事例に厚みが増したAWS Summit 2017レポート 第1回
レコチョク、セイコーエプソン、Sansanが自ら語るAWS活用事例も
三菱UFJ銀登壇、大阪リージョン発表など「AWS Summit」基調講演
2017年06月01日 07時00分更新
レコチョク:AWSへの全面移行、Oracle RACはAuroraに置き換え可能か?
レコチョク 執行役員 CTOの稲荷幹夫氏は、同社が2014年から取り組んできた「オンプレミスからAWSへのシステム全面移行」において、特に懸念されていたという「データベースの移行」について紹介した。
同社では「レコチョク」や「dヒッツ」などのスマートフォン向け音楽配信サービスを提供しているが、オンプレミス時代には、それらの会員システムや決済システムなど高トラフィックなシステムのデータベースには「Oracle RAC」を、その他のデータベースにはPostgreSQLを採用していた。
「(AWSへ移行するには)これを何とかしなければいけないと、データベースについては慎重に検討していた。そこに登場したのがAWSのAurora。当時(のAurora)はMySQLしか動いていなかったので、全面的にMySQLを採用すると決めて移行を行った」(稲荷氏)
Auroraへの移行においては「オペレーション」と「可用性」の2つが懸念点だったという。オンプレミス時代には、細かなSQLチューニングやスキーマ変更でデータベース処理の最適化を図ってきたが、このオペレーションをどうするか。また、Auroraの可用性についても、利用する前は「本当に止まらないのか」という不安があったという。
そのため、オペレーションに関しては、数名のDBA(データベース管理者)を開発チームにマージしてDevOpsの体制を敷き、開発段階からチーム内でデータベースのチューニングができるようにした。一方で、可用性の懸念については「実際にやってみないとわからない」という結論に達した。
結果、データベース運用にかかる工数、ライセンスコスト、パフォーマンス障害のいずれも「ほぼなくなった」になったという。「(Auroraへの移行は)非常にメリットがあった」(稲荷氏)。
セイコーエプソン:「モノづくり」企業がサーバーレスに取り組む理由
セイコーエプソン IT推進本部 本部長の熊倉一徳氏は、現在取り組んでいるサーバーレスアーキテクチャでのアプリケーション開発について紹介した。
熊倉氏は、セイコーエプソンは1942年、時計という精密製品の「モノづくり」からスタートした会社であり、「今後もモノづくりの会社であり続ける」という確固たるビジョンを持っていると語る。ただしこれからの時代、製品を通じて顧客に驚きや感動を提供するためには、モノづくりに「サイバー空間との連携」という要素も必要になると考えており、2025年に向けた長期ビジョンにおいても、ICTやクラウドが必須の存在であることを明記している。
こうしたビジョンのもと、まず2013年度からは、既存システムのクラウド移行に取り組んで来た。当初は、クラウドに対して経営層や社内スタッフからの理解を得ることすら非常に困難だったが、IT推進本部として「信念をもって」(熊倉氏)クラウドファーストの取り組みを推し進めたという。
その結果、「データセンター/サーバー費用の20%削減」や「サーバー環境構築期間の1週間以内への短縮」といった当初目標が達成できた。熊倉氏は、こうした成果を出せたことで、「今では社内にも当たり前のようにクラウドが受け入れられるようになった」と語る。
ただし、これまでの取り組みは、あくまでも従来のデザインパターンを踏襲したままデータセンター/サーバーをAWS上に移すというものだった。そのため「お客様への新しい製品/サービスの提供や、ビジネスのスピードアップにはつながっていない」(熊倉氏)という課題がある。
これまでの「ITトランスフォーメーション」から、次の段階である「デジタルイノベーション」へと歩を進めるため、セイコーエプソンでは、AWS Lambdaを主軸に据えたマイクロサービスアーキテクチャの採用に取り組んでいる。ここではオープンAPIを通じたパートナーとのコラボレーション、マシンラーニング活用といった新たな要素も取り込んでいる。
「お客様へのアプリケーション提供のスピードを上げていくためには、これまでのように『全部を作る』ことにこだわらず、使えるサービスは積極的に利用していくべき。そうして『エプソンとしての(独自性のある)価値』を高めることに専念しようと考えている」(熊倉氏)
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