ここしばらく、株価低迷、事業売却といった報道が続いていたHTC。グーグルとの間で、Pixelの開発に携わっているスタッフの移籍、IPのライセンス契約など、11億ドルでの実質的な一部売却という形で正式に発表された。自社スマートフォンやVIVEは今後も継続されるということだが、ひとつの契機になることは間違いないだろう。
というわけで、HTCが過去にリリースしてきたスマートフォンを振り返りながら、同社の歴史を簡単に整理しよう。
初期はPDAのODM生産で成長
Windowsスマホは国内でも多数リリースされた
HTC(宏達国際電子、当時の英文の社名はHigh Tech Computer)のスタートは1997年。台湾の起業家二世でVIAの創業者でもあるCher Wang氏、DECの元エンジニアのピーター・チョウ氏らによって作られた。コンパック「iPAQ」、Palm「Treo」などの開発・生産にODMとして関わり、すでにその時点で知る人ぞ知る存在になっていた。
その後、主にWindows Mobileを搭載した自社ブランドのスマートフォンを展開。日本国内でも「EMONSTER」「HTC Touch Diamond」などの端末を、ドコモ/au/ソフトバンク/イー・モバイルと主要キャリアすべてから提供していた。この時点で日本のモバイルユーザーにも広く認知されたはずだ。
初号機の開発を担当したAndroidとともに急成長
国内ではauとの提携も
大きく飛躍したのは、やはりグーグル/Androidとの関係。Android初号機「HTC Dream」を共同で開発。それに続く「HTC Magic」は国内初のAndroidスマホであるドコモ「HT-03A」として発売。また、「HTC Desire」がソフトバンクからリリースされた。
国内で盛り上がりを見せたのは、2012年のauとの提携。日本市場向けにおサイフケータイやワンセグなどを搭載した「HTC J」をリリースし、乃木坂46をCMキャラクターにしたプロモーションも大々的に行なった。
少し話を戻すと、Androidとともに急拡大したHTCは2011年には携帯電話時代の王者であるNokiaを時価総額で上回ったことも話題になった。また、今はアップル傘下のBeatsに出資するなど拡大を進めている。
一方でこの頃から、スマートフォンでの競争が激化。サムスンがトップを固める中で、シェアを低下させた。また、代理戦争と化したようにも見えたアップルとの訴訟は、最終的に2012年にクロスライセンスで合意したが、アップルに有利な内容だったとも伝えられる。
2013年以降は、相次ぐ幹部流出や売上高の低迷が伝えられるようになったが、一方でリリースされる製品はデザインや機能を含めて高い評価を受けていたのもまた事実。
グーグルとの関係でも、2010年の「Nexus One」のあと、4年の間があってタブレットの「Nexus 9」が発売。2016年にはグーグルが本格的にハードウェアの開発に取り組んだ「Pixel」の製造を担当した。10月4日に発表されるというPixelの後継機にも注目である。
国内では昨年はauから「HTC 10」、今年もauとソフトバンクから「HTC U11」がリリースされている。SIMフリースマホは2015年に2機種が提供されただけで途切れた形になっているが、HTC端末のファンは根強く存在するだけに、今後の展開にも期待したい。