産業用IoT基盤のPredixを医療分野にも展開、「Applied Intelligence」サービス
GEヘルスケア、データ分析で病院経営と医療現場の課題解決支援
2017年08月14日 07時00分更新
医療機器メーカーのGEヘルスケア・ジャパンは8月11日、病院の経営や部門運営を支援する新サービス「Applied Intelligence 医療データ分析サービス」の提供を開始した。GEがグローバルで展開するクラウド型産業用IoTプラットフォーム「Predix」をベースに開発されており、人やモノからのデータ収集と分析、可視化とコンサルティングを通じて、さまざまな医療業務の最適化や効率化につなげる。
同日、IoT/デジタル化を推進する同社日野工場(本社)で開催された発表会では、同サービスの根幹をなす「Brilliant Hospital構想」、およびその背景にある「Brilliant Factory構想」も含めて説明が行われた。
データの統合と分析、可視化を通じて病院経営や医療現場の課題を解決
GEヘルスケアでは、日本のヘルスケア市場向けにBrilliant Hospitalビジョンを展開している。これは、病院内の人やモノをネットワークで接続し、そこから収集されるビッグデータを高度分析、可視化することで、医療現場の業務改善や病院経営の課題解決に役立つ知見を提供する、新たなサービス体系のコンセプトだ。
今回のApplied Intelligenceは、このBrilliant Hospitalビジョンの一翼を担うサービスとして、特に病院経営や現場業務の最適化を目的に、データの高度分析と可視化を実現するものとなる。
具体的には、サードパーティ製品を含むさまざまな医療機器や医療システムからデータを収集し、Predixプラットフォーム上で迅速かつ多方面のクロス分析を実現するとともに、それを多彩なダッシュボードで可視化、レポート化するシステムと、その導入や構築、データ分析結果に基づく改善提案(コンサルティング)など、一貫したソリューションを提供するもの。
同社 ヘルスケア・デジタル事業本部 本部長の松葉香子氏は、Applied Intelligenceの導入ステップは、課題の整理と改善目標の設定、必要なデータの検証などを行う「導入前アセスメント」、さまざまなデータソースと分析プラットフォーム(Predix)の連携やダッシュボード構築を行う「プラットフォーム構築とKPI可視化」、得られた結果に基づいて業務最適化に向けたコンサルティングを継続的に行う「改善提案」の3ステップで構成されると説明した。
同サービスの料金に関しては、アセスメントやコンサルティング、データプラットフォーム構築に関しては都度見積もり、また運用に関しては「年間サブスクリプションのような形になる」(松葉氏)とした。また、アセスメントからデータプラットフォームの構築までのステップで「おおよそ半年程度」の期間を見込むという。
松葉氏は、Applied Intelligenceサービスを通じて、各都道府県で進む「地域医療構想」への対応などの経営課題、さまざまなデータはあるもののその統合や分析、可視化が進まず業務改善につなげられていない現場課題の解消を支援していきたいと述べた。「顧客がデータをとりまとめて分析し、その事実をアクションにつなげられるよう可視化する、その部分を(Applied Intelligenceは)お手伝いできると考えている」(松葉氏)。
たとえば、同サービスをパイロット導入した生長会 ベルランド総合病院(大阪府堺市)では、CT検査における患者の待ち時間短縮、検査の入外比率(入院検査と外来検査の比率)の可視化による収益改善といった取り組みを進めているという。松葉氏は「現状のデータ、事実を可視化することで議論が起こり、職員が納得感を持って改善に取り組めるようになる」と、その効果を語った。
医療品質を向上させながら効率化を推進する「Brilliant Hospital」ビジョン
GEヘルスケア・ジャパン 代表取締役社長 兼 CEOの多田荘一郎氏は、日本が超高齢化社会を迎えつつあるなかで、医療分野では「医療の質を維持しつつコストを削減すること」「医療従事者の負担を軽減すること」といった課題があることを説明した。その課題解決のために、同社では従来からの製品/サービス提供だけでなく、人/モノ/情報をつなぎ、そこから得られた示唆をアクションにつなげる提案を強めているという。
医療分野においてはすでにさまざまなデータが収集されているが、その活用は十分でないと、多田氏は指摘する。現場でのデータ活用期待が低いこと、データ連携を実現する基盤がないこと、データ集計や分析作業にかかる負荷が高く、手が回らないことなどがその背景にあるという。「GEヘルスケアでは、デジタルとIT連携のソリューションをもって、こうした課題を解決していきたい」(多田氏)。
一方で、病院経営者に対する同社のヒアリングにおいては、地域連携医との情報連携や患者への情報提供などの「データ連携/共有」、病院内リソースの稼働率把握や診療科ニーズの把握などによる「データに基づくマネジメント」、そして医療従事者の業務負担軽減につながる「業務の統合化や自動化、AI活用」への期待があることがわかっている。
「最終的には、GEは(すでに提供している)画像診断技術/サービスとICT連携によって、さまざまな課題を解決することで、日本の医療の質を高めながら効率化を進める――そういう好循環の実現をお手伝いしていきたい」(多田氏)