さくらの熱量チャレンジ 第19回
共立電子産業×HARMONIQUA×さくらのものづくり対談
大阪日本橋で聞いたIoTに対する本音とsakura.ioへの期待
2017年09月29日 09時00分更新
IoTのサービスにおいて、クラウドと対局に位置するものづくりの立場から、果たしてIoTはどのように見えているのか? また、クラウド事業者であるさくらインターネットが作った「sakura.io」をどのようにとらえているのだろうか? 大阪の日本橋で電子部品専門店「シリコンハウス」を手がける共立電子産業の長者原亨氏、ものづくりをトータルでサポートするHARMONIQUAの松山亮佑氏、そしてsakura.ioの開発を手がけるさくらインターネットの江草陽太氏と語り合った。(以下、敬称略 インタビュアー アスキー編集部 大谷イビサ)
sakura.ioを手がける江草さんを育てたシリコンハウス
大谷:まずは共立電子産業の長者原さん、事業内容について簡単に説明おねがいします。
長者原:1970年に創業して以来、かれこれ40年以上も大阪の電子部品専門ショップ「シリコンハウス」をやっています。オーディオやPCのパーツと異なり、まったくの素材としての電子部品は一般の方にはやや縁遠いイメージがありますので、つねにそのハードルの高さを下げていくかを考えながら、ここまでやってきました。
ほとんどの方は「シリコンハウス」といえば、日本橋の電子部品屋さんという認知になると思います。でも、店に来られるお客様の中で、電子部品を面白いと感じてくれた人、自ら勉強してこういうモノを作りたいと思ってくれた人、あるいは事例を集めにくるような人は、そのうち自分で電子部品を使って事業を興すようになります。こういう方々のために、回路設計をして、基板を作って、部品実装したPoCにあたるものや小ロット生産品を納める法人向けの部隊もおります。
大谷:なるほど。法人のものづくりのサポートも事業として展開しているわけですね。そんな長者原さんから見て、この10年のものづくりの潮流について教えてください。
長者原:個人的に感じるのは中村教授の青色LEDの発明とノーベル賞の受賞以降、LEDというキーワードが一気に認知度を高めた印象ですね。電子回路というと小難しいイメージがありますが、LEDを使ってなにかを光らせるという用途がはまり、文系の方をはじめ、気軽にチャレンジする人が急速に増加しました。
大谷:いわゆる「Lチカ」ですね。あと、ネット販売が増え、比較的に手軽に電子部品を手にできるようになったのも大きいと思います。御社のようにリアル店舗を展開している意義みたいな点もお聞かせください。
長者原:正直、「これから先、リアル店舗どうなんだろう」という話は、社内でもつねに議論になります。小学生の頃から通ってくれていた江草さんのようなコアなお客様には「リアル店舗辞めたらダメでしょ」と暖かい声をいただいているのですが、現在の購買行動や運営コストを考えると、この先どうなんだろうという不安が頭をよぎることもあります。
江草:私は小学生だった当時は、やっぱりなんにもわからなかったので、店員さんに本当に丁寧に教えてもらいました。その支援が今の自分の仕事につながっているので、ある意味自分を育ててくれたお店だと思っています。
筋肉質なものづくりを支援するHARMONIQUA創業の経緯
大谷:続いてHAMONIQUA CEOの松山さんにお話しを聞かせてください。
松山:僕ももともと実家が工場で、成形業の親父も工作屋だったので、「シリコンハウス」にはよく来てました。
大谷:なるほど。松山さんも共立チルドレンなんですね。
松山:まあ、本当に小さかった頃は電子部品にあまり興味なかったので、近くのソフマップのゲームコーナーに放り込まれていたんですが(笑)。その後、大学で電気工学を学んで、日本橋にも来ていたのですが、10年前くらいはどんどん店がなくなっていて、「ものづくりダメなのかなあ」「うちもダメなのかなあ」と思った時期もありました。
でも、その後卒業した後に実家で働いていて、なんだか「ものづくりの尊さ」みたいなのを実感したんです。「現場の人間が支えているからものづくりができるんだ」という使命感と「もう少しうまくできないのかな」という課題感が生まれてきました。ただ、いいものを作るのではなく、作って、売れるまで捨てられるまでのサポートをトータルでやりたくて、3~4年の実家修行の後、独立してHARMONIQUAを起こしました。
大谷:HARMONIQUAさんがどういうビジネスを展開しているのか教えてください。
松山:新たにものづくりしたい方々に対して、納期や価格、仕様などユーザーに寄り添ったものづくりをトータルで最適化するプロダクトマネジメントがメインです。PoCや量産化の支援、商品戦略、プロダクトのラウンチや運用・保守まで。極論、値付けのところまでお客様といっしょにやります。製品が世の中に拡がって、社会を変えていくところまでを支援しています。
大谷:松山さんから見て、製造業ではどのような課題があるのでしょうか?
松山:今まで中小の製造業は勢いでなんとかしていたことがいっぱいあります。「納期は明日だけど、とりあえず親戚一同集めて、仕上げよう」みたいなところもいっぱいありますが、これではあらゆる面で立ちゆかないですよね。
でも、ムダなところは削り、お金をかけるところにかけていくことで、筋肉質なものづくりができます。僕の周りは家業を継いでいる若い社長も多いので、新しい技術に貪欲です。だから、「3Dプリンタってどれかったらええんやろ」とか「人材も集まりにくいので、どういう職場にしていったらいいのか」とかいろいろ相談を受けています。
大谷:なるほど。「筋肉質なものづくり」って印象的な言葉ですね。
松山:昔は中国にコストで勝とうとして、つぶれていった会社がいっぱいありました。でも、コストでかなわないのはしようがない。それをきちんと理解した会社は、品質や納期など中国でのコントロールが大変なところを自分たちでいかにやっていくか、どんどん研ぎ澄ましている感じがしますね。
大谷:現在は東京で活動しているんですか?
松山:オフィスは東京に移しました。とはいえ、大阪にも知り合いも多いので、小ロットの製品とかは、実家に作ってもらったりしています(笑)。
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