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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第728回

2024年に提供開始となるSF3プロセスの詳細 サムスン 半導体ロードマップ

2023年07月17日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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 前回に引き続き、2023 Symposium on VLSI Technology and Circuitの内容をお伝えする。

 Samsungはロジック回路周りだけでもSF3プロセスの詳細(*1)とSF4Xプロセスの詳細(*2)や、BS-PDNの実装(*3)、そのBS-PDNに利用されるViaに関する分析(*4)と4件もの発表を行なっている。今回はそのうち、冒頭のSF3プロセスの詳細について説明しよう。

(*1) T1-2:World's First GAA 3nm Foundry Platform Technology (SF3) with Novel Multi-Bridge-Channel-FET (MBCFET) Process
(*2) T16-3:Highly Reliable/Manufacturable 4nm FinFET Platform Technology (SF4X) for HPC Application with Dual-CPP/HP-HD Standard Cells
(*3) T4-1:Breakthrough Design Technology Co-Optimization Using BSPDN and Standard Cell Variants for Maximizing Block Level PPA
(*4) TFS2-5:Structural Reliability and Performance Analysis of Backside PDN

Samsungのロードマップ推移

 そもそもSamsungのプロセスロードマップを取り上げるのがひさびさ(前回は2017年の連載418回だった)ので、アップデートも兼ねてまずロードマップ全般について。

 2017年の時には14nmに加え、10nm(10LPE/10LPP)を量産開始し、その微細化版である8LPPを追加。一方最初のEUVを利用した7nmの7LPPの後に、6LPPを追加するというあたりまでを説明した。

 そのSamsungの2018年におけるロードマップが下の画像だ。2017年には、4nm世代でGAAを導入するという話だったのが、一世代ずれて3nm世代に移行。4nm世代は5nm世代の改良版のFinFETプロセスのままという形になった。

2018年のロードマップ。これは前年のロードマップからの変更だけを示しているのでわかりづらい

 この当時の説明は「4nmはGAA(Gate All Around)を使わなくても実現できる目途が立った」とのことだったが、要するにまだこの当時はGAAの技術的難易度が高かったので1年先送りした、という形だろう。2018年10月に開催されたArm TechConの際に開示されたロードマップは下の画像のようになっていた。

Arm TechConの際に開示されたロードマップ。こちらの方がわかりやすい

 これが2019年になるとどう変わったか? というのが下の画像である。7LPPからすぐに5LPEに移るのではなく、6LPPが追加になった。また4LPPがラインナップから消えている。逆に3nmに関しては特に変更はない。

4LPPは用途的にも提供時期的にも3GAAと被るから、というあたりで一旦消えたようだ

 2020年はCovid-19の影響などもあってSFF(Samsung Foundry Forum)が開催されず、そのため特にロードマップの開示もないが、この2020年は大きな変更はなく、4LPEをやるかどうか怪しいといった話が漏れ伝わってきた程度だ。

 このロードマップが更新されたのは2021年である。SFFがオンラインで開催され、ここでいくつか更新があった。最大のものは4LPPが復活したことと、3GAPの後に2GAPが明示されたことだろう。

2021年のロードマップ。SFF 2021は2021年10月に開催され、すでにこの時点で4LPPまでの提供が開始されている

 そして2022年であるが、6月末に3GAEプロセスの量産開始が公式に発表された。もっともこれは、当初は歩留まりが10%台というすさまじい数字だったらしいが、その後の改良も目覚ましく年末には40%まで達したらしい。

 いや40%で満足してしまってはまずい気もしなくはないのだが、もともと3GAEは“3nm GAA Early”という、いわばGAAの評価用とでもいうべき最初のプロセスで、顧客の量産は次の3GAP(3nm GAA Performance)で手掛ける予定になっていたので、これは大きな問題ではないともいえる。

 その2022年の10月にSFF 2022が開催されたが、ここで示された新しいロードマップが下の画像だ。名称が従来のものからSFxxに切り替わったのは、TSMCのプロセスなどと混乱しないように、頭にSamsung Foundryの頭文字としてSFを追加したということのようだ。

2022年のロードマップ。末尾にAが付いているのは自動車向けのプロセスとなる

 そしてプロセスであるが、まず旧3GAPであるSF3が2024年提供開始と1年後送りになり、また2025年にはSF3PというSF3/3GAPの改良版が投入されることが明示された。同じ2025年に旧2GAPがSF2として投入され、2026年にはその改良型であるSF2Pが投入されること、そして2027年には1.4nmプロセスに相当するSF1.4が投入されると明示されたことだ。

 このSF3P/SP2Pの存在の公開と、2027年にSF1.4を投入という時期の公開が初めて行なわれた形になる。

 ということで駆け足でここ数年のSamsungの先端ロジックのロードマップ変遷を解説し終わったところで、SF3の話に移りたい。

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