遠隔でも現場状況の把握ができるソリューション、人手不足に悩む建設業をどう救うか
ICT建機×クラウドが解決すべき現場課題、日本キャタピラーに聞く
2017年05月24日 07時00分更新
建機の健康状態から、現場の生産性、安全性までモニタリング
では、このCat Connectソリューションがどのように建設業の業務を管理し、改善するのか。あらためて前述した4領域に沿って見ていこう。
まず「機械管理」領域では、建機の稼働状況が詳細に分析、可視化される。故障発生時にアラートが上がるのは当然だが、稼働状態の詳細なイベントログが「重大度」付きで表示されるため、故障につながりかねない事前の異常も早期に発見できる。また、建機の累積稼働時間に応じて部品交換などの時期も示されるため、メンテナンス作業を計画的に行うことができる。
「生産管理」では、たとえば建機1台ごとの稼働日や稼働時間帯(分単位)、燃料消費量などのデータを分析して、自社が保有する“資産”である建機を効率的に稼働させられているか、無駄な遊休状態(アイドルタイム)が生じていないかをモニタリングできる。また、イベントログから運転操作を分析し、問題のある点をアドバイスする。そのほか、ペイロード(積載量)センサーを搭載したダンプトラックも販売されており、運搬した土砂や鉱石の重量を「生産量」として自動集計することもできる。
「安全管理」においては、現場作業員のヘルメットやベストにRFIDを装着し、死角の多い建機の周囲に作業員がいる場合はアラームを鳴らして運転手に通知し、事故の発生を防ぐ。この情報はVisionLinkにも送信できるので、アラートが多発している現場に対して改善を促すことにもつながる。
国交省の「i-Construction」にもつながるマシンコントロール建機
最後に「施工管理」の領域だ。これは国土交通省が2016年度から推進している「i-Construction」、つまり3次元設計データと自動制御(マシンコントロール)化された建機による“施工のICT化”にも関係する。
キャタピラーの建機も、3D位置情報に基づくマシンコントロールが可能だ。たとえばブルドーザーで整地を行う場合は、施工前の3Dマップと設計図面、ブルドーザーの3次元位置に基づいて、その場所で削り取るべき表土の深さを算出し、ブルドーザーのブレード(排土板)をマシンコントロールする。その精度は、GNSSベースで5センチ程度、トータルステーション(測量機)を併用すれば「パチンコ玉大」程度まで高められるという。
「実際にブルドーザーの運転席に座ってみると、表土を削るブレードの刃先は見えません。そのため、これまでは熟練の技が必要でした。しかしマシンコントロールされていれば、操作経験のないわたしでもブルドーザーを前後させるだけで設計図面どおりに整地ができるわけです。現場の生産性向上と、オペレーター不足への対応になります」(石渡氏)
加えて、ブルドーザーの動きはすべてモニタリングされており、VisionLink上のマップには作業完了部分や未作業部分が表示される(「3Dプロジェクトモニタリング」機能)。つまり遠隔地からでも、作業の具体的な進捗状況が一目で確認できるわけだ。
マシンコントロールされた建機はそのほかにも、たとえば河川の土木工事などでも活躍するという。作業者の目視では確認できない川底の地面も、マシンコントロール機ならば設計図面どおりに掘削できるからだ。