法人向け事業の交通ビッグデータ活用、AWS上のデータレイクと高速分析基盤の構築事例を披露
ナビタイム「Amazon Athenaがあったから実現した新サービス」
2017年11月13日 07時00分更新
処理スピード、コストの両面で「Athenaがなければ実現は難しかった」
ナビタイムでは、Athenaを採用したこのアクセスログ分析基盤を、利用動向の把握、DMP(Data Management Platform)環境の構築、サービス提供に利用している各種AWSリソースのログ調査などに活用している。そして、この基盤を利用して新たに開発された商用サービスが「道路プロファイラー」である。
道路プロファイラーは、ナビタイムと契約した法人ユーザー自身が操作して利用できる、交通ビッグデータ分析のWebアプリケーションだ。「車の走行実績データ(プローブデータ)」と「アプリ利用者の属性情報」を利用し、現状では、地図上の特定メッシュエリアにある各道路について、任意の曜日/週/日付/時間における通過時間や平均速度、交通量を集計表示する「リンク旅行速度」と、指定した場所を通過した車の流入/流出経路や利用者属性を集計表示する「断面交通流」、そして「区間所要時間」という3つの機能を提供している。
説明会で披露されたデモでは、どちらの機能も分析対象のメッシュ/道路を指定してからおよそ十数秒~20秒ほどで結果表示された。このスピードならば、ユーザー自身で操作するWebシステムとしても許容範囲と言えるだろう。
「ビッグデータの弱点はやはり、膨大なデータを加工/分析するのにとても時間がかかること。現状では、何かを分析したいと思ってから結果が得られるまで数週間程度かかってしまう。そこで今回の道路プロファイラーでは、蓄積されたビッグデータを、いかに早く、簡単に分析できるかを考えた。テラバイト単位のビッグデータを、ユーザーが集計ボタンを押すだけで可視化してくれる」(加賀屋氏)
このツールは、たとえば道路渋滞の起きやすい場所を発見、解消したい官公庁や、車で行きやすい場所への出店計画を考える事業者などで活用できる。また断面交通流を使うと、ある地点において「どんな年齢や性別のユーザーが、どこから来ているのか」を知ることができるため、「この地点に出店する場合は、そこに流入する地域や道路に広告を打つ、といった戦略も考えられる」(加賀屋氏)。
今回、簡単に操作できるWebインタフェースを提供し、高速に集計結果を表示することで、ユーザー自身が試行錯誤しながら分析サイクルを回すことができると、加賀屋氏は説明した。現状は道路事業者での採用が多いが、今後はマーケティングや広告戦略にも活用できるよう、よりミクロな分析もできるよう機能の幅を広げていく方針だ。
また加賀屋氏は、ビッグデータ分析の基盤を自社保有型で構築するのは非常にコストがかかり、それをWebサービスとしてユーザーに提供するのは「ビジネス、コストの観点から実現が難しかった」と述べた。だが、Athenaはサーバーレスのサービスであり、利用時のみコストがかかる仕組みのため、EMR利用時と比べるとコストを80%削減できているという。
「今回の道路プロファイラーは、(AthenaやS3といった)AWSのサービスを使わなければ、おそらく実現できていない。自社でサーバーを購入してサービス環境を構築するとなると、サービスコストが見合わないからだ。また、そもそもHadoopで道路プロファイラーの機能を実現しようとすると、結果表示までに1分、2分を超えてしまい、有料サービスとしてはとても提供できないと思われる」(田中氏)