1万円台の製品でトップクラスの音質
だが、なにより特筆すべきは音にある。特に低域の量感と、解像感ある高域が両立しているあたり。ドライバーユニットは6mm口径ということだが、ローエンドの再生能力が高く、しかも飽和感なく、うまく上の帯域とつながっている。このバランスのよさは、同価格帯のトゥルーワイヤレスイヤフォンでは、間違いなく上位に入る。
コーデックは標準のSBCにしか対応していないが、高域についても特に不満はない。全体としてワイヤードであれば5000円前後の(低域強調を売りにしていない)ダイナミック型のクオリティーだが、それでもトゥルーワイヤレスでそこまでこなれたものは、まだ数えるほどしかない。
気になったのは、チャンネル間の信号遅延から、たまに定位が不安定になり、音像が左右に動くこと。この定位の揺れはほかの製品でもよくあることだし、程度も問題視するほど大きくはないが、音がよくまとまっているだけに惜しい。
動画再生時の音声ズレはあり、映画のリップシンクでギリギリ。ミュージックビデオでははっきりと遅れがわかる。YouTubeを見ながら演奏をコピーをするのは無理かな、という程度にはズレている。しかし、音だけを聴くのが目的ならまったく問題はない。
電源や接続関係の使い勝手、低域の再生能力をベースにした音のバランスなど、総じてうまくまとまっている。コストパフォーマンスの高さはなかなかのものだ。AirPodsもいいけど、オープンエア型はちょっと……という方は試してみたほうがいい。
レビューした両機種はe☆イヤホン各店舗で試聴できるので、興味がある人は試してほしい。
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ