あくまでスポーツ向けのデザインか?
筐体は大きく外に飛び出し、かつ重量もあるため、本体を支える大きなイヤーハンガーが必要になる。が、これで耳にしっかり固定されるので、激しい運動をしても外れない。
コントロール用のボタンも大型で、電源と各種操作ボタンが分かれている。ワンボタン式のマルチファンクションスイッチにならざるを得ない小型の製品より、操作は単純で覚えやすい。
そして大口径ドライバーの音圧感は、確かにくるものがある。下から突き上げるようなキックの効いた音は、エクササイズ中のモチベーションを上げてくれるだろう。
さらに防水設計を加えることで、多少大きくてもスポーツタイプとしてなら成り立つだろうという、なかなか筋の通ったデザインだ。
しかし、スポーツをしない人間が、単純にイヤフォンとして使った場合はどうかというと、バッテリーの持ち時間はメリットだが、やはりこのサイズと形が気になってくる。
まず当たり前のことだが、大きいから目立つ。動作中は明るい白色LEDが明滅して、これも目立つ。うっかり寝返りをうつと、箱型の筐体の角が当たって、ちょっと痛い思いをする。
Bluetooth周りの性能も、もう一歩だ。動画再生時の音声ズレは大きく、動画鑑賞には向かない。音像が左右に揺れ動く現象も若干あり、片側チャンネルだけのドロップも起きやすい。
コーデックは標準のSBCほか、AACとaptXに対応するが、その割に高域にも、遅延にもあまり見るべきところがない。低域の音圧感が高いので、音楽のみを鑑賞しようという場合は、少々バランスが悪い。
やはりスポーツ用であり、気分を上げるためのイヤフォンなのだろう。ジムで使う場合は、いくら小型でも外れやすいものや、防水が不完全なものはダメだ。
そうしたメリットとデメリットをよく理解した上で選びたい機種だが、もうすぐ1万円を切りそうな価格設定も、大いに魅力的だ。価格に対する性能としては妥当なところで、大きさが許せるか否か。問題はそこだけ。悩もう。
レビューした機種はe☆イヤホン各店舗で試聴できるので、興味がある人は試してほしい。
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ