入では取り組みが不十分であることを指摘する。これから「XAI(Explainable Artificial Intelligence、説明可能なAI)」が実用化されることで、交通や医療、金融、セキュリティなど、慎重な判断と説明責任が求められる場面へのAI適用が大きく進むと見られている。

 「AIのビジネス適用における大きな課題が、AIが『なぜそう判断したのか』を説明できないブラックボックス化だ。これを解決すべく、現在はXAIの研究開発が世界中で進んでおり、おそらく3~4年後にはビジネスに浸透する可能性があると言われている。だがそのときに、XAIが組み込めるように企業全体の自動化がなされていなければ、せっかくのXAIも意味をなさないことになる」

米国DARPA(国防先端研究計画局)の「XAI(説明可能なAI)」研究開発プロジェクト。アクセンチュアもXAIプロジェクトに参加している(画像はDARPA Webサイトより)
従来型AIとXAIの違い。XAIは「なぜそう判断したか」の根拠を人間に理解できる形で示すため、重大な判断にかかわる領域への適用も期待されている

 一連のビジネスプロセスのなかで、人間に代わって自動的に「判断」を行うのがAI/XAIの役割である。そのメリットを享受するためにはまず一連のビジネスプロセス全体がデジタル化され、自動化されていなければならない。「本来、これがRPAの中長期的な目標として位置づけられていたはずなのだが、議論のフォーカスが小さくなってしまっている」と下野氏は指摘する。

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