アーム間の移動は自転車
今回はYアーム側のフロントからエンドまでを見ることができた。先に紹介したフロントの先に長さ3kmの真空ダクトがある。真空ダクトは1ユニットあたり長さ12m、直径80cm。これを250本連結したものだ。
一見、まっすぐに見えるトンネルだが、地球のジオイド面に対してではなく、レーザー光がまっすぐ進めることを基準に掘削されており、真空ダクト内で約7cmの直線部を確保、さらに湧き水も多く、制限の多い環境下で高次元の工事が行なわれた。
KAGRAに関係するトンネルは、中央実験室に行くまでのアクセストンネル「かぐら」と、Yエンドにつながる東茂住側からのアクセストンネルを含めると総延長約7.7km。工事期間は約1年10ヵ月で、ダイナマイト工法を採用し、最速で1ヵ月あたり359.4mの掘削が行なわれた。ダイナマイト工法としては、日本新記録になるそうだ。
アームのフロントからエンドへの移動は、電動自転車で、中央実験室でバッテリーを回収してからアームに入る流れだ。アーム内は200m間隔で照明があるだけでパイプが延々と続く。途中3ヵ所に排水装置がある以外は、似た光景の連続だ。
そのため、長いトンネル内を走行中に時間感覚がなくなると睡魔に襲われた。ただ隣のパイプがかっこよかったので、行きは『ガンバスターマーチ』を流しつつ、ペダルを回していた。帰りは、大きな声で『ようこそジャパリパークへ!』を歌っていた次第だ。なぜか歌いたくなったので。
またアーム内は湿度100%。撮影機材からするとイヤすぎる環境だが、一眼レフカメラとレンズの動作は問題ナシ。ただ、エンド部と中央実験室に入るときは、内部結露が怖かった。
話を戻すと、湧き水の多さを強く体感できる場所でもあり、今回の場合は、普通の状況とのことだったが、それでもアーム中腹部付近は水たまりばかりだった。雨が降った数日後は長靴がないと厳しいこともあるそうだ。
排水は常に行なわれており、Yアーム側では3ヵ所の排水システムを確認できた。3~5月は雪解け水が多く、天井からも雨のように水滴が落ちてくるそうで、KAGRA全体でおおよそ毎時2150トンもの水が出たこともあるそうだ。
エンド部はこじんまり
エンドにあるのは、サファイア鏡を格納したクライオスタットと防振システムがあるだけで、中央実験室と比べるとこじんまりとしていた。アームの隔壁を抜けると急に景色が変化するので、とても映画的でもあった。写真はYアームだが、Xアームも同様の構造になる。