本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。
UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。
「Core NFC」で変わるiOSのNFCサポート
「NFC」という単語から連想されるサービスは、電子マネーを含む電子決済機能であったり端末間通信(P2P)であったり、利用者の立場によってさまざま。Android端末でよく見かけるBluetoothスピーカーとのペアリングを支援する機能も、NFCの主要なユースケースのひとつ。テレビなどAV機器の分野では、NFCで認証を行ない高速性を要するデータ通信はBluetoothまたはWi-Fiに引き継ぐ、というハンドオーバーもそうだ。
iOSにおけるNFCのサポートは、iOSデバイスでは初となるNFCチップ搭載モデルiPhone 6/6 PlusとiOS 8から始まったが、NFCにより実現される機能は限定的だった。Bluetooth機器のペアリング支援機能はなく、Bluetooth/Wi-Fiハンドオーバー機能もない。そもそもNFC関連APIが公開されていないため、サードパーティー製アプリではNFCにアクセスできない。NFCが事実上Apple Pay専用だったことは、よく知られているところだ。
今回のWWDCで発表されたiOS 11の新フレームワーク「Core NFC」は、そんなiOSデバイスにおけるNFCの在り方を一変させる。NFCの規格策定を行なうNFC Forumでは、「Reader/Writer」(R/W)と「Card Emulation」(CE)、「Peer to Peer」(P2P)という3種の動作モードを定義しているが、Core NFCではそのうち「R/W」をサポートする。ざっくりいえばフル機能のうち3分の1をカバーするに過ぎないが、これは大きな前進だ。
Core NFCでは、NFCタグの検出とそこに書き込まれたNDEF(NFC Data Exchange Format)データを読み取る機能を提供する。読み取り可能なNFCタグは、NFC Forumが定めるType 1~5のすべてで、これだけもかなりのことが実現できる。
ただし、このNFCタグ読取りに対応する端末はiPhone 7/7 Plus以降。それ以前のNFC対応端末は、Apple Payには対応していてもCore NFCのサポート対象外なのだ。これはハードウェア的な事情と判断できることから、AppleのNFCへの取り組み方針がここ1~2年で転換したものと推測される。
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