アナログターンテーブルの「SL-1200GR」は、SL-1200シリーズのあらたなスタンダードモデルで、価格が昨年発表モデルの約半分となっている。2016年のG、GAEと比べて低価格で、DJユースにも耐えうるモデルになっている。
井谷氏によると「SL-1200G/GAEは、音質的に妥協のないものを作ろうというコンセプトだったが、SL-1200GRはそのクオリティを落とさず価格をどう下げるかがポイントだった」という。
「まずモーターを再設計し、ツインローターからシングルローターにした。トルクが下がるため、プラッター重量を落とし、起動時間の短さを確保。また剛性を確保するため、リブも設けた。筺体についても4層から2層にしている。トーンアームもマグネシウムからアルミに変更した」
特徴のコアレス・ダイレクトドライブ・モーターは新規開発。コアレスモーターで、コギングを排除し、デジタル制御技術も用いて正確な正弦波を使って駆動することで、振動を抑制するといった利点は上級機を継承している。
アルミダイキャスト製のプラッターは約2.5㎏の重量で、MK6より800gほど重い。またMK6にはなかった強化リブを設け、安定した回転が得られ、振動も少なくしている。MK6比で2倍以上の振動減衰特性を得たという。
シャーシ部はBMCの上にアルミダイキャストを重ねた2層構造にしている。S字型のユニバーサルトーンアームはスタティックバランス型。アルミ製となる。伝統のジンバルサスペンションを継承し、軸受部に切削加工のハウジングを使用した高精度ベアリングを採用。熟練した日本の職人の手で組み立て、調整する。初動感度はMK6の7㎎から5㎎以下となり、レコード盤をより正確にトレースできるという。標準ウエイトに加え、補助ウエイトも付属し、18.7~25.1gと幅広い範囲のカートリッジが利用できるそうだ。オーバーハングは15mm。
本体サイズは幅453×奥行き372×高さ173mmで、重量は約11.5㎏。33.3/45/78回転に対応、回転調整範囲は±8%、±16%。ワウフラッターは0.025%(W.R.M.S.、JIS C5521)。SN比は78dB(IEC 98A weited)。
マーケティング担当のパナソニック アプライアンス社 コンシューマーマーケティングジャパン本部 AVC商品部 部長の宮地晋治氏は、試聴会を身近にするため、東京と大阪のパナソニックセンターで3月22日から試聴環境を用意するほか、移動式リスニングルーム(Technics Sound Trailer)を製作し、5月から稼働させると発表した。
またターンテーブル世代の幅を広げるための取り組みも実施。
そのひとつとして評論家の和田博己氏が持ち込んだレコード、コーネリアスの「Like a Rolling Stone」に感銘を受けて、コーネリアスの考えるチェックトラックをコンセプトにした原盤を製作。SL-1200のユーザーに特典として配布するとした。
製品発表会終了後、短時間であるが発表されたシステムの音を聴けた。まずコーネリアスのチェックディスクは、左右チャンネルの音量を合わせたり、1000Hzの基準音を出したりというごく当たり前の音を楽しむ聴かせるための工夫が入っていて興味深かった。
次にアナログ再生に入ったが、シェエラザードの演奏や、80年代のスティングのアルバム(最近復刻され、アビーロードスタジオでSL-1200GAEを使ってスティング自身が検盤したそう)などを聴くと、レコードのポテンシャルを改めて感じることができた。最新のシステムで聴くと、音の柔らかさや滑らかさに加えて、ダイナミックレンジの広さや繊細で豊富な情報量などを感じる。
SL-1200GRでかけたレコードは低域の支えもしっかりとあり、ワイドレンジ。SB-G90も少し低域に寄ったバランスだが、安定感があってスケール感のあるサウンドを聴かせてくれるように思えた。発表された、プレーヤー、アンプ、スピーカーをフルセットで揃えれば100万円程度となりそれなりに高価ではある。だが単品であれば、手が出せる機器に思える面もある。機器の買い替えやグレードアップなども視野に入れつつ検討してみたい製品だ。