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AirPods以外の1万円台ワイヤレスイヤフォンなら「Aria One」がおススメ

2017年06月17日 12時00分更新

文● 四本淑三

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すっぴんに近いフラットなバランス

 Aria Oneに搭載されているドライバーは、口径9mmのダイナミック型。ドライバーとしてのスペックは、再生周波数帯域20Hz-18kHz、インピーダンス16Ω、最大入力20mW、音圧感度99dB。パッケージに描かれたイラストを見る限り、機構的にもごく当たり前のもののようだ。

 このドライバーの特性が、最終的なイヤフォンの性能にどの程度寄与しているのかは、Bluetoothのチップセットも含め、同じ筐体で比べてみない限りわからない。が、誰が聴いても違和感を持たない、癖のないバランスのイヤフォンとして成立しているように思えた。

 可聴限界に近い低い帯域から高域端まで、減衰の仕方が自然で、妙なピークやディップが入っていないという点で申し分ない。これと言ってわかりやすい特徴がないので、刺激の強いチューニングに慣れたリスナーには大したことがないと言われそうだが、低域に寄りがちなこの価格帯の製品の中で、このすっぴんに近いフラットなバランスは珍しい。特に中音域の解像感からくるエア感ある再生音は、このタイプのイヤフォンの中では一つ頭抜けている。

45分充電で4時間の長時間再生

 音の話が先になってしまったが、トゥルーワイヤレスイヤフォンとしてのパッケージもよくできている。Bluetooth 4.0に対応し、音声コーデックはaptXにも対応。噴水流に耐えるIPX5の防水性能を持ち、マイク内蔵でヘッドセットとしても機能する。

 バッテリー内蔵の充電ケース、充電用USBケーブル、充電ケースを収納するポーチ、標準のシリコン製イヤーチップ(SML)、コンプライ製イヤーチップ(SML)、フィン型スタビライザー(SML)。そして日本語も含む丁寧に書かれた取扱説明書と、付属品も充実している。

 バッテリー内蔵の充電ケースは41.1g(実測値)と軽く、ピルケースのようで扱いやすい。磁力で吸着させるタイプだが、その磁力もクレードル側の形状も適切で、取り出しも容易だ。

 ケースの内蔵バッテリーはフル充電までに2時間。それでイヤフォン本体を3回充電できる。イヤフォン本体の充電には45分かかるが、連続再生最長4時間と待受100時間というスペックで、2~3時間しか持たないほかの製品に比べると、充電サイクルは長い。ちなみにケースとイヤフォンは、USBケーブルを接続しておけば、同時に充電できる。

 しかし、バッテリーが長持ちするということは、大きな容量のバッテリーを積んでいるということ。これが装着性に影響する。

フェージング動画の音声ズレ問題なし

 ほかに比べて大きめのエンクロージャーは、角が耳に当たりがちで、ゴロゴロと寝転がって使うのには向いていない。そして片側7g(実測値)と、小型軽量をうたう4g台の製品と比べれば重い。これは充電用ケースに吸着させるための磁石が、イヤフォン側にも付いているせいもあるだろう。

 そこで装着安定性向上のため、フィン型のスタビライザーが付いてくるのだが、これは防水性能を活かしてスポーツに使うためのもので、激しい動きをしないのであれば、必要ではない。むしろスタビライザーを着けることでイヤーピースが耳から浮いてしまい、低域や高域の不足を感じることもある。スタビライザー、イヤーピースともにサイズの選択を慎重にするか、あるいはコンプライのイヤーピースで装着安定性を確保する手もある。

 そして、見ておわかりのとおり、左右で色が違う。抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれないが、ペアリングするまで右か左かわからないような製品もある中で、これはわかりやすくていい。白が右チャンネルで、再生装置と直接接続するプライマリー側。一度ペアリングを済ませれば自動接続するので、この点でも後発の安価な製品より優秀だ。

 トゥルーワイヤレスイヤフォンでは問題になるフェージングも感じない。音のドロップも最小限だ。音声遅延はあるのでゲームには向かないが、動画再生時の映像と音声ズレはわずか。演者の動きとテンポのズレが目立ちやすいミュージックビデオでも無視できる程度だ。

 同じ価格帯のAirPodsと比べた場合はやはり大きさとデザインが問題になるだろうが、Aria Oneが有利なのは、密閉カナル型ゆえに遮音性が高いこと。音の面でも、若干EQで作った感じがあるAirPodsに比べると自然でいい。

 2016年に発売された機種としては、総じて高いレベルでまとまっていて驚いた。fFLAT5は、すでに次世代機種「Aria Two」も発売しているので、これも近いうちにぜひ試してみたい。



著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ

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