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最新パーツ性能チェック 第220回

VegaのマルチGPU機能「mGPU」でVegaの性能は飛躍的に向上する!?

2017年10月17日 11時30分更新

文● 加藤勝明 編集●ジサトラ ハッチ

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 今年8月に販売が開始されたAMDのハイエンドGPU「Radeon RX Vega」シリーズは、初期のドライバーではマルチGPUがドライバーレベルで非対応だった。最近のゲームはマルチGPU非対応なもの(あるいは後日対応になるもの)も少なくない現状はあるものの、ハイエンドGPUを複数搭載してゲームでガンガン回したいユーザーにとっては残念なスタートとなり、早期対応が求められていた。

Radeon RX Vega 56リファレンスカード(左)と、Radeon RX Vega 64リファレンスカード(右)

 そんななか、9月25日にリリースされた「Radeon Software Crimson ReLive Edition 17.9.2」では、ようやくVegaのマルチGPUに対応した。

 今回は17.9.2リリースのすぐ後、10月4日付けでリリースされた「17.9.3」を使い、Vega 56/64でどの程度パフォーマンスが伸びるのかをチェックしてみたい。

CrossFireからmGPUへ

 VegaをマルチGPUで運用するための条件は以前と同じだ。Radeon RX Vega 56/64(以下、Vega 56/64)は基板上にブリッジコネクターを持たないため、CrossFire対応のマザーボードに2枚のVega 56または64(64と56の混在は不可)を装着し、Radeon Software Crimson ReLive Edition 17.9.3を導入する。「Radeon設定」を開き、「ゲーム」→「グローバルグラフィック」内にある「AMD CrossFire」が“オン”になっていれば有効の証だ。

 ただ、今回AMDは従来のCrossFireではなくマルチGPUを示唆する“mGPU”という呼称を使う。DirectX11までのゲームはAMDによるCrossFireプロファイルがあることがマルチGPUが効く・効かないの分水嶺となったが、DirectX12ではゲーム側がマルチGPU対応の設計になっていれば、プロファイルなしでマルチGPUになる。

 もうCrossFireの名を冠する必要はない……という判断からの名称変更で、技術的に進化したからという訳ではない。DirectX11までのゲームは従来通りCrossFireプロファイルがないとmGPUが活かされないので注意したい。

 同じVega搭載ボードを2枚、マザーボードのPCI Express x16スロットに載せればハードウェア的な準備は終わり。マザーもCrossFireに対応している必要があるが、ローエンドマザーで無い限り、CrossFireには大抵対応しているのでSLIよりは構築しやすい。

「Radeon設定」の「グローバルグラフィック」内で「AMD CrossFire」をオンにすればmGPUが有効になる。名称はmGPUになったのになぜCrossFireという名称が残っているのか? というツッコミは止めておこう

「GPU-Z」で情報を拾ってみると、下の方にある「AMD CrossFire」が“Enabled”になっていれば有効化されている証。ただゲームでこれが活きるかは、ゲーム側の対応が必須になる

 そしてもうひとつ重要な変更点は、VegaのmGPUは2-Wayまでという制限がついた。Vegaの3-Wayや4-Wayを夢見ていたエンスージアストにとっては残念な仕様変更だ。しかし、3-Wayや4-Wayは処理効率が極端に落ちる、あるいはトラブルの元になるためライバルNVIDIAでも原則2-Wayまでになっている状況を考えれば、時流に乗ったと言い換えてよいだろう。

 今回の検証環境は、Vega 56と64を2枚ずつ(いずれもリファレンスデザイン)準備し、シングル運用時に比べmGPU運用時にどの程度のパフォーマンスアップになったかを調べた。さらに比較対象として、普通に手に入るシングルGPUでは現時点で最速といえるGeForce GTX 1080TiのFounders Editionを準備した。Vega 64シングルではGTX 1080Tiの性能に勝るものもあるので、2枚揃えればどうなるかにも注目したい。

【検証環境】
CPUIntel Core i7-7700K(4コア/8スレッド、4~4.5GHz)
マザーボードASRock Fatal1ty Z270 Gaming K6(Intel Z270)
メモリーCorsair CMU16GX4M2A2666C16R(DDR4-2666 8GB×2)
グラフィックスRadeon RX Vega64リファレンスカード、Radeon RX Vega56リファレンスカード、GeForce GTX 1080Ti Founders Edition
ストレージIntel SSDPEKKW512G7X1(NVMe M.2 SSD、512GB)、Crucial CT1050MX300SSD4/JP(M.2 SATA SSD、1.05GB、データ用)
電源ユニットSilverstone SF850F-PT(850W、80PLUS Platinum)
OSWindows 10 Pro 64bit版(Creators Uptade)
電力計ラトックシステム REX-BTWATTCH1

2枚で見事GTX 1080Tiを超えた!

 それでは「3DMark」のスコアーからVegaのmGPUパフォーマンスを見ていこう。テストは“Fire Strike”“Fire Strike Ultra”“Time Spy”の3種類を用いる。

「3DMark」のスコアー

 実施した3種類のテストのうち、負荷の一番低いFire Strikeでは、mGPUにするとシングル時の4~5割増し程度にとどまるが、負荷の高い残り2つのテストでは6~8割増しと高い効果が確認できた。そしてVega 56と64では56の方がスコアーが64より伸びている。VegaはmGPU対応前にリリースされたドライバー(17.9.1)あたりで大きなパフォーマンス改善が入り、Vega 56の性能が著しく向上する一方、64は微増程度にとどまっていたが、mGPUにおいてもVega 56は性能の伸び率が高い。Vega 64は56よりもSP数が多いが、スペックやクロックを欲張りすぎて活かしきれない印象が強いが、mGPUでも同じ図式のようだ。

 性能が上がったぶん消費電力が増えてしまうのは十分予想できるが、問題はVegaは近年のGPUにしては非常に電力を食う設計だということだ。そこでシステム起動10分後を“アイドル時”、Time Spyデモ実行中のピーク値を“高負荷時”とした時の消費電力を測定してみた。さらにTime Spyのスコアーを高負荷時の消費電力で割り、非常にざっくりとした“1WあたりのTime Spyのスコアー”も比較する。

システム全体の消費電力

1WあたりのTime Spyのスコアー

 シングル時で300~420W食うVega 56/64を2枚運用するのだから、なんとなく予想はついていたが、Vega 64(リファレンスデザインであることに注意)だと725W、Vega 56でも568Wと消費電力はかなり強烈。ハイエンドGPUだから当然とは言えなくもないが、Vega 64の消費電力はかなり高い。

 1Wあたりのスコアーを比較すると、Vega 64とVega 56の力関係がより明確になる。Vega 64はmGPU時でもワットパフォーマンスが低いが、Vega 56のmGPU時のワットパフォーマンスはシングルよりは数値が下がったものの、Vega 64よりも高い数値を示している。ここでもVega 56は64より優れた製品であることが示されている。

 それでは実ゲームベースのベンチマークに入ろう。まずは国内で人気の高い鉄板の「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター」のスコアーと、そのテスト中の平均fpsをそれぞれ比較する。画質は“最高品質”とし、解像度はフルHD/WQHD/4Kの3段階とした。

「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター」公式ベンチのスコアー

「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター」公式ベンチの平均fps

 ファイナルファンタジーXIVは、NVIDIAの「GeForce Experience」に最適化されている。そのため、フルHDの結果だけ見るとmGPU環境でもGTX 1080Tiシングルにすら負けてしまうが、解像度が上がり描画負荷が上がると状況は一転。WQHDではGTX 1080Tiとほぼ同等、そして4Kでは1000ポイント以上の差をつけてVega 56/64のmGPU環境が勝つ。スコアー差ではピンと来ないが、平均fpsベースで見ると4K環境におけるmGPUの有用性がよくわかる。

 続いては「Overwatch」で試してみよう。マップ“King's Row”におけるBotマッチをプレーした際のフレームレートを「Fraps」で測定する。画質は“エピック”、レンダー・スケールは100%固定とした。

「Overwatch」1920×1080ドット時のフレームレート

「Overwatch」2560×1440ドット時のフレームレート

「OverWatch」3840×2160ドット時のフレームレート

 描画負荷が低い状況ではGPUを2基連携させる事自体がボトルネックとなり、描画負荷がある程度高まると逆に連携させるメリットが出てくる、というのはマルチGPU共通の傾向ではあるが、mGPUとOverwatchの組み合わせもまさにこれと合致する。

 フルHDではmGPUにしてもGTX 1080Tiに及ばないが、WQHDでは同等に近くなり、4KではVega mGPUが優位に立つ。4K時の最低fpsが伸びていないのは少々残念なところだが、平均fpsは20fps以上伸びているという点を考えると、VegaのmGPUの価値があると言えるだろう。

 最後にDirectX12専用ゲームである「Gears of War 4」で比較する。画質は“最高”とし、ゲーム内のベンチマーク機能を利用して計測した。

「Gears of War 4」1920×1080ドット時のフレームレート

「Gears of War 4」2560×1440ドット時のフレームレート

「Gears of War 4」3840×2160ドット時のフレームレート

 前述の通り、DirectX12のゲームではプログラム的にマルチGPUに対応すれば、GPUメーカーがマルチGPU用プロファイルを準備しなくてもマルチGPUとして動作する。CrossFireからmGPUへのブランド名変更は今後DirectX12ベースのゲームが増える状況を見据えているものだ。

 Gears of War 4でもmGPUの効果はしっかりと確認できた。Vega 56の方が64よりも伸び率が良いこともこれまでの検証傾向と同じ。しかしこのゲームでは解像度を上げてもGTX 1080Tiを超えることはできない。超えることができたのは解像度フルHD時のみに限られている。ゲームの設計が異なれば、mGPUでも得られるパフォーマンスが違うということがよく分かる結果となった。

消費電力やコストに難はあるが、VegaのmGPU環境にも一定の効果は期待できる

 Vega 56/64をmGPUにすれば確かにパフォーマンスはアップした。FF14やOverwatchでは高解像度になるほどシングル時よりも高fpsが期待できる。Radeonで最高のゲーム環境を作り上げたいユーザーにとってはこれ以上のものはない。

 しかし、Vegaの設計に由来する消費電力の著しい上昇と、VegaがHBM2メモリーを搭載したため価格が高いことが大きなネックだ。Gears of War 4のようなゲームでは、無理にmGPUを選ぶよりも、GTX 1080Tiを1枚にした方が消費電力やコスト面で有利なのは否めない。しかしながら、ドライバーのアップデートによって、現在人気急上昇中のPUBGこと「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」などのゲームタイトルでの最適化も進んでいる。また、マイクロソフトの最新レーシングゲーム「Forza Motorsport 7」ではGTX 1080Tiを超えるパフォーマンスも出ているという。今後、更なるバージョンアップにて、最適化タイトルが増えていくと思われるので、大いに期待したい。

(提供:AMD)

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