半導体ファウンダリーのロードマップ解説もTSMC、Globalfoundriesと来たので次はサムスンを紹介しよう。
20nmプロセスに見切りをつけ
14nm FinFETに切り換え
サムスンは2010年から28nmプロセスの提供を開始している。この28nm世代は28LPH(Low Power High Performance)、28HPP(Low Power Plus)、28LPS(Low Power p-SiON)の3種類に加えて、STMicroelectronicsからライセンスを受けた28nm FD-SOIの4種類のプロセスを用意しており、現在も量産している。
これに続きサムスンは20nmプロセスに移行する。2014年、20nm LPEプロセスを立ち上げるとともに、これを利用したExynos 5 Octa(Exynos 5430)と、Exynos 7 Octa(Exynos 5433)の2製品を相次いで量産するものの、ここで打ち止めになってしまった。このサムスンの20nm世代もTSMCと同じく、あまり素性はよろしくなかったらしい。
サムスンはこの後、より高性能かつ高密度な20LPMというプロセスを予定していたが、これは結局キャンセルされてしまった。実際このあと14LPEが立ち上がったタイミングで、20nmプロセスそのものが同社のページから消えてしまったのは、20LPEのスペックが28LPPとほとんど変わらず、受注そのものもほとんどなかったからであろう。
その分サムスンは14nm FinFETの開発を急ぎ、2015年2月には14LPEの量産を、2016年1月には14LPPの量産をそれぞれ開始している。この14LPE/14LPPはGlobalfoundriesにもライセンスされ、という話は前回説明したので割愛する。
実はサムスン、14LPE/14LPPに続き2016年5月には第3世代の14nmプロセスである14LPCを発表している。14LPE/14LPPと比べて低消費電力化と製造コストの低減が図られており、ちょうどTSMCの16FF/16FF+に対する16FFCのようなポジションである。この14LPC+は2016年末に量産開始されている。
しかもこれに留まらず、2016年11月には第4世代の14nmプロセスである14LPUを発表している。サムスンの説明によれば、14LPUは14LPCと同等の消費電力とデザインルールを利用しながら、より高い性能が実現できるとする。
もっともこの14LPUは、2017年第2四半期中にPDK(Process design kit)を提供とあるので、まだ各社ともデザインインしたばかりであり、2017年内に量産までこぎつけるのはけっこう難しそうだ。早くて2018年に投入される製品向け、というあたりだろうか。
ちなみにこの14LPC/14LPUがGlobalfoundriesの14LPP+/14LPP++と同じものかどうかは不明である。ただしGlobalfoundriesの日本での記者説明会の際には、性能強化を2回予定しているという話だったので、14LPUはともかく14LPCはこの説明に当てはまらない。そもそも両社がプロセスを共通化したのは14LPE/14LPPのみなので、その先は「似ているけど違うもの」の公算が高そうだ。
10nmプロセスを世界初の量産化
14LPC/14LPUに続きサムスンは今年3月に10nmプロセスの量産開始を公表した。これは掛け値なしに世界最初の量産プロセスであり、インテルはもとよりTSMCにも先んじての量産開始である。生産開始は2016年10月であり、今年3月には70000枚のウェハーが出荷されたとしている。
この10LPEに続き、4月には後継プロセスである10LPPのQualification(品質確認)が完了したことも発表している。10LPPは10LPEに比べて10%高い性能、ないしは15%低い消費電力を実現できるとしている。
Qualificationが4月ということは、5月から量産を開始したとすれば10月か11月には最初のウェハーが出荷され、本格量産体制に入った状態になると思われる。また、先の14ULPの際に、あわせて10LPUの発表もなされた。10nm世代では低コスト版のLPCをパスして、低コスト兼性能改善のLPUに直接進むことになるようだ。
サムスンによれば、10LPUは先端プロセス中ではもっともコストパフォーマンスに優れており、10LPPが高性能向けなのに対し、その他の用途には10LPUが最適としている。ちょうどTSMCの12FFCあたりと同じ位置づけと考えればいいだろう。
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