その会社にはその会社ならではの働き方がある。みんなの働き方改革・業務改善を追う連載「私たちの働き方カタログ」の第10回は、社会インフラを中心に事業展開する明電舎。自身の経験を活かして70歳まで働ける「エルダー制度」について、人事担当の田山泰道氏、制度を活用している希代博文氏に聞いた。
生涯寿命80歳の時代に「70歳まで働ける」という選択肢
日本の多くの会社は60歳が定年だ。定年後にはハッピーリタイヤが待っているが、平均寿命が男女とも80歳代(女性87.4歳、男性80.98歳)を超えた高齢化時代、収入の道は確保しておきたいという人も多いはず。今までの経験を活かした「生涯現役」は、多くの社会人が求める生き方になっていると言える。そんな中、全社を挙げて働き方改革を推進している明電舎は、65歳以降の継続勤務を推進する「エルダー制度」の運用を2017年1月から開始した。
明電舎も60歳が定年だが、高齢者雇用安定法の施行もあって、希望者は65歳まで働ける「再雇用制度」を導入している。しかし、エンジニアの技術継承という観点から、「65歳以上も引き続き活躍してほしい」という現場のニーズが出てきたという。こうした現場の声から生まれたエルダー制度は、会社からの依頼に応じた社員を70歳まで雇用するというもの。「OBの方が持っているノウハウやスキルを後輩に継承するのが目的で、これにより製品の品質やお客様のサービス向上を図りたいと考えています」と明電舎 人事・総務グループの田山泰道氏は語る。
エルダー制度は65歳まで継続勤務し、さらに70歳まで勤務する「シニアエキスパート」のほか、すでに退職したOBをスポットで再雇用する「シニアアドバイザー」の2つが用意されている。各部門からの申請に基づき、会社が必要とするノウハウ・技術・経験を持つ健康な人という条件で、制度を適用する。「適用する部門が偏っているので、もっと多くの部門に制度をご理解いただくためにも、各地区ごとの説明会なども必要かもしれない」(田山氏)という大企業ならではの悩みも抱えるが、1月からの運用で設計や営業、工場での技術職など対象者は約30人にのぼっている。人事企画部としては、後輩の指導・育成や技術継承を通して若手をバックアップするためにも、65歳以上の人材に引き続き活躍してもらいたいという意図があるという。
濡れ落ち葉族になる前に精一杯働いた方がいい
同社初のシニアエキスパートとなった希代博文氏は、海外プラントのシステム設計を40年に渡って担当してきたベテランだ。「以前はイラクや中東のプラントも手がけてきたのですが、時代の流れとともに受注自体が減っています。当然、後継者の育成が難しくなっているため、プラントを受注するためのシステム設計のスキル移転や現地法人のサポートを担当しています」(希代氏)。
65歳を超えた継続勤務について希代氏は、「もともと国内事業が主力ということもあり、海外において技術者が不足しているというのは、以前から感じていました。だから、海外の現地法人や若い人たちのために、もうちょっとがんばってみようと思ってました」とコメント。健康面でも問題なかったため、渡りに船だったようだ。ご家族の反応についても聞いてみたところ、「子供はすでに独立しているので、今は妻と二人。1日中顔を合わせてるよりは、お互いいい関係が続いている気がします。まあ、昔のCMのように『亭主元気で留守がいい』はあったかもしれませんけどね」と希代氏は笑う。
事業部にもよるが、エルダー制度だからといって勤務形態が変わることはない。希代氏の場合は、海外と国内を問わずハードワークをフルタイムでこなしており、バリバリの現役だ。「現地法人をサポートすることで、今までメンテナンス主体でやっていた国でも受注がとれるようになってきました。受注ができれば、きちんと納入までの流れも経験できるので現地のエンジニアも育つし、会社にも貢献できます。結果が見えるので、やりがいがありますね」(希代氏)ということで、まさに働きがいにつながっている。「先日は、海外で働いている69歳の方から『希代君も70歳までいっしょにやろうよ』と言われました。体が元気なうちは、『濡れ落ち葉族』になる前に精一杯働いた方がいいと思いますね」という希代氏のコメントは、自身の想いとパワーがみなぎっていた。
会社概要
株式会社明電舎は1897年に創業し、今年120周年を迎える電気機器メーカーです。事業は大きく、①発電所、上下水道、電鉄など社会インフラを支える「社会システム事業」②動力計測・搬送システムなどで民間産業を支える「産業システム事業」③納入品のメンテナンスを行う「保守・サービス事業」の3つがあります。連結従業員数は約8500名で国内外へ事業を展開しています。
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