事例に厚みが増したAWS Summit 2017レポート 第9回
ロボットとデジタルビジネスの接点にAWSを活用
高齢化・労働力不足の農業をヤンマーのロボットトラクターは救えるか?
2017年06月22日 07時00分更新
生産者をサポートする「スマートアシスト」との連携をAWSで実現
後半はロボットトラクターと同社のデジタルサービス「スマートアシスト」との連携をAWSで実現した事例について、ヤンマー情報システムサービスの中村圭志氏が語った。
ヤンマーは生産者をトータルにサポートするソリューションとしてスマートアシストを展開してきた。これはGPSと通信端末を活用し、農機の稼働状態やコンディションをリアルタイムに収集するサービス。機器の状態を見える化するとともに、収穫量や作業状態を分析できるほか、紙のほ場を電子化したり、作業状態をPCやスマホから簡単に入力することが可能だ。「ベテランと若い人の機械の使い方を比較したり、成績のいいほ場、悪いほ場がわかるので、収量の改善につなげられます」(中村氏)。
ロボットトラクターの開発に際しては、データを有効活用したいという需要のほか、スマートアシストのマスタと連携したい、ログイン機能がない、SIMがないといった課題があった。
このうちSIM以外の課題に対しては、ヤンマー情報システムサービスでAWSを用いたPOCを実施した。Amazon Cognito ID Brokerを用いて、ロボットトラクターに搭載したAndroidタブレットにアプリとして認証機能を追加し、Amazon Cognito Sync Storeを使って、スマートアシストとのマスターデータとの統合を実現した。具体的には、自宅のWiFiにつながった段階で、Cognitoによる認証を経て、データを同期。変更データはKinesis Streamsを経由して、スマートアシストのマスターに取り込まれるという。また、トランザクションデータのアップロードはサーバレスを活用。API GatewayとLambda、Amazon SQSを経由し、スマートアシストのデータベースに取り込まれる。
中村氏は、AWS採用のメリットとして、MobileSDKとマネージドサービスを採用したことで開発工数を削減できたこと、サーバーレスアーキテクチャを採用したことで運用に負荷が下がったこと、さらに実績が高いためAWS技術者の確保が容易だったことなどを挙げた。加えて、「AWSの社員さんは技術的に尖っているので、見習うところが多い」ともコメントした。
持続可能な農業を実現する「AgTech」を今後も推進する
AWS導入のメリットを語った中村氏は最後マクロの視点に立ち、デジタルトランスフォーメーションの重要性を語った。
中村氏はIMFのGDPデータをひもとき、日本の成長率が約10%なのに対し、米国は約120%を実現しており、日本の生産性が悪さを指摘。中村氏は、「最近、授業参観に出てきたのですが、奈良の大仏はいつ誰が、なんのために作ったかという内容で45分消費していた。そんなのネットで調べればすぐわかるので、今だったらどういう素材で作るべきか、今病気が蔓延したらどうするか、といったクリエイティブな議論に時間を割いた方がよい」と持論を披露。システム開発においても、世の中にある優れたモノを組み合わせて、スピーディにビジネスに供給していくことが重要だと説いた。
今後は、人と機械がインターネットを介してつながることで、新しい収益を生み出すデジタルビジネスが加速する。この流れがまさにデジタルトランスフォーメーションだ。「ITの進化はこれまで人がやってきたことを機械が置き換えることでコスト削減をしてきた。これからはクラウドやIoT、人工知能の普及によって、人間にしかできないこと、人間ではできないことをできるようになる」と中村氏は語る。今回紹介したロボットトラクターも、その1つの成果物。持続可能な農業を標榜するヤンマーは、今後もロボットやICTを駆使した高品質な生産をサポートする「AgTech」を推進していくという。
初出時、「スマートアシスト」を「スマートアシスタント」を記載した箇所がありました。お詫びし、訂正させていただきます。本文は訂正済みです。(2017年6月26日)
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