さくらの熱量チャレンジ 第19回
共立電子産業×HARMONIQUA×さくらのものづくり対談
大阪日本橋で聞いたIoTに対する本音とsakura.ioへの期待
2017年09月29日 09時00分更新
ソフトウェア側の人たちにビジネスを搾取される危機感?
大谷:ハードウェア系の人たちがIoTというモノにまだまだ抵抗感を持っているということなんでしょうか?
長者原:エンジニアも攻めの人と守りの人がおられますが、保守的というか守りの人は多いかもしれないですね。特に大きな組織で分業体制の中に置かれているとますます専門化が進み、自分の専門外、特にソフト側との共通言語が持てなくなる。そこへセミナーや勉強会、交流の場が提供されても、共創が強調されていると逆に尻込みしたり警戒したり、といった話は実際に聞きます。
大谷:なるほど。なんらか不信感があるんですね。
長者原:あとこれは1つの事例として聞いてほしいのですが、大阪府下にある中小の製造業が中心の交流会でsakura.ioを使ったラジコンを実演して見せました。そこの反応がよかったので、数ヶ月後にIoTに絞った内容で勉強会を開いたんです。
そうしたら質疑応答で知り合いのベテランエンジニアが「IoTはあまり好きじゃないんです。センサーで吸い上げたデータを上流で加工して儲ける人がいても、私たちのような現場の改善やラインの設計をする開発会社はギリギリの価格をさらに絞られる。これってなんかおかしくないですか?」と言ったんです。それに賛成する経営者もいて、こちらは「IoTで収集したデータをオープンにする必要があるのか? 閉域な環境で自分たちで使えばいいじゃないか」という話をするんです。
大谷:それってソフトウェアやクラウド側の人たちにビジネスを搾取されるのではないかという危機感なんでしょうか?
長者原:そうですね。ちょうど勉強会の数日前にアニメ業界の闇みたいなテレビがあって、アニメ業界の隆盛の一方で、その恩恵を受けられない現場のアニメーターの苦労を伝えていて、なんだか重なってしまったんです。IoTがこういうイメージをもたれたらよくないなあと。
松山:うーん。きついことを言わせてもらうと、そんな模様眺めをしていたら淘汰されるだけだと思います。ソフトウェアの人たちがどんどんやってきて、ものづくりの価値はなくなります。ハードウェアの人たちが価値を出せないのであれば、そうなるのは当たり前。そういう人たちも、「作らされる側」になるのではなく、「サービス作る側」になろうよと訴えかけたいですけどね。
大谷:そういう抵抗感を持っている方は、「共創」を「競争」ととらえているのかもしれません。ハードもわかり、ソフトウェアも書ける江草さんとしては、今の話どう思います?
江草:今までの製造業って、コントロールできる範囲が生産して納品するところまでくらいでした。使ってもらうところまでは範囲外だったんです。
でも、IoTになると、そこまでコントロールの範囲が拡がります。お客様が使っている途中も、どのように使ってもらうか考えることもできます。でも、IoTに抵抗感を持っている人は、使ってもらうところで違う人たちにコントロール権を握られると思っているのではないかと思います。「今まで自分が全部コントロールしていたのに、自分たちの違うところでなにかが行なわれてしまうのではないか」という漠然とした不安があるのではないでしょうか?
大谷:それってクラウドの議論と同じですよね。クラウドに抵抗を示す人って、外部に任せることによって、自分たちがコントロールできなくなるのではないかという不安があると思うんです。
長者原:単純にデータを持って行かれるというだけではなく、収益が上がっても、それがきちんと配分されないのでないかという不安だと思います。
松山:僕もものづくりの立場として見ると、作った人の意図というものはプロダクトの最後まで活きることになります。設計でも、デザインでも、いろいろなところから製作者の意図を汲み取られるわけなので、そこに自信がないのではないかと思いますね。
江草:大谷さんが以前、IoTのハンズオンをやっている人たちを見ていて、20年前にDOS/V機を組み立てている人を思い出したという話をしてましたが、ソフトウェアやサービスが進化してきたのに、ハードウェアはPCとスマートフォンという汎用端末だけが進化してきて、それ以外のモノって当時のまま取り残されているような気がします。デザインがきれいになったり、省電力になったりはしているんでしょうけど、基本的な価値は当時のままで置いていかれている。
でも、IoTの時代になると、そういった価値を変えていかなければならない。モノの価値自体を変えなければならないのに、作る側の意識は当時のままなのかもしれません。われわれがsakura.ioで提供しているのは、IoTのうちで通信という最低限必要な部分。こうしたものを使ってサービスの部分までチャレンジしていかないと、松山さんが話していたように淘汰されてしまうと思います。
「今やらないでいつやるの」とものづくりの人たちをたきつけたい
大谷:ものづくりの人たちがどうやってIoTの世界に引き込むか、ソフトウェアやクラウドの人たちと共創できるようにするか? いろいろご意見いただきたいと思います。
松山:僕からいいですか? 今までモノ側の設計があり、それとは別にネット側のサービス設計があったと思うんですが、IoTって異種格闘技なので、設計のやり方もいったんばらしたほうがいいと思うんですよ。そのための人材も必要になってくるだろうし、お互いが知恵を出しあう場所も必要になると考えています。
長者原:われわれはそこらへんをつねに悩んでいるところです。どういった情報発信が響くのか、試行錯誤しながらやっています。とにかく思いついたアイデアをすぐに実践してみたいですね。ハンズオンなり、イベントなり、リアル店舗でできることはありますから。その意味では、先ほどはtsumuguさんやMIKAWAYA21さんの話出しましたが、それに続くような事例やコンテンツがほしいですね。
松山:実際、sakura.ioがあればもっといいサービスになるのになあということけっこうあります。
大谷:そういうことありますね。先日、スーパーの前の自転車の施錠システムが壊れたらしく、自転車が取り出せないといってお客さんがめちゃ怒っているところに出くわしました(笑)。結局、人を呼ばないと直せないんですよね。ああいったところにsakura.ioっていいんじゃないかなと思いました。
そういったタネの1つとして昨日、さくらさんの大阪オフィスでやっていたKids Ventureのようなプログラミング教育という取り組みもありますよね。ものづくりへの関心を高めることが1つの鍵になりますよね。
長者原:今の社会人はデジタルネイティブだと思うので、これからの子供たちはIoTネイティブになっていくんでしょうかね。興味を持てるようなロボットだったり、ゲームだったりを通じて、IoTを理解してもらうのがよいのではないと思います。
大谷:1970年代からずっと日本橋でものづくりの店をやってきた共立電子さんのようなところが、IoTの教化をしてくれるってすごく重要だなと思います。
長者原:はい。IoTを一過性のブームと考えている人も多いですけど、「今やらないでいつやるの」という気持ちで推進していきたいと思っています。
江草:情報発信の点では、私もものづくり側にいる共立さんやHARMONIQUAさんには期待しています。あと、さくら自体はクラウド事業者としては認知度もあるので、サービス事業者側からsakura.ioと組み合わせた製品の開発や回路設計を依頼された際に、うまくものづくりの会社やコミュニティに渡せるような仕組みを作りたいと思います。
(提供:さくらインターネット)
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