マイクロサービスやコンテナ、DevOpsなどクラウド時代に適合する「Harmony Controller」
A10、マルチクラウドのADC/セキュリティを統合する新製品
2017年05月30日 07時00分更新
A10ネットワークスは5月29日、アプリケーション配信(ADC)/セキュリティの制御やトラフィック分析の機能を提供するコントローラー「A10 Harmony Controller」と、主要パブリッククラウドやプライベートクラウドで利用できるADC/セキュリティインスタンス「A10 Lightning ADC」の国内提供を開始した。今後はAPI連携も可能なHarmony Controllerを中核に据え、オンプレミス/マルチクラウド環境の一元的な集中管理を実現していく戦略だ。
ハイブリッドクラウドのADC/セキュリティ管理、トラフィック分析の機能
Harmony Controllerは、Lightning ADCクラスタの設定やポリシー制御、トラフィックの監視を一元的に行うコントローラーだ。今回の提供開始時点では、SaaSとしてのみ提供される。
一方、Lightning ADCは、パブリッククラウド(現在はAWS、Azure、GCP)またはプライベートクラウド(現在はVMware環境)で稼働する各種アプリケーションに対し、ADC(レイヤー4-7のロードバランシングなど)とセキュリティ(WAF、レイヤー7 DDoS防御など)の機能を同時に提供するインスタンスだ。
Harmony Controller+Lightning ADCの組み合わせによって、トラフィックの変化に応じたオートスケールが可能。また、Harmony Controllerのトラフィック分析機能では、Lightning ADCクラスタから収集したデータを分析することで、アプリケーションごとのトラフィック可視化、サービスレスポンスタイムの可視化といったこともできる。
また、Harmony ControllerはAPI経由で他のツールとも連携する。たとえば、「Ansible」や「Chef」といったデプロイ自動化ツールとの連携によって、DevOps環境と統合し、デプロイや運用を自動化することが可能だ。複数バージョンのアプリケーションをデプロイしてテスト運用する、いわゆる“Green-Blueデプロイメント”にも対応する。
ライセンス形態は、1年間または3年間のサブスクリプションモデル。適用するドメイン数(FQDNの数、1/5/10/25/50/100/500ドメインのライセンスを用意)によって価格が異なるが、Lightning ADCインスタンスの数に制限はない。WAF機能の有無でPRO、Basicの2モデルがある。販売はパートナー経由となるため、価格はオープンとしている。
今後Thunderシリーズも管理対象に、包括的なプラットフォームを目指す
今回の提供開始時点におけるHarmony Controllerは、上述のとおり、主要パブリッククラウド上のLightning ADCインスタンスの管理にのみ対応したコントローラーである。ただし、A10では今後、オンプレミス/プライベートクラウドにもその管理対象を拡大し、分散化するアプリケーション環境の統合的な管理/監視プラットフォームの中核に据えていく計画だ。
具体的には、Harmony Controllerは今後、「Thunder ADC」や「Thunder CGN」「Thunder CFW」など既存のThunderシリーズ(物理/仮想アプライアンス、ソフトウェア)、さらにオープンソースのロードバランサー「HAProxy」も管理/監視対象としていく。また、Harmony Controllerの提供形態も、SaaSに加えてセルフマネージド型(オンプレミス、プライベートクラウド運用)を追加し、サービスプロバイダーやエンタープライズでの導入に対応していく。
発表会に出席したA10の高木真吾氏は、アプリケーションのトレンドがクラウドベースへとシフトし、マイクロサービス化やコンテナ活用、DevOps/アジャイル開発の普及、“Infrastructure as a Code”による運用自動化といった新たな潮流が生まれているなかで、既存のADCやアプリケーションセキュリティには数々の「課題」が突きつけられていることを指摘。今回のHarmony Controllerでは「競合とは少し違ったアプローチ」として、Harmony Controllerを中核に据えた管理/監視プラットフォームを構築することで、クラウドベースアプリケーション時代の課題に取り組む戦略であることを説明した。
さらに高木氏は、現状のHarmony Controller+Lightning ADCの組み合わせは、アプリケーションのクラウド移行を進める企業やDevOpsに取り組む企業がメインターゲットとなるが、将来的にThunderシリーズにも対応することで、より幅広い企業層やサービス事業者などを取り込んで行くことになると語った。