2017年10月26日、NVIDIAはPascal世代の新たな準ハイエンドGPU「GeForce GTX 1070 Ti」を発表、日本国内では11月2日22時より販売が始まった。
型番から分かる通り、GTX 1070より上だが、GTX1080よりは下という位置付けの製品となる。なぜ今このゾーンに製品を投入したかといえば、ライバルAMDのVega 56の性能がGTX 1070をわずかに上回ったので、NVIDIAとしてはこれに対抗する必要があるためだ。
GTX 1080はFounders Editionが普通に流通していたが、GTX 1070TiのFounders EditionはNVIDIAの直販サイト専売で、一般のパーツショップに出回るのはサードパーディー製のオリジナルクーラー搭載モデルとなる。
今回はFounders Editionのほかに、Colorful製のオリジナルクーラー搭載モデルである「iGame GTX1070Ti Vulkan X」を試すチャンスに恵まれた。
気になる価格はパフォーマンスを見てからにするとして、リファレンスデザインであるFounders Editionと強力なクーラーを備えたVulkan Xの差はどの程度か? さらにライバルRadeon RX Vega 56との性能差はどの程度なのか? などをチェックしてみたい。
GTX 1070Tiのクロックは横並び
まずはGTX 1070/1080とGTX 1070Tiのスペックを比較してみよう。まず注目したいのはCUDAコア数がGTX 1070の1920基からGTX 1070Tiでは2432基に激増している点だ。
Pascal世代のGP104コアはCUDAコア128基が集まったTPC(Texture Processor Cluster)を5基(合計640基)束ねるとミニGPUというべきGPC(Graphics Processing Cluster)となるが、そのGPCを4基束ねたものがGTX 1080、3基でGTX 1070となる。
GTX 1070TiはGPCは4基だが、1基のGPCのみTPCが1つ無効化されている。ほぼ(95%くらい)GTX 1080といって差し支えない。
各ビデオカードの比較表 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
GPU | GeForce GTX 1080 | GeForce GTX 1070 Ti | GeForce GTX 1070 | |||
アーキテクチャー | GP104(Pascal) | GP104(Pascal) | GP104(Pascal) | |||
製造プロセス | 16nm FinFET | 16nm FinFET | 16nm FinFET | |||
CUDAコア数 | 2560基 | 2432基 | 1920基 | |||
コアクロック | 1607MHz | 1607MHz | 1506MHz | |||
ブーストクロック | 1733MHz | 1683MHz | 1683MHz | |||
テクスチャーユニット数 | 160基 | 152基 | 120基 | |||
ROP数 | 64基 | 64基 | 64基 | |||
メモリークロック(相当) | 10GHz | 8GHz | 8GHz | |||
メモリタイプ | GDDR5X | GDDR5 | GDDR5 | |||
メモリーバス幅 | 256bit | 256bit | 256bit | |||
メモリー搭載量 | 8GB | 8GB | 8GB | |||
TDP | 180W | 180W | 150W | |||
外部電源 | 8ピン | 8ピン | 8ピン |
だがCUDAコア数以上に重要なのはGTX 1070TiではGPUのクロックがどのメーカーでもベースクロック1607MHz、ブーストクロック1683MHzという共通設定になっている点だ。CUDAコア数がほぼGTX 1080という設定になっているため、オーバークロック設定次第ではGTX 1070TiのOC版がGTX 1080の性能を超えてしまう可能性があるからだ。
CUDAコア数とブーストクロックがほんのわずかに高いこと、VRAMの帯域(10Gbpsまたは11Gbps)が太いことの2点がGTX 1080(Founders Edition相当の製品の場合)の強みだが、GTX 1070Tiとスペックが近すぎるためメーカーによるファクトリーOCを許可するわけにはいかなかったのだろう。
ただオーバークロック不許可といってもファクトリーOCだけの話で、ユーザーが手動でオーバークロックする、あるいはメーカーがワンタッチで“OCモードに切り替える”ような運用は許可されている。
主なGTX 1070Ti搭載カードのスペックを下表にまとめた。これを見ると、定格クロックはどの製品も横並びだ。ASUSとGIGABYTEの製品のみOCモードの値が記載されていたが、いずれも同梱のお手軽OCツールを用いた際のクロックである。
各メーカー製品のクロック | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
メーカー名 | 製品名 | 定格 | OCモード(ツール使用) | |||
ベース クロック |
ブースト クロック |
ベース クロック |
ブースト クロック |
|||
ASUS | ROG-STRIX-GTX1070TI-A8G-GAMING | 1607MHz | 1683MHz | 1683MHz | 1759MHz | |
ASUS | Turbo-GTX1070TI-8G | 1607MHz | 1683MHz | 1645MHz | 1721MHz | |
Colorful | iGame GTX 1070Ti Vulkan X | 1607MHz | 1683MHz | 記載なし | 記載なし | |
GIGABYTE | GeForce GTX 1070 Ti Gaming 8G | 1607MHz | 1683MHz | 1632MHz | 1721MHz | |
MSI | GeForce GTX 1070 Ti Gaming 8G | 1607MHz | 1683MHz | 記載なし | 記載なし | |
MSI | GeForce GTX 1070 Ti Titanium 8G | 1607MHz | 1683MHz | 記載なし | 記載なし | |
ZOTAC | GeForce GTX 1070 Ti AMP Extreme | 1607MHz | 1683MHz | 記載なし | 記載なし | |
ZOTAC | GeForce GTX 1070 Ti AMP Edition | 1607MHz | 1683MHz | 記載なし | 記載なし | |
ZOTAC | GeForce GTX 1070 Ti Mini | 1607MHz | 1683MHz | 記載なし | 記載なし | |
Palit | GeForce GTX 1070Ti JetStream | 1607MHz | 1683MHz | 記載なし | 記載なし | |
Palit | GeForce GTX 1070 Ti Dual | 1607MHz | 1683MHz | 記載なし | 記載なし | |
玄人志向 | GK-GTX170Ti-E8GB/White | 1607MHz | 1683MHz | 記載なし | 記載なし |
「GPU-Z」でGTX 1070TiのFounders Edition(左)とColorful製のもの(右)の情報を拾ってみたところ(「Subvendor」欄の記述に注目)。Colorful製のカードは背面のスイッチをTurboモードにしているが、クロックは定格のままだ

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